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第9話 気持ちの整理


「戻ってきたね......」

「あぁ」

「うん」


 アンデットを倒して屋敷には戻ってこれた。だけど、気分がすぐれるとは言い切れなかった。本当ならアンデット討伐を達成して、すがすがしい気分になっていてもおかしくない。だが、今回に至ってはバカルさんが悪いというわけではないから複雑な気分であった。


「先に寝るね」

「うん。でもメイソンの所為じゃないからね......」

「わかってるよ」


 そして、二人と別れて自室に戻りベットの中に入る。ハッキリ言って今クロエの顔をまじまじと見ることが出来なかった。なんせ俺はクロエと同種族の人を殺したのだから。


 そりゃあ、バカルさんは死んでいたさ。でも死んでいたからと言って、自我のある人を殺したんだから人殺しと一緒だろ。それもバカルさんが悪い人と言うわけではなかったのだから。


(クソ!!)


 ベットを一度叩いてしまう。どう気持ちに整理をつければいいんだよ!! クロエは俺の所為では無いと言ってくれていた。それはわかっているさ。バカルさんに殺してほしいと言われていたのだから。


 でも、でもさ。俺は人を殺すために力を手にしたわけではないんだ。周りの人を助けたい、笑って暮らせるような世界を作りたいから力を手に入れたいと思ったんだ。でも今の結果はどうだ? クロエは複雑そうな表情をしていた。それはルーナも同様だった。それなのに、俺の目的が達せられたと言えるのか?


(正解の行動をとったとはわかっている。だけどさ......)


 その時、部屋の扉にノックをされた。


「メイソン、ちょっといい?」

「あぁ」


 扉の方を見ると、クロエがゆっくりと中へ入ってきた。そして俺の隣に座って


「メイソンありがとね」

「え?」


(なんでお礼を言われるんだ?)


 俺は同種族を殺したんだぞ? それもあんなに優しい人を!! それなのに.......。


「私だってバカルさんが死なない方法を模索すればよかったとは思っているよ。でも、あの場でそのような行動が取れたかと言えばそうじゃない。それにね。人を殺すのだって一つの救いだと思うの」

「人を殺すのが一つの救い?」


 言っている意味が分からない。絶対に生きている方がいいに決まっているじゃないか。


「バカルさんは何て言っていた? 元々死んでいる人だけどさ、あの人は実際メイソンに倒してもらえなかったら生き地獄になっていたと思うよ」

「......」

「だってそうじゃない。自我を持っているのに自身の体を誰かに操られて殺したくもない人を殺す。それって誰よりも残酷なことじゃない?」


(!!)


 クロエの言う通りかもしれない......。俺がもしバカルさんの立場だったとしたらどうだ? 目の前にクロエやルーナが現れて殺してしまう。そう考えるとゾッとする。そうじゃなくても見ず知らずの人を殺すっていうのすら俺だったら嫌だ。それはバカルさんも一緒だっただろう。そう考えたら少しだけ気持ちが楽になった。


「そうだな」

「そうだよ!! だからメイソンが悪いわけじゃない。バカルさんだってメイソンを恨んでなんていない!! 絶対に感謝していたに決まっているよ」


 バカルさんは最後、俺に殺してほしいと言ってきた。それは、今の立ち位置から開放してほしいって意味だったのか......。


「ありがとな」

「うん!! もっと前を向こうよ。あの行動はメイソンにしかできなかったんだよ。生きている人だけじゃなく、死んでいる人にも手を差し伸べることが出来る人なんだからさ」

「......。本当にありがとう」


 すると、いきなりクロエが俺の頭を胸に押し付けてきた。


「誰かに頼ったっていい。一人で抱え込まないで。私やルーちゃんはずっとメイソンの仲間なんだから。逆に頼られない方が私たちは悲しいよ」

「じゃあ、今だけ。今だけ少しだけ頼む......」


 俺はクロエの胸の中で涙を流す。


(俺って本当にバカなんだな)


 なんでも一人でやろうとして、一人で抱え込む。だけど、クロエの言う通り誰かに頼られないのは悲しいし、一人で抱え込まれると距離を取られたようになる。


(こんなに身近に頼れる存在が居たのにな)


 俺は助けるべき人を助けたんだ。どんな手段を取ったとしても悩む必要なんてない。もし悩むことがあったら、クロエやルーナに相談をすればいい。


「ありがとな」

「うん。気持ちの整理は着いた?」

「あぁ。本当に助かった。クロエがいなかったらこんなに早く立ち直れなかったと思う」


 するとクロエがニコニコ笑いながら


「そ。じゃあ貸し一ね!!」

「え? 貸しって......」

「いいじゃない!! そこまで変なお願いをするつもりはないんだし」

「ま、まあそれなら......」


 そして、ベットに入ろうとした時、扉が開き


「クーちゃんだけ一緒に寝るのはずるい!! 私だって怖いんだから一緒に寝る!!」

「寝よ寝よ。三人で寝た方が安心するしね」


 いやいや、俺はいろんな意味で安心しないよ??


「うん!!」

「じゃあ俺は床で......」

「「ダメ!!」」

「はい......」


 こうして、バカルさんと会う前の状態に戻ってベットで就寝した。

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魔眼の英雄~「無能の雑魚」と勇者パーティを追放されたので、勇者の裏側で英雄として成り上がる。え?今更戻って来いと言われてももう遅い。



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