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第1話 少年にされた勇者

 俺が8歳のころ。


 人間は8歳の誕生日を迎えると、洗礼の儀を受ける。

 洗礼の儀とは、自分のステータス、そして各種ステータスの成長率、得意魔法属性、得意武器を知ることができる儀式だが、それよりも皆が楽しみにしていることがある。

 それは選ばれた者だけに現れるえEXスキルである。


 スキル自体は誰でも成長過程、もしくは特殊な発生条件などで取得することができるが、EXスキルは潜在的なもので、取得条件は洗礼の儀に限られる。


 そのEXスキルを持っているかどうかでその人の将来を大きく変えてしまう。



 「バルトリ―・フェルディス君。こちらに触れてください」


 俺の番がやってくる。

 周囲の視線が自然と自分に集まる。

 それは期待の表れなのか、どうにも生暖かさを感じる。


 「君には期待しているよ。騎士団長の息子がどのようなものかと」


 そういう司祭様に愛想笑いを浮かべて、儀式に必要な洗礼の石板に触れる。


 そもそも、このステータスやスキルは世襲的なものではない。

 だから、親がとかは何も関係がないし、それをわかっていても期待してくる司祭様はそれほど団長を敬っているんだろう。


 その期待に応えたいと思う──


 わけないだろーーー!!!!


 俺は絶対にあの人たちのような特異なスキルなんかはいらないんだ!

 EXスキルを持つとそれだけで将来が決定される。国のためにーの言葉を毎日吐くような人生はごめんだ!


 俺は別にこの国が嫌いなわけではないんだ。だけど、この国のために働くと俺の親の騎士団に入れられてしまう。

 俺は、それだけは絶対に嫌なんだ!


 覚悟を持って洗礼の石板に意識を集中させると、ステータス画面が映し出される。


 NAME バルトリ―・フェルディス 年齢8歳

   ステータス(成長限界) 成長速

 筋力  C (S+)      ◎

 魔力  C (S+)      ◎

 耐久  C (S+)      ◎

 魔耐久 C (S+)      ◎

 敏捷  C (S+)      ◎

 運   S (S+)      ◎

 

 得意武器:剣種、槍種、弓種、棒種、素手

 得意属性:火・水・風・地・光

 EXスキル 所持数10


 ステータスはいたって普通の8歳。なわけもなく、毎日の過保護なほどの教育のおかげで普通ではない。

 ステータスはF-からS+で表示され、普通は大体FやEなど、そして得意なものがD。そして天才と呼ばれるものがCとこの年齢では表示されるのだが、これはさすがにおかしい。

 そして成長速度も×△〇◎の順で表される。

 そして何よりも……


 「このステータス! そしてEXスキル所持数10!?」


 司祭の声で教会中がざわつく。

 そして先ほどまでの目線が、もっと自分に集まるようになる。

 憧れと妬みが混じった視線に少し身もだえする。


 「このステータスはまさしく勇者だ!」


 その言葉に、あたりの声は一層高まる。


 勇者、それはただの称号に過ぎない。

 賢者は魔法系のステータスやスキルの優れたものに与えられる称号であり、勇者はステータスの総合力に優れ、スキルが豊富にあるものに与えられる称号である。


 そして、自分のEXスキル欄を見てみると、


 勇気の証:状態異常にかからず、運のステータスを向上させる。


 さすがEXスキル。確かに期待せれるのは納得できる。

 だが、俺には必要なかったんだ。


 このあたりで、俺の8歳の記憶はなくなってしまった。

 なんでだろう。とてつもない衝撃を受けたのだけは覚えてるんだけど……




 そして10年後。


 18歳になった俺は町はずれの小川で釣りをしていた。


 そもそも俺が勇者ってのはおかしかったんだ。

 別に顔も勇者らしいイケメンでもない。どちらかといえば女性らしさがある中性的な顔だちでどうにもカッコよさがない。体つきもいくら鍛錬を積んでも大きくならなかった。ただ、ステータスは普通に伸びてたけど。

 そもそも、自分で言うのは何だけど、勇ましいという言葉が似合わない男だぞ。

 だって、休みの日は何も考えずに釣りをして過ごすような、のんびりとした性格なのだから。


 ただ、勇者ではないと言いつつ、EXスキル勇気の証のせいで、小川と言ってるのにもかかわらず、人の子供サイズの魚を釣り上げてしまう。

 どうやってもこんな魚が泳いでるはずないだろ!

 でも、それを可能にしてしまうのが、EXスキルというわけだ。


 「お兄ちゃん! そんなのに運使って大丈夫なの?」

 「使うとかじゃないんだ。もう勝手に発動しちゃうんだよ」

 「なに、そのうらやましい能力。私にも分けてよ」


 運をもらい受けるために無理やり俺の手を自分の頭にのせているのは妹のリリー。

 俺と同じ銀髪で、肩にかかるくらいの髪を俺の手でなでられて喜んでいる。

 その笑顔は街1、いや国1の美少女といわれるほどで、母に似た緑色の瞳には皆がくぎ付けになる。

 14歳になったばかりなのに、君の妹は大人っぽいといわれるが、俺にはそう思えないが……


 「ねーお兄ちゃん。 勇者ってどんな感じなの?」

 「なんだよ急に。──別になんにもないよ。勇者って言っても何か使命があるわけじゃないし。ただの少し能力の高い騎士ってだけだよ。あと以上に運がいい騎士」


 俺は質問に答えながら、また釣りを再開する。ただ今回は妹に嫉妬されないように餌を外してつれないように細工しておく。


 「お兄ちゃんって運はいいんだけど、女運だけはないよね。この前もらってたチョコレートの中身が…」

 「おい、思い出させるなよ。てか、俺よりも気分悪そうな顔するな」

 「でも、大丈夫! どんなに女運なくても、かわいい妹である私がいれば相殺されるね」


 どこからそんな自信が来るのかとみると、確かにカワイイと納得してしまう兄馬鹿です。

 これのどこが大人っぽいんだろうか。


 「てか、お兄ちゃん、釣り竿引いてるよ」

 「うわ! これ、今までで一番! いや、こんな小川で釣れるような重さじゃ……」


 その引き過去最大級で決してここで釣れるような重さではない。

 というか餌付けてないのに釣れた。これが勇者の力──なわけないだろ!なんで餌のないしかもこんな異常なひきをするのが釣れるんだよ!


 「お兄ちゃん私も手伝うからしっかり握って!}


 そういって釣りあぐねている俺の後ろに回り、一緒に釣り上げようとする。

 この魚、二人で引っ張り出した瞬間にいままで以上の馬力を出し始める。

 ただ、なめるな! こっちは一応勇者だぞ!


 「つーれーろー!!!」


 大声でさらに気合を入れて釣り上げる。釣り上げた勢いのまま後ろに倒れそうになるが妹を下敷きにしてしまうと思い、無理やり体をひねらせてうつ伏せで倒れる。

 釣り上げた竿を勢いよく後ろに投げたせいで魚がどうなったかわからないが妹無事でよかった。


 「お兄ちゃん大丈夫?」

 「大丈夫以外答えたら怒られそうだから、大丈夫と一応いっておく」

 「大丈夫だけでいいの!!」


 妹は怒った様子で自分の上から離れる。そして俺も釣った魚の行方を追う。

 だが、釣った魚の姿はなく、そこにあったのは黒のローブを着た謎の仮面の人だった。


 『われは魔王! 貴様が勇者だな』


 「──なあ、妹よ。これは魚ではないよな」

 「お兄ちゃん。魚はしゃべりません」

 「ならこれは人魚か何かかな?」

 「でも、尾ひれがついてないから違うんじゃ」


 『われは魔王!! 貴様が勇者だな!』


 魔王──それは勇者と似ている称号で、ステータスが総合的に優れ、魔族の中の勇者的な存在だ。そしてEXスキルが勇者と同様に多いことも特徴である。

 ただ、それは称号。使命などは何もないはずなのだが……


 「勇者ですけど、別にだからと言ってなんでもないですよ」

 『私は勇者をずっと探していた。それが無理やり吊り上げられ──痛かった』


 なんかすごく低い声から悲しんでることが伝わって少し申し訳ない気持になるが、釣り上げられといて第一声あんな格好つけられたことに少し感心する。


 『勇者よ。私は、いやわれは貴様に戦いを申し込む!』

 「え!? いやですけど……」

 『フッ! そういうことはわかっていた。だから私の力で無理やりでも──』


 そういって魔王は手を俺、ではなくリリーの方に向ける。


 『くらえ!』


 その手から魔力弾が放たれる。それがリリーに向かっていく。それをかばいに自分が前に出る。

 どちらにあったたかわからないがその魔法の衝撃であたりに爆風が広がり視界が悪くなる。


 『貴様の妹は預かった。そしてこいつには時間の流れを操る魔法をかけて洗礼の儀の前の年齢にし、スキルが使えないようにした。返してほしくば魔族領の魔王城までこい!』


 そういって爆風が空けるのを待つ魔王が言い放つが、その言葉が完全無意味なことになってしまう。

 そこにいたのは紛れもない、14歳である俺の妹がいたのだ。


 そして魔王が捕まえていたのは紛れもない、勇者だ!


 「おい魔王。勇者の俺が捕まったんだけど」


 俺の年齢はちょうど10年前の8歳くらいの姿だろうか。自分が小さくなってしまった感覚がある。

 そして声も声変わり前の声に戻ってしまい。兄の威厳というものは皆無である・


 『えっ! なんで貴様がこの魔法を受けているのだ!』

 「それはこっちのセリフだ! せめて妹をさらえ! これじゃあ、兄の威厳がなくなるだろ!」

 『そんなことはどうでもいい!! これでは、私の計画が!』


 仮面越しからでも魔王の焦りが伝わってくる。というか、一人称まで変わっていますよ魔王さん。


 「でも、魔王の目的って俺を倒すことなんだろ? ならこのまま倒せばいいんじゃないんですか?」

 『違う! 私は、こんな姿の貴様とたたかいわけじゃないのだ!』

 「じゃあ、元に戻してくれよ!」

 『そ、それはできん!!』

 「じゃあ、俺はどうしろと?」


 魔王は俺を強く抱いて捕まえたまま、またも仮面越しから悩む感情が伝わってくる。


 『えーと、いったん魔王城で貴様を預かる! そして対策を考える』

 「治せないのにこの魔法つかったのかよ!」

 『違う! これにはふかーいわけが!』

 「もういいよ。治るんだったら早くその魔王城とやらに連れかええてくれ」

 『そうだな。では行くとしよう。【ゲート】』


 【ゲート】は存在がかなり認知されているEXスキルだ。

 国に一人いたら、その国はかなり栄えるといわれているスキルで、まさか魔王自身がそれを所持しているとは……


 「じゃ、リリー。俺は魔王城とやらに行ってくるけど心配すんなよ」


 俺はリリーに別れの挨拶を済ませるが、なんとも閉まらない光景である。彼女よりも小さな子供が、心配すんなとか。

 傍から見たら異様な光景なのだろう。


 でもそんな俺の姿を見て、妹が顔を悩ませている。

 妹よ、兄を心配してくれているのか?


 「お兄ちゃんって呼ぶのも変な感じだね」

 「俺はどんな姿になってもお前の兄だぞ。そんな顔すんな。俺は大丈夫だ」

 「いや、心配とかはしてないんだけど。ただ、一回おねーちゃんっていってくれない?」

 「おい! それが兄が連れ去らわれようとしてるときにかける言葉か!」

 『うるさいぞ! さっさと行くぞ勇者!』


 そうして俺は【ゲート】によって作り出された扉に吸い込まれていく。

 この浮遊感。すごく気持ち悪い!

 少し顔が引きつる。

 そんな姿を見かねたのか妹が焦った表情で最後に言葉を残す。もう彼女の表情も見えないが。


 「おにーちゃん! 一人称は俺よりも僕の方がかわいくて自然だよー!」

 「だからそれが最後に欠ける言葉なのかよ!」

読んでいただきありがとうございます

これからもよろしくお願いします

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