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第44話 企み

「早速呼んでくれて嬉しっす〜」


ファミレスで待っていると、緩い声が聞こえた。『情報屋』の如月だ。


「今日はそっちの姿なんすね〜」


迷ったが、シンジはいつもの一位の格好——認識阻害とマスク姿——だ。


「ああ。一応な」


しかし如月はすぐにわかったらしい。情報屋だけあって、こちらの姿も知っているようだ。

如月はシンジの向かいの席に腰掛けた。


「幼馴染の二位さんはいないんすか〜?」


やはり完全にバレている…。

まぁバレていることをあえて伝えようとしてくれているようだが。


「お前にバレてるかわからなかったから一応な」


そこで如月がドリンクバーを頼み、コーヒーを持ってきた。


「それで、今回はどんなご依頼で?」


「ダンジョン省の副大臣の動向について探ってほしい」


「うーん、なるほどっす〜」


如月は少し難しい顔で答えた。


「何か問題が?」


「前の雇い主のことバラすのはちょっと御法度というか〜」


情報屋界隈にもそういうのがあるらしい。


「別に以前知り得た情報を漏らす必要はない。今の動向が知りたいだけなんだが」


「それならギリギリセーフっすね〜…たぶん」


本当か?

しかし本人がいいと言っているならいいんだろう…たぶん。


「具体的には副大臣が俺たちについてどれくらいわかっているのか、今後俺たちに対してどういうアクションをとってくるのか知りたい」


といっても、副大臣がシンジたちについて知っていることはたかが知れているだろうが。


「それならお安い御用っすね〜。いったん三日くらいもらってもいいっすか?」


「ああ。大丈夫だ」


「他に知りたいことないっすか〜?」


聞かれて、考えてみる。特に他のことを依頼する予定はなかったが——。


「そういえば、他国のランカーの情報はわかるか?」


「お、そういうの得意分野っすよ〜。ランカーについては公にされてるケースとされてないケースがありますからね〜。何位くらいまで知りたいんすか?」


「とりあえずレベル千を超えている連中は一通り把握しておきたいな。わかる範囲でジョブと、国籍と、性格がわかれば理想だな」


今の世の中で、自力で——つまり、パワーレベリングも、スキルもない状態で——千までいったというのは、有望株ではあるはずだ。


「そしたらトップ百くらいっすね〜。性格はどこまでわかるかわからないっすけど〜一週間くらいもらっていいっすか?リストにしとくっすよ〜」


「百か…改めて聞くと、少ないな」


先が思いやられる。


「まぁ佐藤さんからしたらそうかもしれないっすけど〜」


外だからか、ちゃんと偽名の方で呼んでくる。この姿で「夢島さん」とか呼ばれても困る。誰も聞いてないだろうとはいえ。

それから少し情報交換というか、シンジが一方的にいくつか情報を聞き取る。


「では、また連絡するっすよ〜」


そう言って如月は去って行った。


———


三日後、と言っていたが、翌日に如月から電話がかかってきた。


「もしもし?」


「あ、佐藤さん、大変っすよ〜。副大臣なんですが、すぐにでも動きありそうなんで取り急ぎ連絡したっす〜」


「どんな動きがありそうなんだ?」


「その前にっすね、佐藤さんについてですが神奈川県在住ってとこまでバレてましたっす〜」


「……」


思ったより個人情報がバレていた。まぁ、神奈川まで絞れたところでシンジにまで辿り着けるわけではないだろうが。


「どこでバレたんだ?」


「それがっすね〜、佐藤さんが『冥界の果て』の泉田氏と電話してた時にいたファミレスのアナウンスでバレたっぽいすね〜」


なるほど。それは迂闊だった。

確かにあのファミレスは神奈川近辺にしかない。


「…今後気をつける」


「そうしてくださいっす〜。それで、副大臣の動きなんすけど〜、どうやら総理大臣を焚き付けてるっぽいっす〜」


「総理大臣〜?」


またビッグネームが出てきたものだ。

今の総理大臣は峯岡ユウゾウ氏だ。支持率はそんなに高くないが、低くもない。無難な感じの男である。


「焚き付けるってどういうことだ?」


「それが〜、支倉氏に圧力をかけさせようとしてるっぽくて〜」


「なるほど、支倉さん経由で俺をどうこうしたいってことか」


「支倉氏の呼び出しなら佐藤さんは応じるって思われてるっすよ〜」


まぁ、事実である。


「佐藤さんなら総理大臣相手でもなんとかなるとは思うっすけど〜一応事前に対応考えておいた方がいいっすよ〜」


確かに、その通りだ。力づくでどうこうされる心配はないとは言え、こちらがどういう態度で臨むのかによって、今後の政府との関係が左右されるだろう。


というか…政府との関係ってなんだ。いつの間にかまた話が大きくなっている。


「わかった。情報助かった」


「役に立てて嬉しいっすよ〜。また追加情報あったら連絡するっすよ〜」


———


翌日。支倉からそろそろ連絡が来るかと思っていたら、泉田から、関根・椿のチームが中位ダンジョンを攻略したとの連絡が入った。


石碑の内容は、


《星に ——East》

→【中位 東の入り口ダンジョン】、ポーランド


である。


「これで16個だな」


あと、8個だ。

そういえば、これまで石碑ダンジョンをクリアした者たちとスキルスクロールの受け渡しについて調整しなければならないが、しばらくはゴタゴタする可能性がある。


「カナタに頼むか」


副大臣の方はシンジが対応し、スキルスクロールの対応はカナタに任せることにする。

そして翌日。支倉からの連絡があった。

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