4話
大川は、なんかすごく変な人だった。先生が席替えして私と大川は教卓の前で隣席になったんだけど。私が嫌われていることなんてわかっているはずなのに、当たり前のように話しかけてきた。
まるで私のことを、普通の女の子のように扱った。そんなことをされるのは初めてのことで、正直戸惑ってばかりだ。特別媚を売るでもなく、私に嫉妬してなにかしてくるわけでもない。あくまで、普通、として扱う。
そのうち、朝登校して校門をくぐったら、大川が待っているようになった。私に一番最初に挨拶したいらしい。変なの。本当に変。
「おはよう、夕菜」
大川は、今日も私ににこりと笑った。
「今日も待ってたの?」
「当たり前じゃん」
大川が転校してきて今日で2週間だ。まだ少し暑さが残っていたあの日と比べて、最近はもう随分と冬に近づき、寒くなってきたところだ。
「寒いんだから先に行ってればいいのに」
よく見ると、鼻の頭も耳も真っ赤だ。いつから待っていたんだろう。朝は、もう随分と寒いのに。
「俺のことはいいの」
大川は、また笑った。今日もまた、どこか嘘で塗り固められたようなその笑顔に、似ている、と思う。私の笑い方と、とても良く似ている。
どこか自分のことをどうでもいいというような言動をするところ。よく笑うけれどそれは本心を隠すためなところ。物事の本質的な部分を話そうとしないところも。
この人は、私と似たような生き方をしてきた人だ。
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