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「お風呂を張って戻ってきてみたら生体反応があって撃ってみたら、工藤彰と二葉だったか」


 何故一美がここに……? それに誰か分からない状態でショットガンぶっ放したのか? 頭のネジが飛んでいる……。


「河瀬と住んでるのか?」


 一美が気だるげに答える。


「そう。最初は殺されそうになったけど」


「! どうやって殺そうとしてきたんだ?」


 河瀬の犯罪方法を知るチャンスだ。


「居候するなら、一緒に風呂に入れって言われたからそうしたら、頭掴んで沈めて溺れさせようとしてきた。でもいくら沈めても死なないから、アンドロイドって多分わかってここに置いてくれるようになったのよ」


 そうか……。自宅で溺死させてその後、川に流してたんだな。


「まさか獲物からこっちにやってくるとはね。殺すタイミングを画策する手間が省けたわ。死ね」


 一美はショットガンを構える。


 二葉が足払いを放った。一美は派手に転ぶ。二葉は素早く後ろに回って一美の頭をガシリと掴みねじ回した。五百四十度ほど回ったが、何かが折れる音は聞こえなかった。


「残念。私は球体関節」


 一美は首から下を回し二葉と正対して、ショットガンを撃った。弾は二葉の顔面に直撃した。致命傷にこそなっていないが、顔の皮がところどころ破れて機械の骨格が剥き出しになった。


「一美……!」


「ねえ、未来では一美姉さんって呼んでくれてたんだから、そう呼んでよ」


「今のあなたは姉として誇りに思えない。無理な相談よ……!」


「そっか残念」 


 一美はかぶりを振る。二葉は一美の目に人差し指を突っ込む……が、未遂に終わる。


 二葉の指は通常の関節の逆方向に曲がった。


「目は特別製の硬質ガラスで覆ってるわ。私は未来の鉄矢様に改良されてるの。他のアンドロイドのような弱点はない。これまでの戦いで分かっているでしょ?」


 二葉と一美が睨み合う。僕はここから逃げた方がいいのか? いや、緋奈がやってくるし……。ていうかこの状況河瀬が見たらヤバいんじゃないか?


「おい何してるお前ら!?」


 玄関から怒声が響く。河瀬だ。ええい、こうなったら開き直れ!


「お前が女子高生連続殺人事件の犯人だな。風呂で溺れさせて殺していたんだな!」


「ああ、そうだが」


 ? やけに素直に自白したな……?


「息が続かなくなって、ダランと力が抜ける瞬間が最高なんだ。この快感を知ったらやめられないぞ。ゲームをクリアした時の達成感みたいなもんだな。まあ比べ物にならないが」


 河瀬は聞いてもいないのにペラペラと語った。


「狂ってるな……」


 僕はボソリと思いが声に出る。


「まあ、どうやって突き止めたかは分からないが、知ったからには死んでもらう。一美、ショットガンを貸せ」


 河瀬が一美に近づく。玄関には緋奈が怯えるように立っていた。


「ったく、武器庫から勝手に出したな? 全員殺すからほら、早く貸せ」


「うるさい」


「がっ!」


 ! 一美が河瀬を裏拳でぶっ飛ばした。河瀬は壁に激突し気を失った。


「おい……ご主人様ってやつじゃないのか……?」


 僕は驚いて口をポカンと開ける。


「死んでさえいなきゃ大丈夫でしょ」


「やっぱりお前、おかしいよ……」


「うるさい死ね」


 一美はショットガンを構える。二葉が横から一美にタックルして僕は難を逃れた。二葉と一美は床をごろごろと転がりながら取っ組み合う。僕はその隙に緋奈の元へ駆け寄った。


「緋奈! 逃げるぞ!」


「え、でも二葉ちゃんが」


「……。僕たちにできることはないだろ!」


「聞いてたんだけど、武器庫って言ってたよね。そこの武器を使えば二葉ちゃんをサポートできるかも」


「……! わかった、わかったよ……!」


 僕と緋奈は室内を物色する。鍵が付いているドアがあった。鍵は外れている。おそらくここだ! 僕と緋奈は部屋に入る。 


 刃物に銃、様々な武器が並んでいた。


「彰! これ強そう!」


 緋奈が拳銃を手に取った。


「マグナム銃だな……。ゲームの知識だけど、確かに威力は高いはずだ……!」


 弾を探す。あった! 僕はマグナム銃に弾を込める。


 部屋を出て二葉と一美の方を見る。二葉はこちらを守るように僕たちに背を向けて一美と相対していた。


「二葉! これ使え!」


 僕はマグナム銃を投げる。二葉はキャッチした。


「! ありがとう彰くん」


「そんなもの、効かないわ!」


 一美が二葉にタックルを仕掛ける。二葉はマグナム銃を撃つ。ドォン! 虚しく一美のボディはそれを物ともしない。二葉は膝蹴りで一美の頭を跳ね上げる、が勢いのまま組みつかれ床に倒される。気づけば、一美の口にマグナム銃が突っ込まれていた。


「ここは弱いでしょ」



 ドォン! ドォン! 



「が、バ、ビ……」


 一美は崩れ落ちた。


 僕と緋奈は二葉に駆け寄る。


「最初から指の小型銃口で口内狙えばよかったんじゃないのか?」


「いえ、指だと?み千切られでもしたら弾撃てないしその後に支障出るじゃない。でも銃なら砲身?み千切られても弾は撃てるでしょ」


「なるほど。それでこれは、やったのか……?」


「おそらくまだ。私と同じだとしたら、主電源の回路を断っただけだから多分予備電源で再起動する」


「じゃあ予備電源を破壊しないと……!」


「どこに予備電源があるかわからないの。私と全く同じなら胃の辺りだと思うけど、破壊する手段もない」


「じゃ、じゃあどうすれば……」


 二葉は人差し指をぴょこんと立てる。


「考えがあるの」


 二葉は機能停止した一美を担いで部屋を移動する。


「浴室?」


「うんお湯張ってある。よいしょっと」


 二葉は一美をお湯に沈めた。


「おい、水に沈めても未来のアンドロイドは完全防水なんじゃないのか?」


 二葉は脱衣所を物色している。


「あった。これを使うの」


「あ……。なるほどそれで……」


 ザバッ。一美がお湯から顔を出した。予備電源で再起動したようだ。


「何……濡らしたところで完全防水よ。わかってるでしょ……」


 ゴオオオオ。二葉は持っているドライヤーのスイッチを入れた。そして、一美の浸かっている湯船に放り投げた。


「じゃあね、一美」


「あ……!」



 バリリィ!



 一美は感電しショートした。ずるりと浴槽を沈む。


 十数秒経っただろうか。一美はピクリとも動かない。僕は二葉の肩に手をポンと置く。


「……やったんだな」


「うん」


「彰、終わったの……?」


「ああ。そうみたいだ」


「やったね」


 緋奈が手を掲げる。ハイタッチか。僕は緋奈の手を叩いた。


「あ、河瀬を捕まえておかないと」


 僕は河瀬の様子を見に行く。これで逃げられていたら滑稽だ。河瀬はノビていた。よかったまだいた。ガムテープを見つけたので、両手両足を縛って寝かせておいた。


「このまま通報して、河瀬はちゃんと自白するかな」


「大丈夫。河瀬の自白は録音してある。彰くんのスマホにデータ送るね」


 本当優秀なアンドロイドだ、二葉は。僕は苦笑した。


「ん? どうしたの彰くん」


「あ、いや、緊張が解けて力が抜けたっていうか達成感というかそんな感じ」


「ふふふ」


「どうした二葉!?」


「いえ、私も彰くんに倣って笑ってみたの」




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