生きてるだけで借金みたいなもん
まったく、長生き願望もないというのに。年金や保険料の支払い額が記載された葉書を睨み、大きく小さな肩を落とす。溜め息だけを家に残して、ガチャリと玄関を出る。年金を払うためだけに外に出たから、薄着を透かす風が冷たかった。寒い。
無人ATMにお金を渡した。このお金は、はたして本当に、将来老いぼれた自分を助けてくれるのだろうか。腰が曲がった自分など想像するに耐えなくて、考えるのをやめた。郵便局を出て、煙草を吸いながら帰路を歩く。
すると後ろから、お菓子の移動販売をしているおじさんに声を掛けられる。おじさんは明るい声で、「僕が売っているお菓子はですね、地域限定のものなんかも多くて、よかったらひとつふたついかがですか?」なんて言う。おじさんが押しているカートに目を向けると、カラフルなペロペロキャンデーが所狭しとぶっ刺さっていて、メルヘンを感じさせた。メルヘンキャンデーは悪くないなと思ったが、先程ATMにカツアゲされたばかりなのを思い出し、「すみません、今日は大丈夫です。また今度お願いします。」と伝えた。するとおじさんの顔から笑顔がすんと消えて、何も言わずに去っていってしまった。
それだけで今日、僕は死のうと思った。