上の空
いなくなりたい。
ベットの上に仰向けで目を瞑る。意識はある。瞑想状態だ。体を置いて、魂になり空を飛びたい。人を殺し、犯罪者、テロリスト、色々な人の気持ちを考える凄いと思う。実行する勇気はどこで手に入れられるのだろう。喉が渇き起き上がる。枕元にあるペットボトルのお茶を飲む。目を擦ると目やにがつく。下に行き新聞を広げる。コーヒーの値上げの記事を読んで、恋の予感がした。
恋愛がしたい。女の人と一緒にいたいそう思い始めた。小馬鹿にしていたマッチングアプリを始めた。想像よりも凄い世界だった。それぞれ個性があり、魅力的な人が多かった。全てが結ばれるわけがない。時間が経つと気持ちが冷めてしまうから、相手の写真を見ていいなと思ったらハートとメッセージをすぐ送った。会ってみないとわからない。太陽のプロフィールの写真は二十歳の時に友達と見に行ったら初日の出を背に笑顔でピースをしているのを選んだ。アプリを始めて一時間すぐに返信があった。勢いに任せてメッセージを送ったから相手の顔をが分からない。「よろしくお願いします」と送った。その返信は「こちらこそよろしくお願いします」だった。「早速会いたいので土曜日に駅で待ち合わせして、ご飯に行きませんか?」と誘った。「いいですよ。会いましょう。」そう返信がきた。返信が早くて驚く。時間を決めて、やり取りが終った。それに満足して、他の返信には目を付けなかった。
休日の駅は人で溢れていた。待ち合わせ場所のカフェの前にいる。格好は白のTシャツにジャッケットを羽織っている。そう伝えた。一人の女性が話しかけてきた。名前とアプリを見せ合って確認した。お互いお辞儀だけはしなかった。何事もなかったようにそのままカフェに入った。僕はコーヒー、彼女は紅茶を頼んだ。「僕が奢る」というと彼女は「ありがとうございます」とすぐに返事した。惹かれていく。「席は横並びでいい」「大丈夫です」またすぐに返事した。惹かれていく。横並びに座りお互い白のグラスに口を付ける。「お腹空いますか?僕は空いてます。この後ご飯行きましょう、どうですか?」「空いてます。いいですね。そうしましょう」と返事した。惹かれていく。会う前とにかく詮索だけはしないと決めていた。とにかく次へ次へと引っ張って行くのがいいと思っていた。相手の気持ちを聞きつつ、動くのがいい。そう思っている僕に彼女はピッタリだった。少しでも警戒したら引こうと思っていたがそうはならなかった。
静かにコーヒーを飲み終えて、向かったのは焼肉屋だ。多分どこでもいいだろうという気がしたから焼肉屋にした。店員に二名と伝え案内された席で対面に座った。おしぼりで手を拭きながら顔を正面から見た。今まで緊張していたので、顔をしっかり見れていなかった。とても良い顔だった。「ビール飲みますか?サラダとスープは取り皿で、タン塩とカルビを二人枚でいいですか?「はい。ビールも飲めますし、料理もそれでいいです」そう返事してくれた。この人は本当に楽だ。僕の意見を全て汲み取ってくれる。「僕は朝田太陽といいます。」「私は月川夕日です」遅めの自己紹介をした。ビールが届く。乾杯をしてから飲んだ。夕日は美味しそうにそうして上品に飲んだ。太陽は嬉しくなる。サラダとスープが来て取り皿に移すのを夕日がやってくれた。その所作も美しくかった。二人で手を合わせてから食べ始めた。タン塩とカルビが届く。太陽はご飯を頼むのを忘れてたことに気づき夕日の分も一緒に追加注文した。お互いトングを持って焼いて食べた。交わした言葉は「美味しいね」だけだった。
焼肉屋を出て太陽と夕日は駅周りを歩いた。店には入らず外から眺める。会話はない。そのまま改札まで来てしまった。ここでお別れすることした。「今日は、ありがとうございました」したとお互い挨拶をした。二人で改札を通過して太陽は左に、夕日は右に行く。夕日が後ろを振り返ると、太陽が笑顔で手を振っていた。
夕日はこのマッチングで命を救われた。




