21話
いつもより朝早く登校すると、教室の掃除をしている麗華が居た。
「麗華ちゃん、おはよう!」
そう言って手を振ると、麗華の顔がサッと強張った。
「……お、おはよう。夕菜ちゃん」
そう言った麗華の顔は暗くて、ずっと床の一点を見つめてる。私は、何を見ているのだろうと近づいて、それを見た。
「……なに、これ」
夕菜に近づくな。ブス。
赤で、デカデカと書かれたプリントが落ちていた。なに、これ。誰がこんなこと……。
麗華が集めているちりとりを見ると、似たようなのが他にもたくさん。
「いつものことだよ」
へらり、と麗華は笑ったけど、こんなの傷つかないわけない。いつものこと、ってことは、毎朝こうやって掃除してたのかな……。私は朝登校があんまり早くないから、気が付かなかった。
「……ごめん」
私は何もされてないのに、涙がこぼれてきた。
「夕菜ちゃんはなんにも悪くないでしょ?」
悔しくて涙が流れるけど、心は冷え切っていて、怒りで頭が狂いそうだった。許せない、心の底からそう思った。
麗華はにこにこ笑ってた。私に勘付かれないように、1人でいつも戦ってたのかな。
「ごめんね」
何度謝っても足りない気がした。




