6話
自分でも驚くくらい自然な笑み。私は、こんな何気ない日常の中、久々に笑ったと思う。表情筋が固まってる、なんてことは、日頃から笑みを浮かべているから無いけれど。心からちゃんと微笑むことができたのは、いつぶりだろう。
「……!」
大川は、目を見開いたまま固まっていた。
「あ、あれ、大川?」
目の前で手を振ってみせると、大川は少し困ったように笑った。
「夕菜の笑った顔、天使かってくらい可愛くて。心臓止まるかと思った」
そう、だろうか。いや、確かに客観的に見ればそうなのかもしれない。「可愛い」なんて言われ慣れているはずなのに、なぜだか無償に恥ずかしい。お世辞も嫉妬もなく、ただ純粋に「可愛い」と言ってくれるからなのか。
「……ありがと」
なんとなく大川の顔も見れなくて、下を向く。
「待っててくれたの?」
「早く着いたから……。いつも待ってくれてるし」
なんかこれって、大川と一緒に登校したかったって言ってるみたい。そう考えると、なんか恥ずかしい。一人が心細かったってのももちろんあると思うけど……。それ以外も、ある気がする。
「そっか」
「……うん」
どこを見ていればいいのかわかんなくなって下を向く。いつもどんなふうに大川の隣歩いてたっけ。
つくづく思う。私は、大川といると、私じゃないみたい。嘘つきじゃなくて、普通の女の子石橋夕菜。ごくごく普通の、女の子みたいだと思う。
「ありがとね、大川」
「うん?」
何の話?とでも言いたげな大川の表情に、私はまた笑った。
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