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第43話 ファミレス

二人はダンジョンを出るとすぐに日本に戻り、いつものファミレスに直行した。

もちろん装備は外してある。疲れていることは疲れているが、レインボードラゴンとの戦闘時間は大して長くなかったので、すぐに休まなくても平気なくらいは体力が残っている。

ちなみに、汗や塵でドロドロなのでは?という点については、体を綺麗にする無魔法の『浄化』で解決済みである。


メールを確認すると、泉田から何通もメールが入っていた。留守電も残っている。

内容を確認すると、中位ダンジョンのバーストがあるからなるはやで来て欲しいというもの。これは四日前。四日前なら、無事に勝てていればすでに終わっているだろう。案の定、その後のメールではバーストが収束した旨が書かれていた。


「今の泉田さんなら中位ダンジョンバーストくらいならなんとかなるだろ」


とも思ったが、どうやらアランベルトの助力があったようだ。


それから、下位の石碑ダンジョンの攻略報告。石碑ダンジョンの攻略については泉田が窓口をやってくれているのだ。


石碑の内容はこうだ。


《自らを ——Revival》

→【下位 復活の入り口ダンジョン】、オーストラリア


《困ったら ——Cherry Blossom》

→【下位 桜の入り口ダンジョン】、トルコ


《影がある ——Heart》

→【下位 心の入り口ダンジョン】、スイス


これで韓国とアメリカのものも含めると、14個判明したわけだ。残り10個だ。本当に24個で全てであれば、だが。


「ちょっと変わり種があるな」


「うん。『困ったら』って何よ?」


「それに桜。トルコに桜ってあるのか?まぁダンジョン名は深く考えても仕方ないかもしれないけどな」


「でも、韓国のと組み合わせると、『困ったら呼びなさい』になるよね?」


「ああ。誰を呼べばいいのかよくわからないが、その並び順は十分あり得るな」


中位ダンジョン攻略組については、まだ終わっていないようだ。泉田の『冥界の果て』は、他の中位ダンジョン攻略組が戻ってきてから出発するらしい。確かに、高ランカーが皆不在の間に今回のようにダンジョンバーストが起こったら困るだろう。賢明な判断である。


それから、アランベルトの来日理由だが、二人に会いに来ているらしい。そういえば、上位ダンジョンの一つを攻略するよう依頼した時、先払いでスキルスクロールを渡す約束をしていたのだった。

早速アランベルトに連絡して日時調整する。

その時に、カナダの情報を聞き出す。


《僕を ——Yesterday》

→【昨日の入り口ダンジョン】、カナダ


「昨日の入り口ってなんだよ?なんか無理矢理感あるな…」


「それより『僕を』だって。『困ったら僕を呼びなさい』じゃない?」


「僕って誰だよ…」


「それはわからないけど」


「とりあえず、攻略した人たちにスキルスクロールを渡さないとな」


二人は泉田に戻ってきた旨と、攻略組にスキルスクロールを渡したい旨を連絡する。

すぐに電話がかかってくる。認識阻害をかけて電話に出る。


「もしもし」


「無事か!」


「ああ。無事に韓国の神話ダンジョンを攻略してきた」


といってもラスボスは倒していないが。いや、レインボードラゴンはラスボスではないか?


「マジかよ…この短期間で?」


「結構かかったと思うけどな」


一週間以上かかっている。


「いやいや、短けぇよ。これで石碑はいくつだ?」


「カナダもいれると15だな」


「俺たちも、千超えのチームがどっちか戻ってきたら行く予定だ。…そういえば、俺も千超えたぜ」


ちょっと嬉しそうな泉田である。


「お!良かったな。『指揮』使うとすぐだろ?」


「ああ。この間のダンジョンバーストで百人くらいに指揮かけたらあっという間だったな」


これが『指揮官』ジョブの怖いところである。指揮をかけた対象の経験値が一部手に入るのだ。しかも、対象が得る経験値が減ったりはしない。誰も損しないのだ。


「その調子でがんがん頑張ってくれ」


「ああ、そのつもりだ。あとな、支倉さんからも連絡行くかもしれねぇが、副大臣はまだ諦めてなさそうだ」


「ああいう奴はそんな簡単に諦めないよな」


苦笑するシンジ。先日の『情報屋』如月からは正体がバレる心配はなくなったとはいえ、他にも調べようはあるかもしれない。警戒するに越したことはないだろう。


「あ、いいこと思いついた」


逆にあの情報屋に副大臣のことを探らせればいいのでは?


「なんだ?」


「いや、こっちの話だ。引き続き石碑の件を頼む」


「わかった。他の上位以上のダンジョンも行くんだよな?その時はまた連絡してくれ」


「ああ。上位は一つアランベルトに任せたけど、残りは行くつもりだ」


「気をつけてくれよ」


「もちろん」


そこで電話を切り、カナタに副大臣の件と、情報屋に依頼したい旨を伝える。


「いいんじゃない?私はまだ会わない方が良さそうだから、シンジに任せるけど」


「ああ。といっても俺のことがバレてたら、カナタのこともバレてると思うけどな」


ちょっと調べれば、シンジが五年間行方不明だったことはわかるだろう。カナタが一緒だったことも。そこに何らかの因果関係を見出されても不思議ではない。


「それもそうだけど。一応ね」


———


「佐藤さんたち無事だったんですね」


泉田が電話を切ると、近くのソファに座っていた風祭アラタが声をかけてきた。

二人がいるのは『冥界の果て』のクランハウスのリビングのようなところで、ソファが六つほど並べてある。風祭は『冥界の果て』のメンバーで、最古参の一人である。


「ああ。神話級ダンジョンをもうクリアしたらしい」


「それはやばいっすね」


「どう考えても同じ人間とは思えねぇ」


「人間じゃなかったりして」


風祭が冗談めかして言う。


「マジで宇宙人だったとかでも信じられそうだから怖ぇよ。あ、でも意外と庶民派なんだよな」


「庶民派?」


「今もファミレスにいたっぽいし。外で会うとファミレスだし」


電話越しにファミレスのアナウンスが聞こえたのだ。


「一位さんがファミレスってちょっと笑えますね」


「…そういえば、あのファミレスは神奈川あたりにしかねぇな」


ファミレスといっても、大体縄張りがある。全国展開しているものもあるが、エリア限定のものもある。


「佐藤さんは神奈川の人ってことですかね?」


「まぁ、最初に現れたのが横浜支部だったからな…関東だろうとは言われていたが、マジでそのあたりかもしれねぇ」


泉田や支倉と会う時は、あえて自宅——普通の家に住んでるのかは不明だが——から遠いところを指定している可能性はある。だが今はそういうわけでもないだろう。


神奈川といっても広いし、まだ個人を特定するのは難しい。だが、そこまで絞れると、なんとなく人外めいていた一位と二位がリアルな感じになってくる。


「この情報、やばくないですか…?」


「これ単体だけでどうこうなるものではないと思うが…口外しない方がいいな」


二人は頷き合う。もちろん、その会話に聞き耳を立てている者がいるとは想像していなかった。

【現段階で判明している石碑】


《太陽の光が ——Quiz》

→【中位 謎の入り口ダンジョン】、アメリカ


《月から ——Love》

→【下位 愛の入り口ダンジョン】、中国


《忍び寄る ——Zero》

→【最下位 零の入り口ダンジョン】、ベルギー


《闇からの影 ——Knight》

→【最下位 騎士の入り口ダンジョン】、スペイン


《星がある ——Garden》

→【最下位 庭の入り口ダンジョン】、ドイツ


《二つの ——Blizzard》

→【下位 吹雪の入り口ダンジョン】、台湾


《どうしても ——Fairy》

→【最下位 妖精の入り口ダンジョン】、イタリア


《光を侵す ——Oasis》

→【最下位 オアシスの入り口ダンジョン】、フランス


《二つの ——Darkness》

→【最上位 闇の入り口ダンジョン】、スウェーデン


《影は ——Nightmare》

→【最下位 悪夢の入り口ダンジョン】、日本


《僕を ——Yesterday》

→【昨日の入り口ダンジョン】、カナダ


《自らを ——Revival》

→【下位 復活の入り口ダンジョン】、オーストラリア


《困ったら ——Cherry Blossom》

→【下位 桜の入り口ダンジョン】、トルコ


《影がある ——Heart》

→【下位 心の入り口ダンジョン】、スイス


《呼びなさい ——Wish》

→【神話 希望の入り口ダンジョン】、韓国

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