俺の女たち
俺は生活を謳歌している。金と女が好きだ。
そこそこイケメンだし、女は優しくすれば寄ってくる。
居場所を転々としながら女を物色し、評価を手帳に記入している。
セフレはたくさんいるから、忘れないようにだ。
めんどくさい女はノーサンキュー。そういうやつは一度きりだ。
恋愛なんて面倒なことはやっていられない。俺は自分の性格に素直でありたい。
そういう意味で、割り切っている。
ちょうどチョロそうな女がいたので声をかけたが、好意を出しても乗ってこない。
好意の表現はできる。遊べる。でも俺を(・)好きにならない。
ちょっとめんどくせーわ。
そういうのはさっさと切って、次に行ったほうが効率が良い。
俺は暇人じゃないので。
と、その女にバイバイして次を物色しに行った。
次の女はすぐに見つかった。
マスターと知り合いのバーに連れていく。上手く誘導するためだ。
勿論、マスターは初めての客のフリをしてくれる。
良い感じに女が酔い始め、トイレへと立った。
ざっとこんなもんよ。
俺は得意げになって、他の客を見渡す。
すると、ばっちり目が合った。
さっき声をかけた女。
もう切ったんだから、知らない人として扱えばよい。
もししつこくきたら、頭のおかしい女としてマスターになんとかしてもらおう。
と思ったが、そいつは声をかけてこない。
ま、あちらさんとしてもナンパ男に声をかける意味なんてないか。
興味なさそうだったし。
・・・一人で飲みに来てるのか。まさか、追いかけてきたんじゃないだろうな。
いや、俺が入ってからドアチャイムは音を立てていない。
あいつは俺より先にいたことになる。
女が戻ってきた。
「お待たせ」と、期待する目でこちらを見る。
・・・なんか気分じゃないな。
「悪いが、用ができた。先に帰ってくれ」
女に金を渡す。
女は驚いていたが、素直に受け取って、バーを出て行った。
マスターも、こちらをチラと見る。
珍しいものを見る目をするんじゃねえよ。俺だってそういうときもある。
立ち上がり、一人で飲んでいる女に声をかけた。
「こっちで飲まねえか。一人なんだろ?」
すると女は素直に隣にかける。
いや、連れてきてどうするよ俺。
しばらく沈黙が続く。
「何飲むんだ?奢るよ」
グラスが空いたので、声をかける。
女はこちらを見て、向き直った。
「○○○○(お酒の名前)」
「マスター、俺とこの子に○○○○を」
「かしこまりました」
なんだ、さっきとはずいぶん違うものを頼むじゃねえか。
奢り目当てでもなく、愛嬌を出すのでもない、理由のわからない選出。
わかりにくいやつだ。
「じゃ、乾杯で」
少しグラスを上げて、酒に口を付けた。
この女、どうすりゃいいんだ。
自分までよくわからなくなっている。
この女に酔わされたのだろうか。まだ一口しか飲んでいないのに。
そういう日もあるか。