第42話 俺の目的
お互い目が合うと、ニヤッと笑いながら
「メイソンに勇者の君、思っていた以上だよ。はっきり言ってアグラティアを倒すなんて思ってもいなかった」
「逃げるな!!」
俺は走りながら魔法陣の中へ入ろうとするがロンドに止められる。
「逃げる? 逆に感謝してほしいね。あの場で私が本気を出したら確実に君たちは死んでいたよ」
「じゃあなんで逃げるんだよ」
「う~ん。簡単に言えば、今回戦闘に参加したのは、仲間に頼まれたっていうのもあるけど情報収集がメインかな。まああいつはもう終わりかな」
「え?」
仲間っていうのは、多分ルシファーのことだろう。俺もルシファーの攻撃を止めるために参加したのに、なぜかアルゲがいたのだから。でも、ルシファーがもう終わりってどう言う意味だ?
「あいつは、禁忌を犯したからね」
「禁忌とは?」
「ここからは話せないよ。もし聞きたかったらメイソン、私の仲間になりなよ。ってもう時間だ。またね」
そう言ってアルゲは目の前から消え去った。それと同時にあたり一面にある魔方陣が消え去り、ロンドが俺を離す。
「なんで止めたんだよ」
あの時ロンドに止められなければアルゲを殺れたかもしれないのに......。そう思いながらロンドを睨んでいると、突然頬に激痛が走った。すると、ロンドが胸倉をつかみ何ながら
「もっと周りを考えろ!!」
「は? お前さえ止めなければアルゲを殺れたかもしれないんだぞ!!」
「そうかもな。でもその可能性とお前が死ぬ可能性。どっちが大切かなんて考えなくてもわかるだろ!!」
「......」
ロンドが真剣な表情をしながら
「俺はお前に死んでほしくはない」
「は?」
「追放したのは悪いと思っている。だからこそ、今になってわかる。お前がどれだけ大切だった存在だったってことかが」
「俺なんて、そこらへんにいる人間とかわらねーだろ」
そう。ロンドは魔王を倒す唯一の存在だが、俺は違う。ここ最近英雄と呼ばれ始めたが、それまではただの冒険者だったのだから。
「ちがう。お前もうすうす気付いてきているんじゃないか? 自分と対等な人間がいなくなってきていることを」
「......」
そんなことない。と言おうと思ったが、喉元でその言葉が詰まる。アグラティア様と戦闘していた時もそうだったが、こいつなら安心して任せられると思ったのは久々であった。
クロエやルーナの実力が無いというわけではない。だけど、俺と対等な実力を持っているかと聞かれたら頷くことはできない。だからこそ、ロンドが言った言葉を否定することが出来なかった。
「それにお前は俺を救ってくれた人だ。だからお前に死なれては困るんだ。それに冷静に考えてみろ。お前が死んだとき誰が悲しむのかを。自分の目的を忘れるな」
「!!」
それを言われてハッとする。俺が死んだとき誰が悲しむのか。まず最初にルーナとクロエの顔が思い浮かんだ。
(俺はバカか)
つい最近あの二人が悲しそうな表情をしていて、心が苦しくなったのを味わったばかりじゃないか。それなのに、アグラティア様や他の人たちを倒した時の感情に左右されてしまっていた。
俺は英雄になりたいんじゃない。ルーナとクロエ、他にも守りたいと思った人さえ守れればそれでいいんだ。たくさんの人を守りたいわけじゃない。目的を間違えてはいけない。
英雄になるためにルーナやクロエを守るんじゃない。ルーナとクロエを守る過程で英雄になるんだ。
もし、あの二人と国が危険な状況に陥った時、俺は必ずルーナとクロエを救う。それだけは忘れてはいけない。
「ロンド、ありがとな」
「あぁ。目を覚ましてくれればいいんだ。誰にだってミスはある。俺の場合、お前がそれを示してくれたんだからお互い様だ」
すると、ロンドは無言で俺の肩を叩きながら先を歩き始めた。
(本当にいいやつだな)
追放された時は、ロンドに嫌気すら起きたけど、今になって見ればロンドが居なければ道を踏み外していたかもしれない。そう考えるだけで、俺にとって大切な存在の一人なのかもしれない。
その後、二人で先程のところへ戻ると、ルーナとクロエが真っ先に俺の元へ駆け寄ってきて、抱き着いてきた。
「メイソン大丈夫?」
「無茶だけはしないで」
「あぁ。悪かった」
ロンドの方を向くと一瞬鼻で笑い、そっぽをむいてしまった。俺とルーナ、クロエ、アメリアさんの四人はウリエル様の元へ駆け寄り
「戦況はどうなっていますか?」
「まだわからないが、こちらの優勢だと思う。数日で終わると言ってもいい」
「本当にありがとうございます」
はっきり言って、おれたちだけでルシファーとアルゲの二人を止めることなんてできなかった。それだけミカエル様たちが居なければやばかった。すると、ミカエル様は無表情の顔で
「一旦、お前たちはラファエルたちに傷を見てもらえ。ルシファーは私が殺す」
「わ、分かりました......」
そして、俺たちは言われるがままこの場をミカエル様たちに任せて、一旦エリクソンたちがいる王宮へ戻った。




