10話
どれだけこうやって泣いていただろう。
大川は私をひょいと抱えて気がつけば知らない空き教室にいた。私は太っているって言うほどじゃないと思うけど、標準体重だから結構重いはずなのに……。身長も殆ど変わらない私を、あまりにもひょいと運んでみせたから驚いた。
大川が背中を擦ってくれて、ようやく落ち着いてきた。
「落ち着いた?」
「んぅ」
喉もガラガラで、目もパンパン。ちょっとスッキリしたからか、この顔を見せると失望して騒ぎ出すやつとかいるんだろうなぁ。私も人間なのに。なんて、呑気なことを考える。
「……もうすぐ、人が来ちゃうね」
遊星に言われてふと時計を見ると、もうすぐで8時。朝の会が8時30分からだから、たしかにもう少ししたら人が集まってきてしまいそう。
「ほん、とだ……」
こんな顔、アイツらに見られたらどうしよう。泣いてたこと、ずっと言われるんだろうな。
「……ねえ、夕菜。今日は逃げちゃおうか?」
大川は、私に向かってにやりと笑った。
「に、逃げるって、どうやって……」
もうすぐで学校生活が始まるというのに、どこにどうやって……。
「夕菜は、逃げていいんだよ」
逃げていいよ、なんて、初めて言われた。そういえば、いつだって逃げられたのか。学校から抜け出して、外に助けを求めることもできた。職員室に駆け込んで助けを求めれば、もっと変わっていたのかもしれない。どうして今までそんな事考えられなかったんだろう。
「……たしかに」
そう言うと、大川はどこか嬉しそうに微笑んだ。
「だから、今日は最初の一歩!夕菜の泣き顔を見せるのは俺も嫌なので、逃げてしまいましょう!」
大川はそう言って、私の手を取って駆け出した。
感想、リアクションなんでもwelcomeです




