15話
「なぜですか?」
大川のお母さんは、先生に強い口調で言った。
「なぜ……って、学校だからですよ。夕菜は、特に休む理由がないのにサボっているんです」
先生は、私のことを夕菜、と呼ぶ。授業中は私のことばかり当てる。なんだか贔屓なのか、気に入られているのか知らないけれど、いつもそれが不快だった。
「それは先生が決めることではないはずです」
大川のお母さんはそう言って、隣にいる私のことを見た。
「夕菜ちゃん。夕菜ちゃんは、学校行きたい?」
大川のお母さんは、私たちが学校に行くはずの時間に家にいても、理由を聞いたりしなかった。私も答えたくなかったら、良かったと思っていたけど……。
分かっていたのかな。
「い、行きたく、ない」
見て見ぬふりで誰も助けてなんてくれなかった。先生も、全部見ていたはずなのに。止める素振りも見せず、そのくせ私には馴れ馴れしくて。友達も近くにいなくて立場の弱い私を、いつも先生はどんなふうに見ていたのだろう。
学校に行っても、やりたいことなんてない。大川が来るまでは楽しいと思ったこともなかった。ただ苦しい思いをしに行くだけなら、私は……
「――っ」
視界が涙で歪んで、何も言えなくなった時、大川のお母さんは何も言わず頭を撫でてくれた。その手が暖かくて余計に泣いてしまった。
「ということで、石橋夕菜は欠席です。お引き取り願います」
それだけ言ってブツリと切ったその姿が、本当に心底カッコいいと思った。すごく、すごく安心した。




