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第41話 再び

二人が神話級ダンジョンの攻略に勤しんでいる頃。

日本では再び中位ダンジョンのバーストが予知され大騒ぎになっていた。


「ダメだ、一位と二位は連絡がとれない」


今回は名古屋だ。ダンジョン探索協会の名古屋支部、支部長の黒田ナコに泉田が告げた。


「困ったわね…関根さんたちも連絡がつかないし」


レベル千超えの五人は一位と二位からのダンジョン攻略依頼のため、全員海外に行っている。『冥界の果て』だけ念のため残ったのだが、大正解であった。


「最悪俺たちでなんとかするしかねぇな…」


「黒田さん!」


そこに、一人の職員が駆け込んできた。


「何事なの?」


「ローランド・アランベルト氏が来日されてるそうで…!」


「なんですって!!すぐに連絡を!」


「はい!」


「問題は報酬だな…」


泉田が呟く。世界ランキング三位への依頼である。背に腹は代えられないとは言え、どんな要求をされるやら…。


アランベルトはすぐに連絡がつき、数時間ののちに通訳を伴って現れた。

ダンジョンバーストの時間は刻一刻と近づいている。


「来てやったぜ!」


「ありがたい。早速報酬の話なんだが」


通訳を介しての会話だ。


「いや、いらねぇ」


「…どういう意味だ?」


「そのままだぜ。報酬はいらねぇ。佐藤と山田には世話になってるからな。二人が不在の分、働くことに異論はねぇ」


「それは…正直助かる」


こんな形で一位と二位の存在感を感じるとは。ありがたい限りである。


「あと一時間ほどでバーストします!」


職員が告げる。


「俺たちでつゆ払いする。アランベルト氏にはボスをお願いしたい」


「ローランドと呼んでくれ!オーケーだぜ!」


———


ダンジョンバーストが予知されている【中位 妖精の理ダンジョン】の前には、前回と同じく百人ほどの探索者が集まっていた。

一同はすでにパーティー分けされていた。ちなみに、前回と同じくギャル風の女性が今度はアランベルトと組みたいと騒いで一悶着あったが、些事である。


「これから俺のスキル『指揮』を全員にかける。攻撃力、防御力、スピードに少しだがバフがかかる。あと、俺の指示がある程度離れていても聞こえるようになる。特に副作用はないから安心してくれ」


「え?泉田さんそんなスキル持ってたの?」


「すげぇスキルじゃん。いつの間に…」


軽くざわめきが広がる。それをスルーして泉田がスキルを発動した。


「『指揮』!」


「え?この人数全員に…?」


さらに動揺が広がる。


「ひゅ〜」


アランベルトが口笛を吹いた。


「いいスキル持ってんな!」


一位様々である。

これで準備は完了だ。あとはダンジョンバーストを待つだけだ。

泉田の横には鑑定士の暁月が控えている。鑑定士は数が多くないため、こういう時は出張になるのだ。


程なくして、ダンジョンゲートが歪み始めた。ダンジョンバーストだ。

まず出てきたのは小さな黒い人影の大軍だった。


「ミニピクシー!レベル300!」


暁月が叫ぶ。文字通り黒い妖精で、羽が生えている。小さいが、数が厄介だ。


『まずは遠距離攻撃!』


『指揮』を通して泉田が指示を出すと、遠距離攻撃をできる者が次々に魔法や矢を放つ。近接戦に突入すると味方を巻き込むので斉射は簡単にはできない。今のうちに遠距離攻撃で数を減らす狙いだ。


ミニピクシーはレベルが低いからか、遠距離攻撃で大半が粒子となって消えた。残った何体かが魔法を放ってくる。が、大した威力ではない。探索者全員が危なげなく避けたり迎撃したりしている。


ミニピクシーがおおかた片付くと、次はもう少し大きいサイズの——子どもくらいだろうか——ツノと羽が生えた黒い人型のモンスターが現れた。口が耳のあたりまで裂けており、目がやたら大きい。不気味な顔である。


「きゅるるる!」


よくわからない鳴き声をあげている。


「スモールピクシー、レベル500!」


レベルの上がり方が前回と同じパターンである。


『パーティーごとに各個撃破!』


数は先ほどより少ない。今度はパーティーごとに分かれて各個撃破にあたる。

やや苦戦しているパーティーもあったが、なんとかあらかた片付ける。


次に現れたのは成人サイズのこれまた黒い人型モンスターだ。顔は先ほどのスモールピクシーと似たような感じだが、もっと醜悪な表情である。人型でも倒すことに罪悪感を抱かせない見た目だ…。もっとも、全身黒い時点で罪悪感も何もないかもしれないが。


「ノーマルピクシー、レベル700!」


『レベル500以下は下がれ!』


泉田の指示でいくつかのパーティーが離脱する。前回はシンジのバフがあったのでレベル500以下も粘れたが、今回は難しい。

ノーマルピクシーは口を開くと、衝撃波のようなものを飛ばした。盾を持った何人かが受け止めるが、吹き飛ばされる。かなりの威力だ。

しかし衝撃波を飛ばしている隙をついて、何人かが斬りつけたり魔法を放ったりしている。


しばらくの交戦を経て、十数体いたノーマルピクシーは半数ほどに数を減らしたが、こちらにも怪我人がかなり出ているようだ。


『冥界の果て以外下がれ!ポーションで回復!』


これまでやや下がったところで見ていた冥界の果てのメンバーが前に出るのと同時に、バラバラと戦っていたパーティーが離脱する。


冥界の果ては20人ほどのクランだが、今来ているのは10名ほど。魔法使いや剣士、盾使いなどが比較的バランス良く揃っている。


泉田の意図を心得ているのか、全員がノーマルピクシーから距離をとるように攻撃を展開する。

ノーマルピクシーたちと『冥界の果て』のメンバーがいい感じに離れたタイミングを見計らって泉田が魔法を放つ。


「『火よ、ファイアウェーブ』!」


放射線状に放たれた高音の炎がノーマルピクシーたちを焼き尽くす。まさに一掃である。


「ひゅ〜」


アランベルトがまた口笛を吹いた。


次にゲートから出てきたのは——先ほどと見た目はあまり変わらない、成人サイズの真っ黒いモンスターだった。一体だけである。


「ボスです!ダークピクシーレベル1500!」


「ローランド、頼んだ!」


「なんだ一体だけかよ!前回は三体いたって聞いたのによ!」


アランベルトは余裕である…。

冥界の果てのメンバーが下がり、アランベルトが前に出ると、ダークピクシーもアランベルトを優先すべき敵として認識したらしく、アランベルトの方へ手を伸ばすと、そこから炎が放たれた。


「『アクアウェイブ』!」


水の魔法で迎撃するアランベルト。


「『アイスブラスト』!」


アランベルトが魔法を放つと、今度はダークピクシーが魔法を使って迎撃——しようとするが、威力が違うのかアランベルトの魔法がダークピクシーの魔法を喰ってそのままダークピクシーに当たる。


「ぎゃああぁあ!」


ダークピクシーはあっさりと粒子になって消えた。


「強ぇ…」


誰かが呟く。ゲートはそれ以上モンスターを吐き出すことなく、いつもの形状に戻った。

無事にダンジョンバーストが終わったようである。


「よし、今回も死者はいないな、上出来だ!」


泉田の声に、ワッと歓声があがった。

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