第39話 少女
「ねえ、なんで無視するの!! 君の所為でよい実験台が逃げられたんだからね!!」
「お前は誰だ?」
全身の力を入れて、精いっぱい出た言葉がこれだった。それほど殺気が半端ない。現に他のみんなは立つだけで精いっぱいの状況であった。
「う~ん。だれだろうね~」
「......」
俺たちが黙り込んでいると、少女がため息を吐いて
「答えればいいんでしょ!! 四魔神の一人、アルゲ。君の名前は?」
「メ、メイソン......」
「そっか。じゃあメイソン、私の部下になる気はない?」
「え?」
その問いに対して驚きを隠しきれなかった。
(仲間になる?)
なんで俺だけ誘われたんだ? それに前回あった時、俺たち全員がアルゲに殺されかけたのに......。
「まあ簡単に言えば、メイソンに魅力を感じだからだよ。もし仲間になってくれるなら、ここにいる人たちを見逃してあげる」
「断ったら?」
「そんなの聞かなくてもわかるでしょ? それにメイソンならもうわかってるよね? 私には勝てないってことが」
「......」
悔しいがアルゲの言う通りだ。今の俺がこいつに勝てるのかと言われれば、無理だ。それだけ実力差があると感じる。
(俺は......)
ここでアルゲの仲間にさえなれば、ルーナやクロエ、アミエルさんたち全員を救うことが出来る。だけど、魔族の仲間になんて......。そう考えていると、アルゲが
「早く決めて~。気が変わっちゃうかもよ!?」
「ちょっと待ってくれ」
俺がそう言うと、アルゲは満足げな表情をしていて、ルーナやクロエたちは驚いた表情でこちらを見て来ていた。そして、ルーナが俺のもとに駆け寄って来て
「メイソン、自分を捨てる必要は無いよ?」
「でも......」
俺のやるべきことは、ルーナとクロエを助けること。それなら、この選択も悪くはない。すでに保障されているのだから。
「メイソン!! 自分が選びたい道を選んで。私たちはあなたの足かせになるために仲間になったわけじゃない!!」
「クロエ......。わかったよ」
俺がアルゲの方を向くと、満面の笑みでこちらを見てきて
「決まった?」
「あぁ。仲間になる」
「「!?」」
俺の発言に、ルーナとクロエは
「なんで......」
「メイソンダメだよ!!」
「黙って」
アルゲは二人に何か魔法をかけて、黙られる。そして俺に手招きをしてきたので、そちらへ向かう。
「悪いようにはしないわ。あなたはお気に入りなのだから」
「あはは。よろしくお願いいたします」
「じゃあ行きましょうか」
そう言って俺に背を向けた瞬間、魔剣を手から離して、もう片方の手で道具収納から短剣を取り出してアルゲの片腕を斬り落とした。
「え?」
アルゲが驚いた表情でこちらを向いてきたので、もう一度斬りかかる。だが、瞬時に避けられる。
「嘘だったのね」
「悪いけど、やっぱりお前の仲間にはならない」
「そう。でもいいの? 今の選択が唯一英雄になれる道だったのに」
「なんで......」
アルゲから英雄と言う言葉を聞いたのに驚く。
「こっちでも有名だよ? 勇者が現れたこと。そして英雄も現れたってね」
「だけど、なんで俺が英雄だと?」
「リーフくんを殺したじゃないか」
「......」
そう言えばそうだった。リーフを殺した時にアルゲとも出会ったのだから、そこから情報を入手したっておかしくない。
(それにしても、英雄が魔族でも......)
勇者が有名なのはわかる。だけど、英雄までもが魔族で話されているとは思いもしなかった。
「まあ君が私を攻撃したってことは、そう言うことだもんね」
「あぁ」
「残念だよ。本当に残念だよ」
そう言いながら、アルゲは俺たちから距離を取ると、斬り落とした片腕に何か魔法をかけると瞬時にくっついてしまった。
(!?)
そして、ここら辺一帯にある死体に魔法をかけて蘇らせる。
「同胞と戦って楽しんでよ」
「クソ......」
先程まで一緒に戦っていたエルフの方々が徐々にこちらへ近づいてきて攻撃を仕掛けてくる。だが、どのエルフの方々も涙を流しながら俺たちに懇願する。
「頼む。こんなことしたくない」
「わかっています。すぐに」
俺とクロエ、アミエルさんが一人ずつ着実に殺していく。だが、そんな時アルゲは一歩離れたところでもう一度魔法をかける。
(俺が略奪を魔族にも使えれば......)
すると、少年と戦った時みたいに魔方陣の中から偉人の方々が出てくる。その中の一人は俺ですら知っている人物であった。
【アグラティア】
過去に魔族を討伐するために世界を救ったとされる七人の一人。
「まだ魔法は完成していないけど、君たちがこの人に対抗できるかな? 私でも苦戦したのにね」
「苦戦ってお前は......」
その言葉に驚きを隠しきれなかった。なんせ、アグラティアが生きていたのは、数百年も前の話なのだから。そう考えながらも、アグラティア様のことを見ていると、徐々にこちらへ近づいてくる。
「お前たち、逃げろ。もう殺したくないんだ。殺すために力をつけたわけじゃないのに......」
そう言いながら俺たちに攻撃を仕掛けて来た。




