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第50話 水の中

その日、シンジはカナタと共にスウェーデンの最上位ダンジョンに来ていた。

今頃、『冥界の果て』もインドに行っているはずだ。

ちなみに、総理から手に入れたライセンスは日本国内用なので、今回もこれまで同様透明化してこっそりダンジョンに進入する。


「最上位だから、サクサクいこう」


カナタの言葉にシンジも頷く。

普通なら、「最上位だから警戒して行こう」となるのだろうが、二人の場合は警戒するのは神話級だけである。


二人がダンジョンに入ると、【最上位 アルファベットの入り口】の文字がポップアップする。


「今度はAか。やっぱり頭文字は被らないな」


「絶対意味があると思うんだよねぇ」


ダンジョンの中は、砂浜で、周囲を海に囲まれていた。海しか進む先がない…。


シンジが『探知』すると、どうやら次の階層への階段は水底にあるようだ。


「カナタよろしく」


「オーケー」


このタイプのダンジョンは別に初めてではない。異世界にも似たような海ダンジョンがあった。攻略は水魔法系列の『水の結界』を持っていればさほど難しくはない。『水の結界』は、文字通り水の中で張れる結界で、内側には適度な酸素を含む空気が満たされるようになっている。まさに水の中を活動するのにうってつけの魔法だ。

あるいは、マナの負荷は増えるがシンジの空間魔法系列の『結界』でも代用可能だ。

逆に言うと、これらを持っていないと攻略は困難である。

なのでこういうダンジョンは、初見ではどうこうできず、必要なスキルを探しに行ってからまた戻るというパターンがよくある。


カナタの張る『水の結界』に包まれて海に入る。


水の中にはモンスターがいるにないるが、最上位ダンジョンとは思えない雑魚ばかりである。ダンジョンのエネルギーを海を発生させるところに使い過ぎて、モンスターは弱いのだろう。


「最上位の中でも楽なタイプね。闇の入り口と同じパターン」


環境が過酷なダンジョンは、その他は楽な傾向にある。しかし二人からすると環境はほとんど問題にならない。結果、環境系のダンジョンは楽なダンジョンということになる。


「じゃあ、どんどんいくか」


二人は進む片手間にモンスターを屠っていく。一応アイテムも回収する。二人にとってはたいしたアイテムでなくても、こちらの世界では重宝されるものが多い。数を持っていて困ることはないだろう。


そこからしばらく似たような海階層が続く。ボスとも海の中で戦う。普通であれば、これだけ海階層が続くと、『水の結界』を維持するマナが心許なくなっても不思議ではない。しかしカナタに限ってはそんなことはない。

おおよそ百あるはずの階層全てが水の中でも問題はない。もともとのマナ量が多い上、【世界樹の葉】で常時少しずつマナが回復しているのだ。


節目の50階層もまた水の中だった。

階段——もちろんここにも水が満ちている——を抜けると、真下に大きな黒い塊が見えた。

かなりのサイズだ。


(鑑定!)


【ステータス】

種族:フラッグホエール(ボス)

名前/性別/年齢: ー(オス、0)

レベル: 50,000


要は、でかいクジラだ。ただ、異世界でも遭遇したことのないモンスターである。どういう攻撃をしてくるのかはわからない。


「カナタ、フラッグホエール、レベル五万だ」


ゴボゴボ…


二人が話している間にも臨戦体勢に入ったのか、フラッグホエールの頭の穴から激流が流れてくる。


(絶界)


直撃自体は防ぐが、それによって乱れた水の動きに結界が揺れる。


ゴボゴボ…


今度は尾鰭が飛んできた。普通の尾鰭ではなく、四角い。


(だから(フラッグ)なのか?絶界)


どうでもいいことを考えながら防ぐ。水の結界の中でしか行動できないのでやや面倒だ。しかし的は大きいし、動きもそこまで速そうではない。


「カナタよろしく」


「了解!アクアスプリット!」


水を斬る魔法だ。マナをたっぷり込めて効果範囲を広げ、クジラを真っ二つにする。

クジラは粒子となって消えると、水色のサークレットが残された。


「【アクアサークレット】か」


水の中で呼吸ができるようにしてくれるサークレットだ。便利ではあるが、水の中で行動するには泳がないといけないし、水圧で疲れるし、そこまで万能ではない。

とりあえず回収しておく。


「あと50階層くらいかな」


最上位ダンジョンは階層はおおよそ百。そして踏破適正レベルは五万だ。


二人は次の階層へと進む階段に向かった。


結局その後も苦戦することなく、二人は最下層までたどり着いた。

ダンジョンは最初から最後まで水で満たされていた。普通のマナ量では最下層までは辿り着けないだろう。


最下層は他の石碑ダンジョンと同じく土壁の部屋の中央に石碑があった。水の中でも同じ仕様らしい。


石碑を確認する。


《この世には ——Alphabet》


「これであとは泉田さんたちのインドだけだね」


「ああ。あとは待ちながら、アルファベットの意味を考えるだけだな」


二人は頷くと、スウェーデンのダンジョンを脱出した。

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