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第31話 石碑

微修正しました。大筋に影響はありません。

スウェーデン→イギリスに変更しました。

「は?これだけ?」


《二つの ——Darkness》


二度見してもこれだけである。


「二つの?二つの闇?あ、ダークネスってこのダンジョンの名前のことかな?二つのって何?何が二つなの?」


意味不明である。これで何に備えるというのか。


「あーーーこれってあれか?他にも似たような石碑があるパターンだよな?繋がればわかるよ的な…」


「……」


二人は沈黙した。

予知夢を見て、レインボードラゴンまで出てきて石碑に注目させたのに現時点ではほぼ何の情報にもなっていない。


「あと気になるのは誰が伝言させたかだな。ドラゴンに伝言させられるような存在ってことだろ?」


「そもそも論だけど、予知夢ってなんなの?誰かが見せてるの?なにでもって重要って判断されてるの?」


「それはそもそも過ぎるな…」


「あ、でも……」


カナタは思いついたように顔を上げた。


「ダンジョンの制作者とは少なくとも関係あるよね?」


「それだ!確かにそうだ」


そもそもダンジョンのボス——それもラスボス——の部屋にボスがおらず、伝言者と石碑の存在しかないということ自体がおかしい。

それは、ダンジョンの制作者がおり、あえてそういう造りにしたということではないか?


「ってことは伝言者が制作者か?それとも別の何かか?」


「そもそもなんでドラゴンと石碑の両方が必要なの?どっちかで良くない?」


次々と疑問が思い浮かぶ。答えは浮かばないが。


「うーん、やっぱりこれだけだとわからないな。他に同じような石碑がないか探すしかないか…?」


「そうだね。そうしよう」


二人は帰還の魔法陣——ダンジョンのラスボスを倒すと出てくる魔法陣でダンジョンの入り口まで転移できるものだ——に乗った。もっともこのダンジョンの場合ラスボスがいなかったので最初から魔法陣があったのだが。


———


日本に戻った二人は早速石碑のあるダンジョンについて調べ始めた。

何も情報がない可能性も考えたが、結果的にそれは杞憂だった。


【最下位 悪夢の入り口ダンジョン】というダンジョンが、最後の部屋にはラスボスがおらず石碑が立っているだけだという。

肝心の石碑の内容はというと——。


《影は ——Nightmare》


「似たようなパターンね」


もはや定番となりつつあるファミレスでカナタが呟くと、シンジも頷いた。


「そうだな。英語の部分はダンジョン名と見て良さそうだな」


ナイトメアは言わずと知れた「悪夢」という意味の英単語である。

それにしても最下位ダンジョンのくせに大層な名前だ。


「そうすると大事なのは前半か?前回が《二つの》で今回が《影は》か」


「繋げたら二つの影?」


「これだけだと意味がわからないな。おそらくまだあるんだろうな…同じようなダンジョンが」


しかし日本語で検索した限り、日本には他の石碑ダンジョンはなさそうである。もっとも、今の一般探索者のレベルでは踏破できないランクのダンジョンが実はそうだったという可能性もあるが。


「片っ端からダンジョン攻略するよりは他言語で検索した方が早いだろうな。まさかこのための言語理解の腕輪か?」


シンジは『言語理解』スキルを持っているが、カナタは持っていない。


「えー?用意良すぎでしょ。ますますダンジョンの制作者説が濃厚ね」


カナタはシンジから言語理解の腕輪を受け取ると手首につけた。


「じゃあ俺はアジア圏からやるからカナタは欧米をよろしく」


「オーケー」


そこから二人は小一時間ほど黙々とスマホで検索を続けた。


結果、以下の石碑情報が判明した。


《月から ——Love》

→【下位 愛の入り口ダンジョン】、中国


《忍び寄る ——Zero》

→【最下位 零の入り口ダンジョン】、ベルギー


《闇からの影 ——Knight》

→【最下位 騎士の入り口ダンジョン】、スペイン


《星がある ——Garden》

→【最下位 庭の入り口ダンジョン】、ドイツ


《二つの ——Blizzard》

→【下位 吹雪の入り口ダンジョン】、台湾


《どうしても ——Fairy》

→【最下位 妖精の入り口ダンジョン】、イタリア


《光を侵す ——Oasis》

→【最下位 オアシスの入り口ダンジョン】、フランス


そして、先に判明していた二つ。


《二つの ——Darkness》

→【最上位 闇の入り口ダンジョン】、イギリス


《影は ——Nightmare》

→【最下位 悪夢の入り口ダンジョン】、日本


「意外とあるわね…」


すでに九個である。見事に国もバラバラ。


「でもなんとなく意味が通りそうなところもあるよな。《月から忍び寄る闇からの影》とか。いかにもって感じだな」


「その繋ぎが正しいかはわからないけど、怪しげな影が迫ってくるから備えろっていうならわかるよね」


「忍び寄る影だとして、それは何だ?魔王か?」


「可能性はあるわね」


「《二つの》が二回あるな」


「二つの月?二つの星?二つの光?」


「どれでもいけるな…。まぁ二つの月だとしたらそれはなんだって話になるけどな」


異世界でも月は一つだった。


「でも下位以下ばっかりね…中位以上は踏破されてないんだろうね」


「そうだよなぁ…この間の感じからすると、ラスボス部屋以外は普通のダンジョンだったからな…踏破できてないんだろうな…」


「あとさ、レインボードラゴンを目撃したって話もなかったけど、シンジはどうだった?」


「そういえば俺も見てないな。レインボードラゴンはあそこだけだったのか?あるいは上位ダンジョンだけとか」


「まだ謎だらけね…」


そもそも、あとどれくらい石碑のダンジョンがあるのかもわからないのだ。

しかし片っ端から石碑ダンジョンかもわからないランダムなダンジョンを踏破していくのはさすがに効率が悪すぎる。

となると…。


「予言スキルか。あと情報収集」


「前回と同じだね。意外と活躍してるね、予言スキル」


「まさか向こうにいる時より使うことなるとは…向こうではあいつがいたからな」


異世界では、神話級ではなかったが、予言スキルを持った仲間がいたのだ。基本的に予言が必要な時は彼の担当だった。


「情報収集はどうする?」


「とりあえず泉田さんかな。探索者だし。ヨツバたちはこの件はあんまり知らなさそう」


「そうだな。じゃあそっちは頼む…と言いたいところだが認識阻害が必要だよな」


「悪いけど【妖精の真珠】に認識阻害お願いできる?」


「了解」


【妖精の真珠】は、魔法を一つストックできるアイテムだ。「妖精の」とつくアイテムは、かなりレアで役に立つアイテムが多い。もっとも、二人にとってはそこまでレアでもないのだが。


「五つくらいでいいか?」


「それくらいあれば」


魔法を込めて、【妖精の真珠】を渡す。

特に仰々しい儀式があるわけでもないので、ファミレスでも可能なのだ。


「じゃあ、また三日後くらいでいいか?」


「オーケー」

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