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第55話 幼馴染

その夜、幼馴染四人は久しぶりにシンジの家で集合した。

持ち寄ったお惣菜をダイニングテーブルに並べる。食べ始めてすぐ、ヨツバが口を開いた。


「それで、二人がランキング一位と二位なんだよね?」


改めて聞かれる。


「うん、そうなの。黙っててごめんね」


カナタが頷きながら謝った。


「黙ってたことについては別に怒ってないけど…それは二人が五年間行方不明だったことと関係あるんだよね?」


当然聞かれると思っていた質問だ。

ランキング一位と二位のことは世間でも有名だ。不動の一位と二位でありながら、最近までは一切正体不明だった。が、ここ最近いきなり日本人だと判明し、表だった活動も少しずつ始めている。日本人でこのことを知らない人はいないだろう。

その二人が、五年間行方不明だったシンジとカナタであるとなれば、二人が強いのはその期間に何かあったからだと考えるのは当然だろう。


「まぁ、そうだな」


そして、聞かれたらどう答えるかは決めてある。カナタが口を開いた。


「実は…信じられないかもしれないけど、私とシンジは五年間異世界にいたの」


そう、正直に話すことにしたのだ。ここまでバレていたら隠しても仕方ないし、よく考えたら、ダンジョンが出現したご時世である。異世界も受け入れられるのではないかと思ったのだ。


「…異世界?って、あの異世界?ラノベとかに出てくる?シンジ結構好きだったよね?」


「そう、その異世界」


「え、ほんとに?ほんとに異世界に行ってたの?」


アヤセも身を乗り出す。


「そうなの。アーカストっていうところなんだけど、そこにはもともとダンジョンがあって、魔王や魔族がいて。私たちは魔王を倒すために呼ばれたの」


「魔王!?倒したの?」


「うん、倒したから戻って来れたんだ。まさか戻ってきたらこっちにもダンジョンができてるなんて思いもしなかったけど」


「ちなみに、二人のジョブは…?」


隠すつもりはないが、こちらでジョブを言うのは初めてでちょっとだけ緊張する。


「えーと、私が勇者で」


「「勇者!!」」


「俺がヘルプデスク」


「「ヘルプデスク!?」」


「え?何、ヘルプデスクって。なんか現代的」


「向こうでも初めてのジョブって言われたな」


「でも万能なんだよ、ヘルプデスクって。補助魔法は大体なんでも使えるし、武器も扱えるし、錬金とか薬学とか予知とかもできるし。まさに困った時のヘルプデスクって感じ」


「でもヘルプデスクのシンジが一位なんだよね…?」


ヘルプデスクと言えば、普通は補助的役割だ。それが勇者を抜いて一位である。ちょっと不思議だ。


「ヘルプデスクが万能すぎて」


カナタは肩をすくめた。特に負けて悔しいとかはない。共に魔王と戦ったのだ。強ければ強いほど心強い。嫉妬とかしている暇もなかった。


「ちなみにちなみに!二人のレベルは!?」


「俺が十二万くらいで」


「私が十万くらい」


「…え?ちょっと待って異次元過ぎて」


さすがに絶句する二人。


「じゅうまん??そんなの可能なの?人間なの?」


さりげなく失礼なことを言うヨツバ。


「まぁ向こうでも十万は一つの壁って言われてたな」


人間としての限界の一つがレベル十万の壁だった。この壁を超えるにも一苦労あったのだ。


「だって、世界ランキング三位の人って13000くらいだよね?」


「ローランド・アランベルトね、そうだよ。でもアーカストではレベル五万くないならその辺にもたまにいたよ」


「さすが異世界…!」


「アーカストは昔からダンジョンがあって、魔王と戦ってきたから。地球とは状況が違うよね」


「って言っても五万とか、十万とか…」


そこでいったん二人のステータスについて聞きたいことは終わったのか、少しだけ沈黙が落ちる。


「それで、シンジはどうしてダンジョンスクールで講義することになったの?あとポーションとかも売ってるよね??何か目的があるの?」


それに対して、シンジは特に隠さずに状況を告げる。こちらの世界にも魔王がいること。今後はもっとランクの高いダンジョンでバーストが起こることも間違いないこと。そういったことに対処できるように人類のレベルを上げたいこと。そのためにポーション革命やスキルスクロールの配布をしていること。ついでに、石碑のメッセージの件も伝える。


「なんか思ったより…いろいろやってたんだね」


二人が戻ってきてからまだ数ヶ月だ。

その間に、結構な活動をしていたことに驚いているようだ。


「それでね、次はダンジョンスクール生に転職オーブを配る話になってて」


「転職オーブ!」


「いいなぁ、転職オーブ!」


以前聞いた二人のジョブは中位。転職はぜひしたいだろう。


「二人には最優先でいいのあげるから、期待しててね」


「え、マジで!それは楽しみだな〜」


「でも、いいの?僕たちを特別扱いしたら二人の正体がバレやすくなる気もするけど」


冷静なアヤセのコメントだ。確かに、二人を特別扱いしたら二人との関係性を疑われるかもしれない。そして、そこからなら行方不明だった幼馴染二人に辿り着くのは容易だろう。


「うーん。でも二人にバレたのに二人にアイテム渡さないのもなぁ。もう気兼ねなく渡せるんだしどんどん渡したいが」


「…っていうかシンジってさ、ちょっと?結構?変わったよね?どうしてかなって思ってたけど異世界に行ったからだったんだね」


「ん?まぁな…異世界ではいろいろあり過ぎてもとの人格はちょっとどっか行ったかも」


異世界に行った時も最初はちょっとびくびくおどおどしていた節もあったが、死に物狂いで戦っているうちにそういう感情はどこかへ行ってしまった気がする。


「異世界、壮絶そうだね…」


「まぁ、壮絶は壮絶だったな…」


「せっかく異世界で頑張って手に入れたアイテム、二人に渡したいよね」


「正体の件をどうするかだよなぁ」


二人は何が何でも正体を隠したいかと言われると、そうでもないが、正体を知られると困ることが一つある。それは血縁関係を知られることだ。二人に関しては、何かあってもどうとでもなる。しかし家族や親類はそうもいかない。人質にとられたりしたら困る。


「いっそ二人ともダンジョンスクールやめて私たちに弟子入りする?そしたら特別扱いしても変じゃないよね?」


「いやそれでもなんで弟子にとったって話にはなると思うけど」


「でもそっちの方が誤魔化せる気もする」


「あー、でもそれだと今パーティー組んでる二人が困るかも」


そういえば、以前ダンジョンスクールの実習を様子見しに行った時、二人は別の二人とパーティーを組んでいた。


「じゃあ、その人たちも一緒にどう?そしたら今のまま基本四人で活動してもらっていいし。私たちもいつも一緒ってわけにもいかないしね」


「確かに四人一緒なら、二人の正体がバレるリスクも減るかもね」


カナタの提案に、渋っていたアヤセも頷く。


「言いにくいんだが、その二人は信用できるんだよな?」


シンジは、一応聞いておかねばと口を開く。


「うん、ユキナとヨウスケは大丈夫。だからパーティー組んで背中を預けてるんだよ」


ヨツバの言葉に、シンジも頷く。


「じゃあ、その二人が良ければ、四人でダンジョンスクールやめて弟子入りしてくれ。弟子って言っても名目上な。師匠とか言うなよ」


「師匠とは呼ばないけど、いろいろ教えてほしいよ!ね、アヤセ!」


「うん、異世界のノウハウ、気になるよ」


話はまとまったようだ。

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