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第39話 神話級ダンジョン

副大臣のことなどすっかり頭の隅に追いやって、シンジとカナタは韓国の神話級ダンジョン、【希望の入り口ダンジョン】に来ていた。

なぜあえて最難関の神話ダンジョンかというと、単に大変なことは先に終わらせようという話になったからだ。


久しぶりの本格的な神話級ダンジョンの攻略である。二人は完全装備だ。

シンジはローブに杖、いつもの【全装備の腕輪】に加えて空を飛べる【風のブーツ】を履いている。

カナタは軽い鎧と大剣、【全装備の腕輪】と重力を操る【重力のブーツ】、さらに頭を守る【防御のティアラ】を付けている。


神話ダンジョンの攻略適正レベルは十万。二人でも真剣にやらないと攻略できない、どころか、十分に身の危険がある。


「っていうか、二人で神話ダンジョンとか初めてだよな…」


「うん。向こうではみんながいたしね…」


異世界では勇者パーティーとして六人で活動していた。


「まぁなんとかなるだろ。魔王も倒したしな」


魔王を倒したことでかなりレベルが上がったのだ。


二人は気合いをいれてダンジョンに入った。ちなみに、イギリスのダンジョンとは違って、かなり厳重に警備されていた。神話級だからなのか、韓国だからなのかは不明だが。


中は、草原だった。静かだ。

【神話 希望の入り口ダンジョン】という内容がポップアップする。


「敵は?」


「いないな…罠フロアかもな」


シンジが『探知』スキルで周囲を探る。


「魔法陣が結構あるな」


『探知』スキルは、ランクごとに同じ名前のスキルがあるが、ランクが高くないと魔法陣は探知できない。生半可なレベルでこのダンジョンに入ればすぐ魔法陣トラップの犠牲になることだろう。


「なら避ければいいね。九階層までは同じかな?」


ダンジョンは十階層ごとにパターンが変わることが多い。もちろんそうでないダンジョンもあるが。ただし、十階層めはボスだ。

結局、九階層までは同じく魔法陣フロアだった。

そしてボスは風属性のエアードラゴン、レベル五万。もちろん瞬殺した。


———


「なんか五十階層まで楽勝だったね」


二人はあっという間に五十階層にたどり着いていた。

階層が百以上ある神話ダンジョンや最上位ダンジョンでは、五十階層めが一つの節目として強いボスが出ることが多い。


果たして——。


二人が五十階層に足を踏み入れると、吹雪が吹き荒れていた。

その奥には水色のドラゴンがいた。シンジが即座に鑑定する。その間、カナタが二人に冷気を遮断する水魔法系列の結界を張る。


【ステータス】

種族: ブリザードドラゴン(ボス)

名前/性別/年齢: ー(メス、0)

レベル: 80,000


「ブリザードドラゴン、レベル八万だ!カナタ、本気で行くぞ!」


「了解!」


瞬間、シンジは一歩引き、『並列思考』を使う。意識を二つにわける神話級無魔法だ。片方の意識をカナタの方に向け、もう片方を自分の守りに向ける。

一方カナタは大剣を抜いて飛び出す。

これが二人の本気モードの布陣——というほどのものでもないが——である。


カナタがウィンドキャリーで飛びながらドラゴンの羽の付け根を狙うが、氷の結界で阻まれる。


「アタックバフ!」


シンジのバフを乗せた攻撃で再度斬りかかる。

今度は身の危険を感じたらしくドラゴンは羽ばたいて後退するとすぐにブレスを吐いた。レベル八万のブレスである。さすがにカナタの装備でも完全には防げない。

しかしカナタは気にせず飛び込む。


(絶界!)


カナタにブレスが当たる瞬間、シンジが神話級空間魔法『絶界』を発動する。この結界は動かせないのが最大の弱点だが、どんな攻撃も基本的には遮断する。

これがこの布陣の肝だ。

カナタは防御を気にせず攻撃する。防御は全てシンジが担当する。ただし、一歩間違うと大惨事である。極限まで神経を使う布陣だ。

だからこそ『並列思考』が必要なのだ。シンジの意識を百パーセントカナタに向けないとこの布陣は成立しない。しかしそれではシンジの防御が疎かになる。それでは困るので、意識を二つに分けるのだ。


ブレスを弾きながら、衝撃波を飛ばすカナタ。それはドラゴンの翼を切り裂いた。


「ぎゃおおお!」


ドラゴンは悲鳴を上げながらも尻尾でカナタを迎撃する。


(絶界!)


尻尾も防御すると、逆にカナタが尻尾を斬る。だが、浅い!


「ぎゃぁおおぅ!」


再度ドラゴンが吠えると、空に無数の魔法陣が浮かび上がる。

ドラゴンの氷魔法だ。

そこからマナの込もった氷が降り注ぐ。カナタはその場で制止した。そこにシンジが絶界を張る。もちろん、自分にも。


ガガガッ!


結界に降り注ぐが全て弾かれる。

しかしその間にドラゴンが肉薄している。


キィィィン!


シンジは絶界が歪んだのを感じ取った。ドラゴンが魔法に干渉しているのだ。基本的に攻撃は全て防ぐ絶界だが、魔法干渉にはさほど強くない。


「ちっ!」


シンジは一度絶界を解く。放っておくとマナが逆流してこちらがダメージを受けるからだ。

そこにドラゴンが突っ込む。


「っ」


シンジが吹き飛ばされる。しかしその瞬間を捉えてカナタが火魔法を放つ。火魔法がドラゴンを包むと、ドラゴンは叫び声を上げたが、すぐに氷魔法が火魔法を覆って鎮火される。

シンジは叩きつけられる前に体勢を立て直し受け身をとった。さほどダメージはない。

そのまま光魔法ライトレーザーを放つ。スピードの速い魔法だ。

しかし、ドラゴンを覆っているマナに弾かれる。


(さすがにレベル八万には通用しないか)


速い分、攻撃力はさほど高くないライトレーザーである。


(空間歪曲!)


ドラゴンを覆っているマナを突破するのは至難の業だ。カナタの攻撃なら通用しているが。

仕方ないのでドラゴン本体に内側から攻撃する空間魔法を使う。マナの消費量が半端ない魔法だが。


「ぎゃおおお!!」


ドラゴンは魔法で抵抗してくるが完全に相殺するまでにはいかず、その場でもがいている。

その隙を見逃すはずもなく、カナタが首を刎ねた。


「ふぅ」


「意外とキツかったな。テイムする余裕がなかった」


特に目立った外傷はないが、意外と手数は使わされている。


「でもこっちはほとんどダメージないし、上出来だと思うけど」


「そうだな。あと百階層か」


神話級ダンジョンはおおよそ百五十階層である。

二人が話している間にブリザードドラゴンが粒子となって消えた。

そこには虹色の葉が残されていた。


「【世界樹の葉】だ!」


神話級アイテムだ。葉っぱというから時間が経つと萎れてきそうなものだが、【世界樹の葉】にはそれがない。そして持っているだけで体力やマナが少しずつ回復する。もちろん二人も装備しているが、予備はあまりない。


「やっとこっちでまともなアイテムね」


これまでのアイテムはまともではなかったようだ…。

【世界樹の葉】を回収すると、二人は次の階層へと向かった。

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