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 日曜日、河瀬が事前に緋奈に指定したカラオケ屋にて僕と二葉は部屋を取り待機する。盗聴器で緋奈の様子を伺う。河瀬と緋奈が別の部屋に入室した。


 河瀬は最近の流行ソングを歌っていた。正直、うまいと思った。緋奈も流行りの曲を歌う。うまい。盗聴器越しじゃなくて生で聞きたかったなと少し河瀬が羨ましくなった。


 二葉に何も歌わないのかと聞かれたので、それどころじゃない、二葉が歌ったら? と言ったら二葉は採点機能を入れてカラオケランキング一位の曲を歌っていきなり百点を取った。


 まあこんなもんね、と足を組んで平然としている二葉は格好よかった。


『え、麻布!? タワマン!? 凄いですね! 行ってみたい』


 いつの間にか会話が進展している。おいおい、そんなひょいひょい距離詰めたら怪しくないか?


『今日は色々散らかってるから駄目だけど、今度来る? 夜景が素晴らしいんだ』


『行きます行きます!』


『うん。じゃあそろそろ出よっか。どこか行きたいところある?』


『えっと、今日は帰ります。親に早めに帰ってくるよう言われてて』


『そっか。また連絡するね』


『はい』


 緋奈と河瀬はカラオケ屋前で解散する。僕と二葉もカラオケ屋を出て緋奈と合流した。帰宅道中、緋奈と話す。


「聞いてたと思うけど、河瀬の自宅に行くことになりそう」


「気をつけろよ。一歩間違えたら……」


 僕は恐ろしくて続きを言えなかった。


「殺される」


 二葉が僕の言葉を補完した。


「うん……」


 緋奈が俯く。


「河瀬の部屋番号、調べておかないとな。それで事前に僕と二葉が侵入して隠れておく」


「特定してる。四〇五三号室」


「え、流石だな二葉」


 二葉は顔の横でブイサインを作る。嬉しそうだ。


「それじゃあ、また何かあったら伝えるね」


 緋奈の家の前で緋奈と別れた。


「ふう。なんか……怖いな。もし不測の事態があって緋奈を守れなかったら……」


「なんとかなるよ」


 なんとかって……。アンドロイドなんだから、データによると成功率は百パーセント、とか言ってくれたら安心するのに。いや、二葉がそんなこと言ったら違和感があるか。


 僕はゆっくり深呼吸する。


「なんとかなるか! 頑張ろ!」


 僕はガッツポーズをして気合いを入れる。二葉はそれを見て微笑んでいた。 


 翌日、緋奈に進展があったか聞くと、特に何もないようだった。


 警戒されたか? いや、早とちりはよくない。付き合っているわけでもないし毎日連絡は流石に来ないか。


 不本意ではあるが緋奈から連絡してみてはどうかと聞いたら、嫌だ気持ち悪いと言ったので、僕はなんだか嬉しくて苦笑いした。


 木曜日、下校中緋奈に河瀬から連絡がきた。


 土曜日にレストランで夕食を食べて、その後住んでいるタワーマンションに来ないかという内容だった。


「夜か……。危ないな。それに緋奈って遅くまで外出できないだろ」


「親に彰のところにいるって言っておいたら大丈夫。これはもしかしたら犯行現場を押さえるチャンスだよ。」


 自分が殺されるかもしれないのに他人事みたいに。強いな緋奈は。


「じゃあ発信機兼盗聴器を持っていって河瀬の自宅に行く前に連絡入れてくれ。それまでに河瀬の自宅に潜んでおくから」


「うん」


 緋奈と別れて二葉と喋る。


「大丈夫かな。河瀬の犯行方法が分からないし。部屋に入っていきなり殴られでもしたら……」


「今までの被害者に外傷はなかったんだからそんな乱暴なことはしないと思うけど」


「ああそうか……。とにかく、緋奈が危ないと思ったらすぐ守れるよう心積もりしておかないとな」


 といっても僕は腕力に自身がない。河瀬を止めるのは二葉頼りになるだろう。


「頼むぞ二葉」


「うん。彰くん、成人男性を制止できるような腕力ないもんね」


 うっ。わかっていたが面と向かって言われるとグサッときた。


「明日河瀬のタワマンに行きましょ。確かめたいことがあるの」



 金曜日。僕と二葉は部活を休み河瀬の住んでいるタワマンに来ていた。といってもマンション内に入れるわけではない。エントランスに入るには電子キーが必要だ。


 二葉は電子キーを当てるパネルに十数秒触れて「これならいける」と呟いた。そして二葉が確認できたから帰ろうと言うので僕たちは家に帰った。


 翌日の土曜日、緋奈と河瀬は午後六時に文京区の駅で落ち合うことになっていたので、僕と緋奈、二葉で先にその場所に集合した。初めは緋奈の家の近くに迎えに行くと河瀬は言っていたが、家を知られたくないということで文京区の駅集合になった。


「そろそろだな。じゃあ僕たちは離れて見てるから」


「よろしくね」


 僕と二葉は緋奈から距離を取る。


 河瀬がやってきた。車で。僕は車のことはよくわからないが、一見して高級車という感じがした。


 まずい……! 車だと追いかけられない!


 緋奈は不安そうな表情でこちらをチラリと見て河瀬の車に乗り込んだ。 


 僕は盗聴器で車内の会話に耳をすませる。


『今日はご飯食べて河瀬さんのお家に行くんですよね?』


『うん。そうだよ』


『他にどこか寄ったりとかしますか?』


『いや予定はないけど……どこか行きたいの?』


『あ、いえいえ大丈夫です』


 どうやら変なところに連れていかれることはなさそうだ。


 僕と二葉は河瀬の住むタワマンに向かった。


 タワマンのエントランスに入るには電子キーが必要だ。


「どうやって中に入るんだ?」


「任せて」 


 二葉は何やらカードを取り出して電子キーパネルにかざした。エントランスの扉が開く。


「凄いな、これもハックしたのか?」


「そんなとこ。さあ行きましょ」


 二葉、敵には回したくないな……と少しゾクリとした。


 河瀬のルーム、四〇五三号室に着く。ここにも電子ロックがかかっていた。二葉は難なく開錠した。


 河瀬の部屋に入る。一人で住むには余りある広さの室内だった。派手さはなく、シンプルさを基調とした家具が配置されている。


 僕と二葉はベランダの近くのウォークインクローゼットに身を隠すことにした。


 三十分ほど経っただろうか。緋奈からチャットが来た。今からここへ来るそうだ。


 二葉はクローゼットを僅かに開けて部屋の様子を伺う。


「まずい!」


 え? 二葉は僕の正面に覆い被さる。



 ドオン!

 


銃声。二葉の体が揺れる。どうやら二葉は僕を銃撃からかばったようだ。


「な、何だ!?」


 クローゼットが勢いよく開く。


 一美がショットガンを持って立っていた。

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