第40話 魔族
いつの間にか10万字超えてました。わーい(≧▽≦)
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五十一階層からは、厄介な環境が続いた。吹雪とか、マグマとか、真空とか、そういうのだ。大体が結界でなんとかなるものの、結界を維持しながらその環境に適応しているモンスターと戦うので面倒ではある。
しかし面倒なだけで、特に苦戦はしない。疲れが溜まってきたところで一泊、二泊、三泊しながら進む。
「やっと百階層か…」
四日目に百階層まで辿り着く。五十階層までに比べてかなり時間がかかった。
「さて今度はどんなのが出てくるやら」
階段を降りると、意外にもそこは普通の土壁のダンジョン部屋だった。
「侵入者か。存外早く来たな」
そんな言葉に迎えられる。
「魔族か…」
言葉を操る魔物を魔族と呼ぶ。
見ると、完全な人型だ。人型は、魔王を筆頭に強い奴が多い。
鎧を纏った大男の魔族だ。カナタと同じような大剣を携えている。
鑑定する。
【ステータス】
種族: 魔族
名前/性別/年齢: フレーラス(男、3)
レベル: 100,000
種族が『魔族』になっている奴は魔王と同系統の『正統魔族』と呼ばれる存在で、得てして強い。さらに、名前がついている点も重要だ。名前が付くと自我が強化されるからとか、諸説あるが、いずれにしても名前がつくと強くなる傾向にある。
「カナタ、名付きの正統魔族だ。レベル十万」
名前のついている正統魔族は、魔王の次くらいに厄介である。
「鑑定か」
「まさか、魔王の副官?」
「残念だが、違うな」
魔王の副官ではない?レベル十万で?
考えている間に、予備動作なしで魔族——フレーラスが転移してきた。シンジの後ろに。
剣を振りかぶられ咄嗟に杖で防ぐ。だが、シンジの杖術はしょせん上位ランクである。簡単に吹き飛ばされる。絶界を張っても良かったか…。
カナタが衝撃波を放つが、フレーラスは転移で簡単に避ける。転移はかなり厄介である。攻撃の要であるカナタは転移を使えないのだ。
(空間固定)
やむを得ず、転移を使えなくする空間結界を張る。しかしこの魔法は使っている間中かなりの神経とマナを使う。『並列思考』で分けた思考の片方に『空間固定』を任せる。
しかしこれではカナタの防御に意識を避けない。
「ちっ、空間固定か!」
(ちっ、はこっちのセリフだ!)
フレーラスはシンジを狙ってくるが、間にカナタが割り込み切り結ぶ。シンジが後衛であることを正確に見抜かれている。もっとも隠していないが。
二人の剣の腕はほぼ互角のようだ。
(あっちも神話級剣術か…)
武器関連は上位スキルしかないシンジが近づくのは危険である。
(フルバフ、結界)
とりあえずカナタに攻撃力、防御力、スピードの全てを上げるバフと、防御結界を張る。絶界ほどではないが、ある程度の攻撃は防いでくれるものだ。
(いざとなったら…)
最悪、奥の手を使う必要があるかもしれない。シンジは覚悟を決めた。
二人は順調に切り結んでいる。さすがにシンジの方を攻撃する余裕はないようで、放置されている。そこでシンジはちょこちょこ援護射撃をしている。
さすがにカナタに間違って当てるような間抜けなことはしない。
「鬱陶しい!」
援護射撃にイライラしたらしく、シンジの方にも衝撃波を飛ばしてきた。しかしそれは悪手だ。どうしても隙ができる。そこにすかさず攻撃するカナタ。カナタの剣が浅くフレーラスの鎧を斬った。
「ちっ。ブレイク!」
パリンっ。
フレーラスが唱えると、音を立てて空間固定が壊れた。
「!?」
カナタは一瞬何が起こったのかわからなかったらしく、反応が遅れる。瞬間、転移したフレーラスがカナタを斬りつけた。カナタはほぼ直感でそちらに剣を滑り込ませる。
体勢が悪いが、なんとか受け止める。
(ライトレーザー)
そこにすかさずシンジが牽制の一撃を放つが、再度転移で避けられる。
(空間固定がダメなら、いつも通りだ!)
カナタに絶界を張る方針に切り替える。
そこからは膠着状態が続いた。が、徐々にフレーラスの動きが悪くなる。
二時間ほど経った時、フレーラスが決定的な隙を見せた。そこにカナタが斬り込み、腕を斬り飛ばす。
「がっ…!」
(空間歪曲!)
動きが止まった瞬間を狙ってシンジが空間歪曲を放つと、
「ぐわぁ!」
フレーラスは苦悶の声をあげた。カナタがトドメに首を斬り飛ばす。
フレーラスは粒子となって消えた。ちなみに、魔族はテイムすることができない。もっともそんな余力はなかったが。
「結構苦戦したな」
シンジが感想を漏らすと、
「魔王の副官でさえないやつにこれなんて…平和ボケしてるのかも」
カナタも神妙に呟く。
「まぁ、レベルは高かったからな…」
「でも勝ったから良かったよ」
二人は気を取り直すと、フレーラスが落としたアイテムに目を向けた。
「【全装備の腕輪】だ!!苦戦した甲斐があるな!!」
シンジが喜びの声をあげる。
それは二人が愛用している【全装備の腕輪】だった。勇者パーティーでも二人しか持っていなかったレアアイテムである。
「あれだけ強くてレアアイテムじゃなかったらやってられないよね」
「ほんとだな」
とりあえず、これで百階層目も攻略である。




