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離れた心はもどらない。女の子なめてると痛い目見るぞ!(1)

 あっ、初めまして。私、白河真由美しらかわまゆみといいます。泉明高校せんめいこうこうの二年生です。自分ではいたって普通の高校生だと思っているのですが・・・・・・あっごめんなさい。よけいなことでした。実はこの話しは私が主人公じゃないんです。それにこれは私の友達からきいた話しなんですけど・・・・・・え~っと、何から話せばいいのかな?

 とにかく私の学校はごく普通の女子校なんです。それで、この学校の三学年に高見美樹たかみみきという先輩がいます。この美樹先輩、同級生からも後輩からも慕われてほんとにステキなんです。なんたってあの清新精華校せいしんせいかこう御崎みさきさんと英華学園えいかがくえん珠宮たまみやさんからも一目おかれているのですから。

 あちゃ~、またまたごめんなさい。初めてお会いしたばかりなのに何だか分からない話になりましたね。御崎さんと珠宮さんのことはまたいずれお話しすることもあるでしょう。とにかく、今回の話は我が学校のヒロイン美樹先輩から始まるんです。


「ほら、美樹。あなたのファンが訪ねてきてるわよ」

「えっ」

 美樹は不意をつかれて返事をした。真希乃まきのに声をかけられるまで美樹はずっと何を考えているわけでもなく、ただ窓の外を眺めていたのだ。   

「ほらほら、なにボ~としてるの」

 美樹は声にせかされるように教室の入口にむかった。入口には学校の後輩達がまるでアイドルを待つかのごとく集まっていた。美樹はしばらく群がる後輩達の相手をして、ふたたび机に戻ってきた。


「まいったな~、私なんでこうなったのかな」

 美樹は軽く溜息をついて真希乃を見た。

「なに言ってんの!あなたは今やこの学校の救世主よ。この学校じゃ、いや、この地区の学校であなたの名前を知らない生徒はいないわよ」

「そんなことないでしょう」

 美樹はとまどった表情を見せた。

「あるって!だってあなたはうちの生徒が英華学園ともめ事を起こしたとき、あの珠宮を相手に一歩っも退かなかったのよ。先生達がおろおろするなかあなたが問題にケリをつけたんだから」

 真希乃はそう言うと、美樹と向かい合うように座った。


「あれは成りゆき上そうなったんで・・・・・・」

「なんだろうと美樹はこの学校じゃ清新精華校の御崎、英華学園の珠宮と同じように尊敬を集めてるんだから。いっそうのこと次期生徒会会長に立候補したら」

 真希乃は笑って言った。


「冗談はやめて。御崎さんや珠宮さんと比べるなんて、あの人たちは別格よ。さすがに一学園を背負っているだけのことあるわよ。私はとても二人の足下には及ばない。ゆえに私は二人の真似なんてできないのよ。正直、あの時は生きた心地しなかったんだから」

「それでも美樹は尊敬されている!」

「なにそれ?」 

 美樹は笑いながら首を傾げた。


「ねえ、それはそうと。美樹、美佳子を憶えてる?ほら、美樹に彼氏の悩

みについて相談し・・・・・・」

「ええ、たしか真希乃の陸上部の後輩でしょ。あのとき私、よけいなこと言っちゃったかな?」

 美樹はすまなそうな顔つきでこたえた。

「そんなことないよ。うん、おかげで美佳子は元気ハツラツで陸上に励んでいるわよ。けど、最近またスランプで・・・・・・どうも前の彼氏が()()()()()・・・・・・」

「”なんとかで”ってなに?」

「とにかく私はこういうのは苦手だから、また美樹、お願い。相談にのってあげて。お願い!」

 真希乃は両手をあわせて美樹を拝んだ。どうでもいいことだが、美樹は以前も同じようにこうして頼まれたような気がしてならなかった。


「わっわ、わかったから。そんなことやめてよ。仮にもあなたは陸上部のホープなのよ。それが私なんかに頭下げて!?だけどほんとうに私で大丈夫なの?」

「大丈夫よ。だって美佳子は美樹以外には相談できないって言ってたから。けど、大会も近いし、だいぶせっぱ詰まってまいってるみたいだったけど。先輩としてはだまって見ていられないのよ」

 美樹はしばらくうつろな顔で考えていたが、肩をすくめて真希乃を見た。

「それじゃ今日、少し遅いけど六時にこの前の場所に来てもらえるかな」

「ほんとに?」

 

 真希乃は手を叩いて喜んだ。

「いや~よかった。六時ね。大丈夫よ。部で一汗流すにはちょうどいいわ。伝えとく」 


 真希乃はそう言うとさすが陸上部といわんばかりの猛スピードで教室を出て行った。


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