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第26話 ポーション革命

あれから一週間ほど経ったある日、ダンジョン探索協会による探索者向けのポーション販売が発表された。そこからは日本中が大騒ぎ、海外にも動揺が広がった。

発表を行なったのはダンジョン探索協会の広報部長の日下部マサヤという男で、シンジとカナタも事前に一度打ち合わせをしていた。

検討した結果、ポーションの出所は公式的には明かさないことにした。ちょっと考えれば出所が一位と二位だろうと予想はつくかもしれないが。


『先日ダンジョン探索協会により公表されたポーション販売のニュースが話題になっています。巷ではポーション革命とも呼ばれていますね』


テレビでも特番が組まれている…。


『ええ、探索者である我々にとっても急な話で、とても驚いています。ありがたい話ですがね』


ゲストとして、風淵タイガが出演している。


『海外でもものすごい反響があるようです』


そこから、アメリカのダンジョン探索協会でのインタビューの様子が映される。


『いや、びっくりだね。日本にそんなにポーションがあるなんてね』


『日本政府はアメリカにもポーションを流すべきだね。アメリカの方が高ランカーが多いわけだし。ダンジョン攻略の最先端はアメリカなんだから』


『日本へのフライトを予約しかけたよ。まぁ日本の探索者しか買えないとわかってやめたけどね。日本の探索者が羨ましいよ』


インタビューが終わると、


『さて、今回のポーション販売の概要を見ていきましょう』


そこから、ポーション販売の解説が始まる。基本的にポーションは一度に一つしか買えず、初回購入時以外は使用済みポーション瓶と交換で販売されること、転売すると探索者ライセンスが停止されることなど、先日取り決めたことが説明されていく。


そんなテレビの特番を聞き流しながら、シンジはひたすら作業をしていた。

ポーションへの『エリア指定』付与はとっくに終わっている。今は、探索者ライセンスとの紐付けをどうするか検討中だ。

ポーションとライセンスカードを前に唸っていると、電話が鳴った。


知らない番号だ。


(誰だよ、この番号教えたのは)


迷わず無視する。しかし電話は鳴り続ける…。


(着拒だ着拒)


が、着拒を設定しようとスマホを触った瞬間、通話ボタンをタップしてしまったようだ。


「Hey!Are you there?」


英語だ。声に聞き覚えがある。アランベルトだ。誰かがアランベルトに電話番号を教えたようだ…。

英語がわかるカナタはいない。

シンジはため息を着くと、諦めて電話に出た。


「なんだ?」


無魔法で『言語理解』というのがある。相手の言葉を理解し、自分の言葉を相手に理解できるように変換する神話級の魔法だ。それを使って電話に出る。もちろん『認識阻害』も忘れない。


「お!いたか!お前は一位の方か!英語話せるんだな」


「英語は話せない。これは魔法だ」


「魔法!すげーな!!」


「それで?何の用だ?」


「ポーションを売ってくれ!」


どストレートな要求である。


「なんで俺に言うんだよ。日本のダンジョン探索協会に言ってくれ」


「いやいやどう考えても出所はお前らだろうが!!」


「知らん。じゃあ切るぞ」


「待て待て!俺は強くなりたいんだよ!そのためにはポーションが必要なんだ」


「……」


その言葉を聞いてちょっと考え込むシンジ。

アランベルトは、現在シンジとカナタを除けば世界で一番強い。そのアランベルトが強くなるのは、地球にとっては必要なことではないか?


「…売ってもいいが条件がある」


「お!そう来なくちゃな!なんだ?」


「まず、この番号を他のやつに教えるな。それから俺から買ったことを他の人に言うな。それが約束できないなら売れない」


「全然いいぜ!!」


「契約魔法を使わせてもらうぞ?口約束だからと破られても困るからな」


「そんな魔法もあるのか!マジですげーな!」


電話越しでもアランベルトが興奮してるのが伝わってくる。


「ポーションはどれが欲しいんだ?値切るのはなしだぞ。日本と同じ価格で売るからな」


「もちろんだ!むしろ日本と同じ価格で売ってくれるのはありがてーな!買えるのは一個ってことか?俺はそんなにしょっちゅう日本に来れねーから、もう少し売ってくれるとありがたいんだが」


むしろ、まだ日本にいたことが驚きである。


「五個くらいなら売るぞ」


「なら、上位三つ、中位二つ頼む!」


「わかった。じゃあ契約魔法を使うぞ」


「電話越しでもできるのか」


ものにもよるが、簡易契約魔法なら遠距離でも可能だ。

そしてこの世界にはまだ契約魔法の知識はなさそうだ。簡易であっても破られることはないだろう。


「じゃあ『契約魔法の条件』だ。俺はお前に上位ポーション三つと中位ポーション二つを売る。お前はこの電話番号と、ポーションを俺が売ったことを他の人間に伝えない。OKなら、『契約魔法を承諾する』と言ってくれ」


「契約魔法を承諾する」


「これでOKだ」


かなりのゆるゆる条件である。シンジは「いつまでに」「いくらで」売るといったことを一切盛り込んでいない。破ろうと思えばいくらでも破れる。

また、簡易契約魔法では、破ったら死ぬといったペナルティはない。ただ、故意に破ることができないよう意識に制限がかかる。しかしこれも破るのは不可能ではないのだ。


しかしおそらくだが、アランベルトは破るつもりはないだろう。シンジにもない。だから特に問題はないだろう。

その後、取引場所などを調整してシンジは電話を切った。

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