第13話 呼び出し
章タイトルは後で変えるかもしれません。
ダンジョンバーストから1週間ほどが経ったある日、再びカナタから電話がかかってきた。
「カナタどうした?」
「シンジのことだから絶対知らないと思ったけど、やっぱり知らないんだね」
「なんのことだ?」
カナタが言うには、新聞広告ーーかなり古典的な方法だーーにシンジとカナタ宛のメッセージがあったとのこと。
シンジとカナタにと言っても、正確にはランキング一位と二位の二人に、だ。
いわく。
『ランキング一位 佐藤殿と二位 山田殿
至急連絡されたし。
ダンジョン探索協会横浜支部』
実にシンプルだ。
それだけに対応に困る。
「えー、何だこれ。宮間さんからか?」
「うーん、横浜支部って書いてあるから、少なくとも支部長は関わってるよね」
「なんだろう?アイテムのことか?」
「どうかなー。どうする?」
「なんか面倒事の感じがしないでもないな…」
「そうだよね。でもさ、緊急事態だったらどうする?」
「そうだよな…。一応連絡するか」
面倒事は避けたい二人だったが、この間のように緊急事態だったら放っておけない気もする。
「でも電話とかLINUでパッと連絡できないのは面倒だよな」
「一位と二位用の携帯でも準備する?泉田さんも連絡とれるようにしたいって言ってたし」
「それて気軽に呼び出されまくっても困るよな」
「それはそうよね」
しかも、携帯を準備するとそこから足がつく可能性が高い。そもそも現代日本では偽名で携帯電話を入手することは容易でないだろう。
「とりあえず今回はまた使者に行ってもらおう」
「それがいいね」
二人はまたシンジの家で合流し、前回同様使者を準備して、転移で送り出す。
使者と「シンクロ」したカナタが、ダンジョン探索協会の横浜支部にたどり着いた。
建物の中に入り、前回同様番号札をとって待つ。
「使者さん!!」
しかし、番号が呼ばれる前に、声をかけられた。前回対応してくれた男性職員だ。確か名前は佐々木。
「あ、この間の。新聞広告を見たので参りました」
「助かります!すぐに支部長を呼んで参りますので、とりあえず奥はどうぞ」
佐々木が前回のように二人を奥の応接室に通した。
応接室は実にシンプルで飾り気はない。異世界の王城のようないくらするのかよくわからない豪華な壺もない。
まぁ普通のお役所のような場所だからある意味当然だが。
「使者さん!」
やがて、ノックされたかと思うと間髪いれずに宮間が入ってきた。
「宮間さん、こんにちは」
使者が軽く頭を下げる。
「ええ、こんにちは。来てくれて助かったわ」
前回のようなこちらを試す雰囲気はなく、ホッとした様子だ。
「とりあえず来ましたが、どういったご用件ですか?わざわざ新聞広告を打つというのは、相当かと思いましたが」
そう、新聞広告なのだ。当然タダではない、どころか、かなりの費用がかかっただろう。それだけ重要な何かがある可能性があるのだ。
「ええ、そうなのだけどね…」
歯切れが悪い。実はとてもくだらない用事とか?
「あなたに、というより正確にはランキング一位と二位のお二人に会いたいという人がいるのよ」
ランキング一位と二位と会うためには新聞広告すら使う人物…。
誰だ?
「はぁ…それはどういった人なのですか?二人は平穏に暮らしたいので特に交友関係を広げる予定はないのですが」
「日本ランキング3位、世界ランキング31位の風淵君よ。あ、二人がいるから風淵君は日本ランキング5位になったわね」
これは…緊急事態ではなく面倒事の方だったようだ。
「お断りします」
間髪入れずに答えて立ち上がる。こちらとしては会う理由は全くない、どころか、面倒になるビジョンしか見えない。
「まぁ、待って!」
慌てて止める宮間。
「いや、でもこちらとしては本当に会う理由ないですし。今回も来てみたのは何か緊急事態かもしれないと思ったからでして」
「それはそうなんでしょうけど!こちらとしても困ってるのよ」
宮間は眉根を寄せている。
そう言われても困る、というのが本音であるが、来てしまった以上完全に無下にもしづらい。異世界で5年過ごしたとはいえ、性根はノーと言えない日本人な二人…。いや、いざとなればノーと言えるし戦えるが、そこまでする理由はまだない…。
「お二人がどういう認識なのかわからないけど、現在の高ランカーというのはかなりの権力者ではあるのよ」
そうなのか?
「国力がダンジョンの状況に左右される時代よ。高ランカーはかなり国に厚遇されているわ。本来は、お二人もそういう立場になるわよ」
意外と高ランカーが幅を利かせているらしい。
「だったら断っても問題ないですよね?こちらの方がランキングが上ですし」
「それは私が困るわ!」
じゃあどうしろと…。
「あ、そういえば、もうすぐ銀行口座の準備できるわ」
いきなりの話題転換だ。
「ね?これからも便宜を図るから、私を助けると思って欲しいわ」
「それは次も【妖精の涙】を売るということで話がついたはずです」
このままでは平行線だ。
「では、他に欲しいものはない?」
欲しいもの。欲しいものか…。
「なるほど、そうですね…足がつかない携帯電話が欲しいですね」
これだけ聞くと犯罪臭しかしない。
「携帯電話ね!お安いご用よ。銀行口座に比べれば楽だわ。こちらで用意するからぜひ風淵君に会ってちょうだい」
「条件が二つあります」
「何かしら?」
「まずは用意していただく携帯電話。GPSをつけたり、盗聴したりは絶対にやめてください」
「…当然ね」
なんだ、今の間は?
「それから、二人に会う時はランキング一位と二位はマスクをつけさせてもらいます。本名やステータスも開示しません」
「なるほど…。仕方ないわね。伝えておくわ」
納得したのかしていないのか微妙な表情だ。会わせてしまえばどうとでもなるとか思ってそうだ。
「絶対ですよ?お伝えしましたからね?」
一応プレッシャーをかけておく。
「…わかったわ。それで、いつ会ってもらえるのかしら?」
「いつでもいいですよ」
「…二人に確認しないのね。テレパシーでも飛ばしてるのかしら」
冗談めかして探りを入れてくる宮間。
「それは企業秘密ですね」
もちろんかわす。
「風淵君はなるべく早めがお望みよ。次の日曜の3時はどうかしら」
あらかじめ打ち合わせしてあったのだろう。いきなり具体的な日常の指定である。まぁ、連絡手段がないのだから連絡がついた時点で詰められるようになっていたのだろう。
「いいですよ。場所はどうしますか。ここですか?」
「いいえ」
宮間は意味ありげに間を置くと、
「代々木にあるダンジョンでお願いするわ」
なんだかまた面倒そうなことを告げた。
1でも全然大丈夫なので良ければ筆者のモチベーションのために評価をください!m(_ _)m




