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第22話 対策

「魔王の城かぁ…」


カナタは、複雑な顔で呟いた。

場所はいつもとは別のファミレス。万一ヨツバと鉢合わせないために、あえて地元から少し離れたファミレスにシンジとカナタはいた。


「地球にもあるなんてね…」


正直【魔王の城】は異世界でお腹いっぱいである。総階層数150の神話ダンジョン魔王の城は、異世界で攻略したダンジョンの中でもトップレベルの過酷さであった。

二人の旅の仲間だった聖女ーー正確に言うとジョブは聖女ではなかったがーーが瀕死の重症を負ったのも魔王の城であった。

もちろん怪我であればエリクサーという神話級のポーションを使えば一発で治る。しかし、その時に話をややこしくしたのが、聖女が負ったのが通常の怪我ではなく、呪いによるダメージだった点だ。

呪いは「解呪」しなければ、ダメージを与え続けるのだ。


「問題は、魔王の城があると知った今、どうするかなんだよな」


シンジは先日魔王について考察した内容をカナタに説明する。


「うーん、まずは、魔王の城がいつバーストするのか、かな」


「あんまり気は進まないが予言スキルを使うか…」


「そういえばあったね、そんなスキル」


戦闘でも日常生活でもあまり使えないスキルなので使用頻度は低い。カナタが忘れていたのも無理はない。

予言スキルというと、数秒先の攻撃を見て回避する!といった使い方もできそうなものだが、結論から言うとそれは難しかったのだ。


まず、予言スキルを使うには目を閉じて意識を全集中する必要がある。そして、スキルを通して思い浮かぶ魔法陣にマナを通す。

この意識の全集中が厄介で、『並列思考』スキルで複数に意識をわけた場合、一つの意識で集中してもダメで、自分という意識を待つ全ての思考が全集中する必要があるのだ。

この制約により、戦闘では死にスキルだ。


また、予言系列スキルの中には、過去・現在・未来それぞれについて予言するスキルがあるが、圧倒的に難易度が高いのが未来についての予言だ。先のことであればあるほど、マナの使用量も多くなり、確実性は下がっていく。

予言系列スキルの中で一番ランクが高いのが、『予言』スキルだ。もっと下位の『虫の知らせ』ーーこれは予言対象について数日以内に起こる危険を知らせてくれるーーよりも先の未来について知ることができる。

といっても限度は一年くらいだが。

そして、危険に限らず様々な情報を得ることができる。


「最大で知れるのは1年先までなんだが、そのためには丸1日集中する必要があるんだよな…」


そう、このスキルの面倒なところが未来であればあるほど、時間がかかるという点だ。1分先のことを知るには1秒必要で、1日先のことなら10分、1ヶ月先のことなら1時間。そして1年先ならば1日。

しかもそれだけやっても100%成功するとは限らない。


「異世界では予言専門の神官がいたからなぁ」


そのため、わざわざシンジが予言する必要はあまりなかったのだ。


「でもさ、一年以内にバーストが起こるかどうかわかるのはかなり大きいよ」


カナタの言う通りではある。


「そうだよな。じゃあ、とりあえず魔王の城のダンジョンバーストについての予言だな。電波の届かないところに旅行に行ってることにでもするかな」


「面倒だと思うけど、よろしく。あと他にも気になったことがあるんだけど」


「なんだ?」


「そもそもなんだけど、この世界のダンジョンと、アーカストのダンジョンってなんだか似過ぎてない?決闘のダンジョンといい、魔王の城といい。それに、ウィンドウもほぼ同じだし」


ちなみに、『ウィンドウ』と言うと自動でポップアップするウィンドウだが、ポップアップしないようにと思っていれば、しない。なんとも都合の良い仕組みだ。


「そうだよな…そもそもで言ったら、なんで地球にいきなりダンジョンができたんだって話になるよな」


「少なくとも、作り手がいるよね…?」


異世界では、ダンジョンは大昔からあった。起源は誰も知らない。しかしあることが当然で、普通だった。

しかし地球では違う。3年前にいきなり生じたのだ。作り手がいると考えるのが自然ではないか?


「まぁ万一ダンジョンは自然発生だとしても、ウィンドウは作り手がいるよなぁ…」


例えば、こんな話がある。

猿が適当にタイプライターを打って偶然シェイクスピアの内容ができあがる可能性はあるのか?無論、可能性で言えばゼロではないだろう。しかし実際は、宇宙ができてから全ての時間をかけて試しても、なお実現確率は低い。


何が言いたいかというと、人間にとって意味のあるものが偶然できる確率は極めて低いということだ。


「それは誰で、何の目的で?って話になるよね」


「異世界では、ダンジョンとかウィンドウが普通過ぎて逆に起源の話してるやつはほとんどいなかったからな…」


もちろん、そういう話をしていた人物もいるにはいた。しかし、現実の差し迫った魔王の脅威があった以上、そういう論理的、あるいは学術的な話は後回しにされていた。


「シンジが読んでたライトノベルで何か参考になりそうな話とかなかったの?」


ライトノベルを参考書扱いである…。


「そういえば最近読んでないな。自分が体験すると興味なくなるんだな」


以前は暇さえあれば読んでいたが、5年間異世界で過ごしてからはライトノベルを読みたいとは思わなくなっていた。


「でも、そうだな。異世界転生とか、異世界転移するにあたってはいくつかパターンがあって、大きく分けると超人的な何かが介入してきて、転生なり転移について事前に説明してくれるパターンと、そうでなく気づいたら異世界にいましたってパターンだな。異世界にいましたパターンも、明らかに召喚者がいる場合と、そうでない場合がある」


「ふーん、みんな想像力豊かねー」


「で、召喚者がいないパターンの場合、なぜ異世界に来たのか最後までわからないってパターンもある。これはあんまり参考にならないが、逆に参考になるのは超人的な何かが介入してるパターンだな。そういう時は大体その異世界の『神様・女神様』か『管理者』というのが多いな。そういう話では、大体地球側にも管理者なり何なりがいるって話になってる」


「なるほど。その話でいくと、地球にも何らかのの超人的な存在がいて、ダンジョンを創ったりウィンドウを創ったりしてるってことよね」


「決めつけるのは早いと思うが、そういう可能性は高いよな…」


「何のために?」


「問題はそこだよなぁ…」


仮にダンジョンやウィンドウの作り手がいたとして、何のためにそんなことをしているのか?それが問題だ。


「まぁ、目的はない可能性もあるしな。暇だったから創った、とか」


「うーん、あんまりしっくりこないかなぁ」


しかし、考えても答えは出てこない。


「とりあえず、シンジは予言スキルを使ってもらって、私はその間にいろいろ調べてみる」


「わかった。じゃあ調べる方は任せる。予言終わったら連絡するわ」


「オッケー、よろしく」


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