第63話 解決
サブタイトル入れ忘れてましたm(_ _)m
「よし、じゃあ突撃するか」
「待て待て」
こともなげに言ったシンジに待ったをかける支倉。
「爆弾は解決しても人質はいるんだぞ」
といっても、犯人たちのレベルはどんなに高くても一万はいかないはずだし、どうとでもなると思うが。
「そうだよ。一応中の様子を確認した方がいいよ」
カナタにも言われて、まぁそうかと思い直す。
「じゃあちょっと様子を見てみるか」
シンジは、校舎の方に目を向けて、物体を透過して中の様子が窺える「透視」と遠くの音が拾えるようになる「聞き耳」を使う。
すると中がよく見え、声も拾えるようになる。
各教室には20から30人ほどの生徒と犯人が一人いるようだった。それとは別途職員室には多めに犯人たちがいる。
犯人グループは全部で30人ほどだろうか。支倉が言っていた数より多い。
犯人たちは無線で常にやり取りをしているようだ。リーダーと思しき人物は、他何人かを従えて放送室におり、そこから指示を出している。
『あと15分反応がなければ人質を一人殺せ』
などと物騒なことを言っている。
「いや、でも現時点で一人も殺されてないのは奇跡だよな?」
人質はかなり多い。何人か消しても大勢に影響はないと考えても不思議ではないが、何か理由があるのだろうか。
「全員無事なのか」
「少なくとも見た感じ怪我をしてるやつや倒れてるやつはいないな」
「それはいい知らせだな」
「ただ、犯人たちをまとめて全員処理したいとダメそうだな。人質がかなり分散してて、クラスごとに犯人が配置されてる」
どこか1ヶ所で異常が発生したらすぐに人質に害を加えられかねない。
「かなり統率されてる感じ?」
「そうだな。さすが外国の傭兵部隊って感じではあるな」
「正面突破は厳しそうだね」
全員倒すのは簡単だが、それでは人質に被害が出てしまうだろう。
「だな。透明化して順番に倒すかとも思ったが、定点チェックしてるっぽいから、途中でバレそうだな」
「こちら〇〇。異常なし」という連絡が常に行き交っている。途切れたらこちらの動きがバレるだろう。
「どうする?私がやるなら氷魔法で全体を凍らせるか、闇魔法で精神攻撃するかになるけど、どっちも生徒だけ避けるのはちょっと難しいかな」
カナタは勇者だけあって、攻撃的な魔法は豊富なのだが、搦手系のスキルはあまり持っていない。
「穏便に頼む」
「だよな…。うーん、全員眠らせるか?あとは空間凍結か」
空間凍結は、文字通り空間を凍結させる魔法でその中では誰も身動きがとれなくなる。だが、シンジの意思で一部動かしたりすることは可能だ。
「眠らせるのは、個体差あったよね?」
睡眠は、世に寝つきが良い人と悪い人がいるように、効き方には個体差がある。
「レベル差があるから大丈夫だと思うが…まぁさっきと同じで両方使うか」
空間凍結した上で全員を眠らせるのだ。そして、転移で犯人を回収する。
「よし、目処はたった。犯人は30人くらいいるんだが、どこに収容すればいいんだ?」
「30人か、多いな。20人想定で護送車を呼んでたからな。ちょっと足りないな」
「なら、20人は護送車に回収して、残りはいったん放送室にでも詰め込んでおくか」
「それで頼む。まだ時間はあるんだな?」
「あと10分くらいはあるな」
「護送車側に人を待機させる。5分待ってくれ」
支倉が指示を出すためにその場を離れる。
「四人は、いた?」
カナタが聞いてくる。弟子にとった四人のことだろう。
「ああ、いた。無事みたいだ」
「良かった!にしても、このタイミングで蒲田に立てこもりって、出来すぎてるよね?」
弟子をとったタイミングでの蒲田ダンジョンスクールの襲撃。何らかの因果関係を感じてしまうのは、関係者だからなのだろうか。
「そうだよな。でも呼ばれてたのは支倉さんで、支倉さんにもまだ弟子のことは細かくは伝えてないんだよな」
そう考えると、ただの偶然なのか?という気もする。
「こういう時こそ、情報屋じゃない?」
「あ、そういえばそうだな。如月に背後関係を探ってもらうか。まぁ警察の尋問で何かわかるかもしれないが、相手は傭兵だからな、口を割らない可能性もあるよな」
二人はすでに解決した後のことを話し合う余裕ぶりである…。
そこに支倉が戻ってきた。
「こちらの準備は大丈夫だ」
「じゃあ、やるぞ」
宣言して、「スリープ」と「空間凍結」を同時に校舎の方に向かって放つ。そして、犯人だけをピックアップして護送車に転送していき、20人終わったところで残りは放送室に転移させていく。
作業——シンジにとっては作戦というほどのものでもなく、単純作業だ——は数十秒ほどで終わった。
「よし、完了だ」
「もう、か?」
「ああ。護送車を確認してくれ」
「わかった。追加の護送車も少ししたら来るはずだから、そしたら残りも頼む」
「あと、生徒たちも全員眠らせてる。起こすタイミングを教えてくれ」
「わかった。説明人員を教室に配置したら起こしてもらおうか。そちらも手配する」
支倉が再び離れる。
「すごいな、犯人たちを一網打尽だぞ...」
「一瞬で解決か」
「一位は半端ないな...」
特殊事件捜査係の方からひそひそ声が聞こえてくる。
「噂されてるよ?」
「なんで俺だけ目立ってるんだ。次は山田にやってもらうからな」
「いや、私がやるといろいろ大変なことになっちゃうから...」
氷魔法で校舎全体が氷漬けになったり、闇魔法で多数が精神異常をきたしたりするだろう。
「だよなぁ」
とりあえず、特段の難関もなく、人質立てこもり事件は解決した。
あまりにあっさり解決したので、ピリピリしていたお偉いさんたちは拍子抜けしたそうだ。
「こんなにあっさり解決するなら出張って来る必要はなかったではないか!」などと騒ぐ人物もいたが、こういう人物は解決しなかったらしなかったで騒ぐだろうから、無視が一番だ。
「とりあえず、如月を呼び出すか」
表面的には解決したものの、背後関係を洗うのはこれからである。なぜ、わざわざ外国の傭兵部隊が、日本のダンジョンスクールで人質立てこもり事件を起こしたのか?これをきちんと確認しておかないと、また同じことが起こりかねない。シンジにとって、本番はむしろこれからである。
誤字報告、ありがとうございます!!m(_ _)m




