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第24話 ポーション作線

なんとか間に合いました!

シンジとカナタは再び先日のファミレスにいた。地元から少し離れたところだ。


「予言、どうだった?」


「魔王の城の一年以内のバーストはなさそうだった」


「それは朗報ね!」


カナタが大きく頷く。もし一年以内に魔王の城がバーストするならとれる対策はかなり限られてくる。それがないとわかったのは大きい。


「ただ、いずれはバーストするはずだからな。どうするかは考えないとなんだよな。カナタは何かわかったか?」


「いや、どっちかというと何もわかってないってことがわかった感じかな。いろいろ調べて、あとヨツバとアヤセにも話を聞いてみたんだけど。ただ、低いランクからバーストしてるってのは本当みたいね。そういう意味では、最上位ランクがバーストするくらいまでは魔王の城は大丈夫ってことになるとは思うんだけど」


今は中位ダンジョンがバーストし始めているところだ。まだ猶予はある。…はずだ。


「時間的にはまだ余裕があるとして…対策をどうするかだよな。考えたんだが、やっぱり地球の人たちに強くなってもらうのは必須だと思うんだよな」


「そうよね。バーストするのは魔王の城だけじゃないんだし。今の人類は弱すぎるよね」


「で、俺たちと地球の人たちの違いを考えてみたんだが。ジョブはいったん置いておくとして、まず俺たちは最初からパワーレベリングしてもらっただろ?」


二人は、最初は強い人たちに守ってもらいながら安全にサクサクレベルアップしたのだ。


「それに、あっちにはダンジョン攻略のノウハウがあったし、ポーション類も豊富だった」


「確かに。そう思うと、地球の人たちとはスタートダッシュが違って当然かぁ」


「そこでだ。俺たちがみんなを直接鍛えるのは現実的じゃないし、正直面倒でもある。だから手っ取り早くポーションの供給量を増やすのはどうかなと」


「ポーションがあればもっと積極的にダンジョン攻略できるしね。いいと思う。でも、ポーションは掃いて捨てるほどあるとは言っても、限界があるよ。どんどん供給するならシンジが調合するしかないけど」


ポーションの制作には『薬学』系統のスキルが必要だ。それを持ってるのはシンジだけだ。


「それは仕方ない。ついでに値崩れが起こるのも必至というか、あえてこっちから起こしてくわけだから、ポーションを財源にはできなくなるな」


「お金はもう十分あるし、稼ごうと思えば稼げるからそれは全然いいけど」


「なら、まずはポーション供給作戦だな。問題はどうやって供給するかだな…」


前回のようにオークションで値をつりあげるような売り方は困る。

しかしダンジョン探索協会はボランティア団体ではない。目先の利益をみすみす逃すとも思えないが…。


「泉田さんに相談してみる?宮間さんだとどうしても商売の話になりそうだし」


二人のツテといえば、それくらいだ。あと強いていうなら、ローランド・アランベルトと風淵タイガか。


「あの人なら信用できそうだし、そうするか」


———


「相談?」


ダンジョン省大臣の支倉ユウヤは、泉田からの報告に首を傾げた。


「そうなんです。一位殿から突然連絡があって、相談があると…」


「それは…相談するに値すると信頼されていることを喜ぶべきか?しかし一体どんな相談なんだ…」


「予想もつきませんね」


「そうだろうな」


一位の佐藤(仮)は、さほど付き合いが深いわけでもない泉田に「相談」するようなタイプには思えないが。


「とりあえず話を聞いてきます」


「そうしてくれ」


———


泉田が呼び出された都内のファミレスに着くと、目的の二人ーー二位も一緒のようだーーはすでにボックス席に座っていた。

ファミレスの中でもマスク姿である…。


しかし、ファミレスとは意外である。一位と二位が大金を所持しているのは知っている。もうちょっと違う場所で会うことを想定していたが。


「待たせたな」


「大丈夫だ」


泉田が座ると、カナタがすっとメニューを差し出した。

少し意外に思いつつも、メニューを開く。


「二人はどうするんだ?」


「ドリンクバーを頼んだ」


しかし、ドリンクは持ってきていない…マスクを外さないために飲まないつもりだろうか?


(金がもったいない…)


庶民を自負している泉田からすると、そういう感想になる。


「なら俺もドリンクバーにするわ」


泉田がドリンクバーを頼み、烏龍茶を持ってくると話し合いが始まった。


「これからするのは真面目な話なんだが」


「まぁ、そうだろうな」


よくわからない前置きに頷く泉田。真面目な話でなく呼び出されるような間柄ではないだろう。


「ポーションを大量に世に出そうと思う」


「……は?どういう意味だ?」


意味がわからず聞き返す泉田。


「いや、そのままの意味なんだが。俺の手元には大量の…いや膨大な量のポーションがある。それをどんどん世に出していくつもりだ」


「待て待て。どういうことだ?膨大というのはどれくらいだ?どうやってそんな量のポーションを手に入れた?」


「どうやって、という部分はダンジョンを攻略して手に入れたとしか言いようがないな。膨大というのは…そうだな、日本中一世帯に一つずつ配るくらいはあるかな?」


ポーションはダンジョンから手に入れたものもあるが、シンジが作成したものもある。しかしシンジが作成したものも、もとはダンジョンで手に入れた『調合』のスキルスクロールによって作ったものだ。そういう意味では、ダンジョンを攻略して手に入れたというのも間違いではない。正確でもないが。


「世帯って…つまり億はないが何千万はあるってことか?」


「まぁそういうことだな」


泉田は天を仰いだ。

思っていたよりずっと話が大きい。


「なんでまた急に?」


「魔王の城が原因だな」


【魔王の城】。先日支倉とも話題にあがっていた。


「魔王の城がある以上、魔王がいるだろ?」


「まぁ、そうだろうなという話はある」


「だが今の人類だと太刀打ちできない」


はっきり言われてちょっとグサっとくる泉田だが、二人とのレベル差をある程度知っているので言い返せない。

そもそも魔王の城の入り口付近で魔物がすでにレベル五万だ。到底太刀打ちできないのは間違いない。


「今のままだと高ランクのダンジョンがバーストした時に困るだろ?」


「そうだな。今の日本の戦力だと上位ダンジョンですでに厳しいからな」


「それだと今後どうしようもなくなる。だから、ポーションをがんがん供給するから探索者たちにはどんどんダンジョンを攻略して強くなってもらいたい」


この発言は、泉田にとってかなり意外だった。

一位と二位は、どちらかというと現実のごたごたからは距離をおこうとしているように感じていた。しかし今の話だとかなり全面的な協力をしようとしているようだ。


「こっちにはありがたい話だが…」


どういう風の吹き回しだ?とはさすがに聞きづらい泉田である。


「この間、魔王の城に行ってみて危機感を覚えたんだよ。このままじゃ日本が滅びるかも…ってな」


「そんなにか」


泉田とて、もちろん危機感は持っていた。だが、どこか現実離れした話のように感じていた部分もある。これまでのダンジョンバーストが、まるで人類のレベルアップに合わせて起こっているように感じられていたことも一因だ。このまま人類は少しずつ強くなっていき、ダンジョンバーストもそのペースに合わせて起きていく。漠然とそんな感覚になっていたのかもしれない。


「それだけじゃない。このまま魔王の城のダンジョンバーストが起こったら地球が破滅するかもしれない。三位のアランベルトと戦ってみての率直な感想だ」


「……」


「そこで、人類にはもっと強くなってもらうしかない。そのためのポーションってわけだ」


「わかった。が、話がかなり大きい。できればダンジョン省の大臣と話をしてほしい」


「ダンジョン省の大臣…?」


訝しげな顔をするシンジ。

なんでここでそんな雲の上の人物の話が出てくるんだ?


「俺は個人的に大臣とは懇意にさせてもらっている。話が通じる人だ。ポーションを流すにしても、どういうルートがいいのかとか、そういう話は大臣と話してもらった方が話が早いと思う。なんなら今から来てもらってもいい」


「今から!?」「ここに!?」


大臣をいきなり、こんなファミレスに呼び出すとか、いいのだろうか?権力に頓着しない二人からみても非常識な話に思われた。


「大丈夫だ。大臣はかなり二人を気にかけている。言えば飛んできてくれるはずだ」


その予定はなかったが、万一の場合は来てもらえるよう話はつけてある。


「…まぁ、話が通じる人物で問題ないなら」


シンジが頷くと、泉田は大臣に電話をかけるために席を立った。

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