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イタナマ 考察

作者: 詩織


元々チワワであった竹内と彼女が、

人間の世界で生涯を共にすることを決めた。

日本にいるとチワワであったことがいずれバレるかもしれない。そう思い海外に旅立つことを決めた。

今日はいよいよ出発の日。人生の機転となる大事な日。


手荷物は最小限に、でも彼女との思い出の品である3DSだけは

肌身離さず持っておこう。

すれ違い通信で良く遊んだ楽しい思い出。


彼女の好きな“たこ焼き”。

海外に行ったら食べれなくなるかなとか、全く知らない地に旅立つというのに頭の中は彼女のことばっかり。


「よう、竹内」

聞き覚えのある声が聞こえる。

声のする方へ振り返る、身体から血の気が引いた。

ゴールデンレトリーバー軍を率いていたボスだった。


「元チワワだとバラされたく無かったら俺と賭けをしよう」


ボスはそう言った。


こんな脅し構ってられるかと無視して歩き出そうとした竹内に

畳み掛けてボスは言う。


「お前のことなんてどうでもいいんだよ

彼女がどうなるか分かってんの?」


竹内を引き止めるには十分な言葉だった。

ボスはニヤリと笑い俺をアジトに連れていった。


ゴールデンレトリーバー軍は悪い噂をよく聞く。

竹内はもしもの事があった時のために、

彼女だけは無事でいられるように、

すずめスナイパーに“力を貸してほしい”

そう連絡した、きっとあいつには伝わるはず


ボスとの賭けの内容はこうだった。

「お前の持ってる3DS、俺が買ったらそれを頂く、

麻雀で勝負だ。ルールの追加も変更も無い。」

どうやら今3DSは高値で取引されているらしい。

もちろん竹内は渡す気は無い。彼女との思い出の品だ。


組織対竹内1人でイカサマなんか当たり前、

竹内の努力も虚しく結果は惨敗。


「さあ、約束通り3DSを頂こうか」


竹内は全力で抵抗した。

服を剥がされ、殴られ蹴られボロボロになっても3DSだけは

死んでも離すまいと握りしめた。


竹内はボロボロになりながらも

ほんの一瞬の隙を見てアジトから逃げ出した。



その頃、空港では竹内の名前が呼ばれていた。

約束の時間になっても来ない竹内、予定していた飛行機はもうすぐ飛び立ってしまう。

それでも彼女は竹内のことを信じてずっと待つことを決めた。


逃げ出した竹内は急いで空港に向かおうとした。

服は剥がされ肌着だけの薄着、周りからの目が気になるがそれどころじゃない。今は待たせている彼女のことで頭がいっぱいだった。


「竹内くん!?」

不意に名前を呼ばれて立ち止まる。

彼女の友達だった。


「こんなところで何してるの?

もう飛行機の出発時間過ぎてるよ、?」


彼女の友達は彼女の1番の親友で

今日も旅立つ前に最後の挨拶として会っていたらしい。


「こんな大事な日に何してるの?

彼女のことは本気じゃないわけ?」


言葉がグッと胸に刺さる。

もちろん彼女に対しての気持ちは本気だ。

でも、こうも自分の情けない様子を実感すると

本当に彼女の隣にいていいのか分からなくなった。


竹内の心は限界に近かった。


お金もなく、意気消沈な竹内は目的地もなく歩き続けた。

家に着いたら払えばいいかとタクシーに乗ろうとするも無視された。


もう全てが嫌になりそうだった。

そんな時、「ワンッ!」犬の鳴き声がした。

鳴き声の方を見るとそこには竹内がチワワだった頃に

仲良くしていたチワワがいた。


そのチワワはDJだった。

沢山の人の前で音楽を操り、周りをわかせている姿は輝いていた。そして竹内は日暮里から新宿まで歩いてきたことに気づく。

チワワDJは竹内をステージに招いた。

ライブのような最高のミュージックにのせられて竹内は歌った。

全てを歌声にのせて発散するように。


歌い終わった竹内にチワワDJは

「ちょっと話さないか?」と誘った。


棄てられた自転車を拾い、

あの頃を思い出しながら2ケツして走り出す。

久しぶりにかわす会話は弾み、気づけば五反田まできていた。

沈んでいた竹内の気持ちが上向きはじめた。


「居たぞ!竹内だ!!」

楽しかった時間は長くは続かなかった。

ゴールデンレトリーバー軍の仲間であるパピヨン軍が

アジトから逃げ出した竹内を追ってきていたのであった。


チワワDJにも迷惑をかける訳にはいかない、

竹内は無我夢中で逃げ出した。


どれくらい走っただろうか。もう足の感覚も無い。

何とか追っ手を巻いた竹内は気づく。


“3DSが無い”


どこで落としたのだろうか、恐らく五反田だろう。

しかし今自分がどこにいるかも分からない。

ずっと大切に守ってきたものが消え、竹内は絶望した。


彼女との大切な日に約束を守れず彼女との思い出の品も失い、

自暴自棄になった竹内はドンキホーテに居た不良に喧嘩を売る。悲しみや怒りでどうでもよかった。


はぐれたチワワDJは池袋で竹内のことをずっと探していたが、そんなこと竹内は知らない。



最後の便が飛び立った。

空港には1人、竹内の彼女がいた。

いつも賑わう空港がこんな閑散とした静かで寂しい場所だったんなんて知らなかった。


手元には竹内との思い出の品である3DS


タッチペンを交換したりお揃いのチャームをつけたり。

結局楽しかったのは私だけなのかな?と涙を零す。


一緒に出かけた時後、家に帰って

すれ違い通信で出会った人たちを見せあって盛り上がったよね


そんな私たちの関係がこうも“すれ違い”で終わるなんて


神様はあまりにも意地悪すぎる







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