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第17話 ローランド

ーーローランドはなぜまわりが強くならないのか理解できなかった。


3年前、ダンジョンが初めて発生した日、ローランドはボストンの実家にいた。

両親が経営している小さな会社に勤めており、漠然とだが会社を継ぐつもりでいたのだ。

両親もそのつもりだったように思われる。積極的に仕事を任されていたし、期待にもそれなりに応えていたように思う。


しかしダンジョンの発生と共にローランドの人生は一変した。


その日、全世界を地震が襲った。大した震度ではなかったものの、全世界同時である。明らかに異常事態だった。

今では惑星地震(プラネットクエイク)と呼ばれるその地震をきっかけに、謎の黒い円状のものーーダンジョンの入り口、ダンジョンゲートだーーが世界中に発生した。

最初はSNSでその写真や動画が拡散された。そしてすぐあとには「ウィンドウ」と唱えると自分のステータスが見られることも拡散した。

「ウィンドウ」くらい誰でも口に出すことのある単語だ。発見はすぐだった。


ローランドもすぐに試した。


【ステータス】

名前/性別/年齢: ローランド・アランベルト(男性、26)

レベル: 19

ジョブ: 英雄(ユニーク、神話)

ランキング: 3

適性: 魔法(神話/火、風、水、土、雷、氷、闇、重力)、武具(神話)


そう、ローランドは最初からランキング3位だったのだ。

でもその時は深く考えなかった。ランキングの意味もよくわかっていなかったし、3という数字が何を意味するかもピンと来ていなかった。


しかし、ジョブは明らかに普通でないことはわかった。

SNSで情報を集めた限り、「ユニーク」や「神話」などというジョブ分類はなかったのだ。

そして、適性の数も多い。

明らかに普通ではない…。


やがて、黒い円はダンジョンへの入り口だということが発覚する。驚くべきことに、ダンジョン内のモンスターには軍の通常武器が通用しなかった。


しかし、魔法なら効くのではないかという憶測が広がった。ダンジョンが発生した日に、ステータスも誕生し、ステータスの中には「魔法」というファンタジーな内容があったのだ。関連していると考えるのは当然だ。


問題は、最初は誰も魔法が使えなかったことだ。適性はあくまで適性である。スキルがないと使えないのだ。


しかしあるボクサーが素手でモンスター討伐に成功する。そしてレベルが上がったと言う。さらに、モンスターからドロップ品を入手した。


そこから一気に探索者の時代が来た。

モンスターが人間にも倒せることがわかったのだ。

自分もレベルを上げたい、ドロップ品を入手したい、あわよくば魔法について解き明かしたい…そんな様々な考えをもった人々がダンジョンに群がった。


当初はダンジョンに入ることを規制しようとしていた政府だが、民意はそれを良しとしなかった。しかし普通に入るにはあまりに危ないことも事実。


やがてダンジョン探索協会が設立され、ダンジョンの立ち入りは民間人にも解放されつつも、ある程度コントロールされるようになった。


そんな騒ぎの中、ローランドはどうしていたかというとーーひたすらダンジョンに潜った。

「英雄」というジョブを得た時から、強くなりたい衝動にかられた。いや、「強くならなければ」という焦燥感の方が近いかもしれない。


自分以外に誰一人として待っていない「英雄」というジョブ。名前からして、内容からして、超強力なのは間違いない。

自分がそのジョブを持っているのは何か意味があるのではないか?その意味をまっとうするためにはジョブ名にふさわしい強さが必要ではないか?

そんな考えに駆られた。


そして、実際にダンジョンに潜ってみると、全然苦戦しなかった。

初期レベルが高かったので、素人だったがモンスターは簡単に倒せた。


そしてモンスターと戦っていると自然とスキルを覚えた。魔法スキルもスキルオーブから得たものより自然に会得したものの方が多い。


戦えばスキルを覚えるし、スキルを覚えれば勝てる。そうしてまた戦う。ひたすらその繰り返し。

強くなるのはあっという間だった。


強くなるのがあまりにも簡単だったので、なぜ周りは強くならないのか、逆に不思議だったくらいだ。


そして、ランキングは一度として変動せず、ずっと3位。

ランキングが世界ランキングだと判明した時にはさすがに愕然とした。

全人類の中で自分が3番目に強いのだ!


しかし同時に疑問にも思った。


上に不動の二人がいるのだ。


「英雄」より強い2人。神か何かなのか?


自分より強いジョブに違いない。他に考えられないのだ。

しかし、もちろん考えても答えはでなかった。


ただ、懸念があった。

例えば、一位と二位が何かとんでもないジョブーーそう、例えば「悪魔」とかーーだったら、どうする?実は自分はそれを倒さなければいけない立場だったりしたら?


あるいは、やはり何か重大な使命があったりするとしたら、自分の実力ーー世界で一番になれない自分の実力ーーでそれを成し遂げられるのか?


答えは出ないが、そんなことを考えながらひたすらレベルを上げた。

そうして三年が過ぎた時、ようやく一位と二位の情報が入ってきたのだ…。


なんとか戦うチャンスを得たものの、手も足も出ずに惨敗。

いい勝負はできるはず、あわよくば勝ちたい、と思っていたがそんなことは全くなかった。


二位ーーあまりに力の差があるから最初はは一位と勘違いしたがーーと自分の差は歴然としていた。

悔しい思いもあったが、むしろ希望を見出した気がした。

これだけ強い人がいるのだ、自分もまだ強くなれるはずだ。

同時に、一体この二人のジョブは何なのか?非常に気になった。


繰り返すが、自分がここまで駆け上がれたのはジョブのおかげだ。

ジョブが大きな力をもたらすことはわかっている。

ぜひ二人のジョブが知りたい。

そして、強くなる秘訣も。



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