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第58話 顔合わせ

無事に「一位の講説」の五日間 を終えたシンジは今日、弟子をとる予定だ。

あの後世間は騒ぎになっていて、支倉とか橘とか泉田は忙しいようだが、必要なら記者会見をするとも言ってあるし、何かあれば言ってくるだろう。何が言いたいかというと、つまり何か言われるまでは放置である。


「は、初めまして!!」


ヨツバとアヤセと一緒にやってきた二人は、かなり緊張しているようだった。


シンジとカナタ、そしてヨツバたちのパーティー四人は蒲田近くのファミレスで顔合わせをしていた。

いろいろと話し合った結果、シンジとカナタはいつもの認識阻害をしている。さすがにマスクはしていないが。


「うん。ヨツバたちから話は聞いてるよ。どうぞ座ってね」


カナタがなるべくにこやかに話しかける。

ヨツバたちが連れてきた二人——小早川ヨウスケと引芝ユキナ——は、緊張した面持ちでボックス席に腰掛けた。ヨツバはその隣に、アヤセはシンジとカナタ側に腰掛ける。


「ドリンクバーでいい?」


好きなものを頼んでねと言おうと思っていたが、明らかにそういう雰囲気ではないので無難にドリンクバーを全員分頼む。


「初めまして、ヨツバたちから聞いてると思うけどランキング二位の山田です。こっちが一位の佐藤。これは偽名で、本名はカナタとシンジって言うんだけど、一応秘密でお願い」


ヨツバたちには、一通り事情を話してもらった上で連れてきてもらっている。異世界云々までは伝えていないはずだが、一位と二位が実は幼馴染の二人であること、そのことは他言無用であることは伝えられているはずだ。

その上で、二人が弟子入りを了承するということだったので連れてきてもらったのだ。


「は、はい!私は引芝ユキナと言います」


「小早川ヨウスケっす…!」


二人は、年齢もそこまで離れていないのはわかっているはずだが、完全に目上に対する姿勢である。ランキング一位と二位相手なら当然かもしれないが。


「そんなに緊張しなくて大丈夫だよ。一位と二位としてじゃなくて、ヨツバたちの友達だと思ってくれればいいから」


「いえ、でもこれから弟子入りさせていただくわけですし…」


ユキナが遠慮がちに言う。


「弟子っていってもそんな堅苦しいものじゃないから。もちろん強くなるのは手伝うけど」


「カナタ、そう言われても困ると思うよ」


ヨツバが助け舟を出す。


「あ、ヨツバ、この姿の時は山田って呼んでね」


「そうだった。山田さん」


ヨツバにそう呼ばれると違和感しかないが、慣れるしかないだろう。


「まぁ、話してるうちに慣れてくるだろ。とりあえず今後のこと話そうぜ」


「佐藤君に賛成」


アヤセが頷く。


「で、二人から聞いてると思うが、俺たちは正体を隠している。他言無用で頼むな」


「もちろんです」


ユキナとヨウスケは神妙に頷く。


「それで、改めて確認なんだが二人は俺たちに弟子入りしたいってことでいいんだよな?」


ヨツバたちが意思確認をしているはずだが、念のため聞いておく。


「はい!早く強くなりたいっす!」


ヨウスケが答える。


「ちなみに、なんで強くなりたいんだ?ありがちな質問で悪いが」


「探索者はやっぱり強くないといけないと思います!男としても強さに憧れるっていうか」


ヨウスケはかなり単純な男のようである…。


「私は、探索者になって早く稼ぎたいんです。それにはやっぱり強くないと」


ユキナの方はかなり現実的だ。

ちなみに、ダンジョンスクール生は、一応探索者ライセンスは持っているが、仮のもので、一般のダンジョンに自由に出入りできるわけではない。自動車免許の仮免のようなものだ。


「なるほど。まぁ血反吐を吐くまでやれとは言わないが、弟子入りするからにはそれなりにはなってほしいと思ってる。そのための協力は惜しまないし」


「楽しみっす!」


二人は目を輝かせる。やる気は十分なようである。


「じゃあ今後の予定だな。まずは四人には、転職オーブを使って最上位ジョブに転職してもらおうと思ってる」


「めっちゃ楽しみ!」


ヨツバはかなり嬉しそうだ。もちろん、他の三人も。


「最上位ジョブ…!いいんすか?」


「ああ、転職オーブはたくさんあるからな。俺たちは使わないし」


「二人は何のジョブなんですか?」


「俺がヘルプデスクで、山田が勇者だ」


「勇者!!」


「ヘルプデスク?」


ヨツバたちと似たような反応だ...。

勇者はイメージがつくが、ヘルプデスクは謎らしい。それはそうだろう。普通のRPGやラノベでは出てこないし、響きからして強いのかもよくわからない。


「サポート系のジョブだな」


「いや、サポートと見せかけて化け物だからね。みんな騙されないでね」


カナタが口を挟む。


「化け物は言いすぎだろ」


「いやいや、自覚なさすぎ。まぁともかく、二つとも神話級のユニークジョブなの」


「神話級!!」


「ユニーク!世界に一人しか持ってないってことですよね?」


「うん、そうだね」


「すごいっす!!」


「だから、俺たちには特に転職オーブは必要ない」


シンジが話を戻す。


「で、四人には転職してもらったあと、週に一回パワーレベリングと、別日に特訓しようと思ってる。計週ニだな。あとは四人でダンジョンに潜ったり、頑張ってほしい」


「パワーレベリングってことは、どこかランクの高いダンジョンに連れて行ってもらって経験値をわけてもらうって感じかな?」


アヤセが聞いてくる。


「ああ。せこいと思うかもしれないが、一番手っ取り早いからな」


「お二人がいいならありがたく経験値はいただきますけど…」


「ありがたいっす!」


特に異論はないようで、四人が頷く。ヨウスケとユキナも話しているうちにだいぶ緊張は解けたようだ。


「じゃあ曜日を決めようか」


そこから、具体的な日程の話を詰めていく。その後は、打ち解けるために二人が探索者になったきっかけや、幼馴染四人の昔の話などして、その日は解散となった。


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