第49話 アルファベット
総理と無事にマナストーンの契約を結んでから数日後。
残っていた下位から上位の石碑ダンジョンを攻略していたカナタが帰ってきた。
その間に、緑山・京極・風淵チームも帰ってきている。
今回判明したのは六つだ。
《光に出て ——X》
→【下位 Xの入り口ダンジョン】、サウジアラビア
《そして ——Universe》
→【中位 宇宙の入り口ダンジョン】、アルゼンチン
《油を添えて ——Tears》
→【中位 涙の入り口ダンジョン】、オランダ
《届かない ——Ice》
→【上位 氷の入り口ダンジョン】、インドネシア
《道が通る時 ——Memory》
→【上位 記憶の入り口ダンジョン】、メキシコ
《照らす光に ——Season》
→【上位 季節の入り口ダンジョン】、ブラジル
これで合計22個。残るはスウェーデンの最上位ダンジョンと、『冥界の果て』に依頼しているインドの中位ダンジョンのみである。
「この中で気になることはあるか?」
いつものファミレス。シンジとカナタは向かい合っていた。新たにわかった六つを羅列した紙を二人で眺めている。
「Xかなぁ。Xの入り口って何?って感じね」
他は単語なのになぜXだけXなのか。それではまるで…
「Xでないといけない必然性があるってことだよな?」
「他のもそうなのかな?頭文字が大事とか?」
「それはあり得るな!」
改めて、これまでわかっていた16個と、今回判明した6個を合わせて見てみる。
「頭文字のアルファベット…被ってないね」
「これは結構な発見じゃないのか?ってことは並び順はアルファベット順か?」
別の紙を取り出し、アルファベット順に並べてみる。
《二つの ——Blizzard》
《困ったら ——Cherry Blossom》
《二つの ——Darkness》
《星に ——East》
《どうしても ——Fairy》
《星がある ——Garden》
《影がある ——Heart》
《届かない ——Ice》
《闇からの影 ——Knight》
《月から ——Love》
《道が通る時 ——Memory》
《影は ——Nightmare》
《光を侵す ——Oasis》
《太陽の光が ——Quiz》
《自らを ——Revival》
《照らす光に ——Season》
《油を添えて ——Tears》
《そして ——Universe》
《呼びなさい ——Wish》
《光に出て ——X》
《僕を ——Yesterday》
《忍び寄る ——Zero》
「うーん、ダメだ、なんか違うな」
「しかもアルファベットは26文字だよね?ダンジョンは24個しかないよ」
ダンジョンの数については、シンジの予言スキルで予言しきれなかった可能性もあるが。
「あと気になるのは“そして”だな」
「それは確かに。わざわざ接続詞をいれる必要あったのかな?」
そんなに長い文章ではないようだし、そこに接続詞を入れる必要はあったのだろうか?
「ダメだ、わからん!」
「とりあえず保留ね…。あと何か共有事項ある?」
「ああ、そうだった。如月に作成を頼んでた世界でレベル千超えしてる人間の一覧が来たんだ」
如月は一週間、と言った通りにきっちり一週間で連絡してきた。リストの内容は、人物によってばらつきはあるものの、それなりに詳細だった。ただし、不明な人物もいる。
こちらも一覧を印刷したものをカナタに渡す。
「へぇ、ランキング七位って不明なんだ」
カナタは軽く目を通しながら呟く。
「らしいな。三位がアランベルトでレベルが13640。四位が韓国のイ・ソア、レベル9969、五位がフィンランドのユハ・ヴィエリ、レベル8910、六位がフランスのオレリアン・ボーヴォワール、レベル7871、そして七位が不明」
「こうして見ると…地球的にはアランベルトって突出してるね」
レベル一万を突破してるのは彼だけだ。そしてジョブはユニークの『英雄』。適性は『勇者』であるカナタと全く同じである。
「まぁな…でも一万で突出ってやばいだろ」
「それはそうなんだけどね…」
異世界で一緒に旅した勇者パーティーの仲間は、低くてレベル七万台。召喚された王国にも五万くらいの人間はちらほらいた。
「でも、ダンジョンが誕生してからまだ三年で、手探りでやってきたんだからきっとこんなものだよね?」
そう、ダンジョンが誕生してからまだたった三年。情報もない、アイテムもない、経験もない。そんな中で地球の人たちはやってきたのだ。
「ああ。そんな中に俺たちが戻ってきたのには意味を感じなくはないな」
勇者として召喚されたことがある身としては、「意味があって別世界に呼ばれる」ということが実際にあることを体感している。
「どうなんだろうね?でもそうすると召喚されたのもこのためってこと?異世界でのっぴきならない状況があったのは事実だし、地球のためだけに召喚されたとは考えにくいと思うけど」
「確かになぁ…しかしどうしてこうも平穏が遠いんだ!」
嘆くシンジ。地球に戻ったら平穏に暮らす予定だったのに…。
「いやそれはシンジがいろいろ首突っ込むから…」
「カナタもだろ!」
「それは否定しない」
二人は苦笑した。
「それで、ユニークはいた?」
「ああ、100位以内のユニークはわかっているだけで三人。4位のイ・ソアが聖女、11位アメリカのヘクター・ブラウンが盾聖、21位アメリカのレベッカ・ハニーウェルが弓聖だな」
「全部、アーカストにはいなかったユニークだね」
地球にいるユニークは全員アーカストにはいなかったユニーク。そして、今のところアーカストにいたユニークで地球にいるユニークはいない。
「…アーカストと地球でユニークが共通カウントっていうのもちょっと現実味を帯びてきたね」
もしそうならアーカストは異世界だけど、異世界ではないと言えるかもしれない。ユニークが共通カウントということは、何らかの繋がりがあるということだからだ。
「これが何を意味するのかまではわからないけど」
「そうだよなぁ…共通だからどうしたとも言えるし、世界の秘密に迫っているとも言えるし」
共通だったからといって何かが変わるわけではない。強いて言うなら、アーカストですでにいたユニークは地球では見つからないということがわかるくらいだ。
「もしアーカストと地球に何らかの関係があるなら、ダンジョンが似通ってるのも理解できるよな」
「アーカストと地球の関係は、もう少し調べたいね」
「そうだな」
役に立つかはともかくとして、どういうことなのか気になるは気になる。
二人は今後調べたい事項の一つとして「アーカストと地球の関係」を頭の片隅に置いておくことにした。
評価下さった方々、ありがとうございます!!!めちゃくちゃモチベーション上がります!!まだの方も良ければぜひm(_ _)m




