第37話 戦況
今回俺たちが任されていたところは中心部の最前線であったため、次は左方面へ向かい始めた。
(右はまだ良いけど、左は......)
煙の量や匂いが、右側とは桁外れな感じがした。はっきり言って、俺たちの場所が一番危険な場所だと思っていたが、この状況を見ている限り、そうでもないのかもしれない。
そして、俺たちが徐々に戦闘している場所までたどり着くと、騎士たちが倒れこんでいた。
(え?)
どうなっているんだ......。流石にここまで力量の差があるとは思えない。ここに来るまで強い魔物が居たかと言えばそうではない。
「それなのになんで......」
そう思いながら、倒れている騎士たちをルーナが回復し始める。
「やばいわね。そう言えば、メイソンなんでさっき少年に略奪を使わなかったの?」
「俺が使えないからだよ」
「え? でも死神には使っていたじゃない」
「死神は魔物であり、俺は魔族に使うことが出来ない」
いや、厳密に言えば使うことは出来る。だけど、使ったところで魔族相手にはスキルを奪うことが出来ないから意味がない。
前にリーフからスキルを奪えた時は、魔族になりかけた奴だったからこそ奪うことが出来たけど、英雄神が言うには魔族のスキルを奪うには段取りが必要らしい。
「そっか......」
「あぁ。まあ倒せればよかったからさ」
「そうね」
俺たちはルーナが広範囲回復魔法を使い、十分ほど経ったところで最低限の回復が終わった。
「皆さん、一旦エルフ国へ戻ってください。あそこにはラファエル様たちが居ますので、回復してもらえると思います」
「わかりました」
そう。エルフ国にさえ戻れればラファエル様たちがいる。そう考えるだけで、本当にラファエル様には先にこっちへ来てもらってよかったと思う。
(それにしても早すぎだろ......)
まだ戦闘が始まって数時間しか経っていない。それなのにこの状況。後どれぐらいこの戦況が持つかわからない。
(早くミカエル様たちの援軍が来てほしい)
そう願うしかなかった。俺たちがいくら頑張ったところで、一部の戦況は変えられるが、全体の戦況が変えられるわけではない。だからこそ、戦場には質より量が必要なんだ。
俺たちはエルフの戦士の方々が後退していくのを確認してから、最前線へ向かい始めた。道中、低級の魔物が現れていたが、難なく倒して先へ進む。
(こんな敵に負けるわけないよな)
はっきり言って、さっき倒れていた人たちがこんな低級の魔物に負けるわけがない。それなのにあんな数の負傷者が居た。それはなんでだ......?
懸念点はあるが、そんなことを考えている余裕はない。今は一刻も早く最前線へ行き、援護しなくてはいけない。俺たちは急いで最前線へ向かい、十分も経たないで到着した。
するとそこには先程同様、数えきれないほどのエルフが倒れていて、それを庇うようにエルフの方々が後退して行っていた。すぐさま俺たちはその人たちを援護するように前に立ち
「援護に来ました」
「あ、ありがとうございます」
すると、一人のエルフが
「気を付けてください」
「何をですか?」
俺たち全員、首を傾げながら尋ねる。
「時々、同胞が現れるのです。それも、名の知れた同胞です」
「え? それって......」
ルーナとクロエと目を合わせる。そして、俺たち三人はバカルさんの一件が頭によぎった。
(もし、あのパターンであったら)
俺の考えがあっていれば、先程のエルフの方々が倒れている光景や、なぜ今エルフが真後ろで倒れているのかが納得できる。
「ねぇ。それって」
「うん」
「多分、ルーナとクロエと考えていることは一緒だよ」
俺がそう言うと、やっぱりかと言う表情をして、すぐさま気を引き締め始めていた。一旦、後ろのエルフを守るようにゴブリンなど低級の魔物を倒す。
「ここからどうする?」
「そうだな......。まずはこの人たちを助けるために時間を稼ぐのが最優先だと思う」
三人が頷き、ルーナを背にしつつ三人で横に並んで戦い始める。魔法を使う敵には、ルーナが援護をして、俺とアミエルさんで魔物に突っ込みつつ、それを逃した敵に対してクロエがとどめを刺す。
こんな形で時間を稼いでいると、まがまがしいエルフの死体が複数体こちらへ近寄ってきた。
(あれが......)
「ルーナあれ、わかるか?」
「うん。どれも名の知れている有名な騎士や魔法使いの方々。ひどい......」
ルーナがそう言った瞬間、魔法使いのエルフが俺たちに向かって、魔法を放ってきた。




