第6話 狐獣人のお姫様
明日には表紙に入れるかもしれませんので、本日、もう少し投稿いたします。
するとウルフの死体が、徐々に動き始めた。それを見た狐獣人の女性は、驚いた表情でこちらを見て来る。
「あなた今何をしたの?」
「後で説明します。今は目の前の敵に集中しましょう」
「そ、そうね」
この魔法で驚くのはわかる。だが、今説明している暇はない。
死体のウルフたちに命令をして、レッドウルフたちに攻撃を仕掛けさせる。案の定、俺の予想通り死体のウルフはことごとく生きているウルフを倒して行く。
ウルフが蘇らせたウルフに対して攻撃を仕掛けるが、死んでいるウルフはひるむことなく生きているウルフを圧倒していった。そして数分経ったところで、あたり一面に居たウルフが全滅して、レッドウルフのみになった。
レッドウルフは俺たちに最後の抵抗として突進をしてきたが、狐獣人の女性が華麗に首を斬り落とす。
そして安心したのか、女性は膝を崩すようにこの場に座り込んだ。
「だ、大丈夫ですか?」
「は、はい。緊張が解けてしまいまして」
「それはよかった」
お互いホッとしたところで女性が
「まだ自己紹介がまだでしたね。私は狐獣人の第一王女、クロエと言います」
(やっぱりか)
うすうす感づいていた。ロンローリ様の奥様にそっくりな顔立ちをしていて、狐のような耳と尻尾をしていたから。
「私は、メイソンと言います」
「メイソンですか。本当にありがとうございます」
「いえいえ。私の方こそお礼が言いたいです。本当にありがとうございます。クロエ様が居なかったら死んでいました」
そう。レッドウルフが俺の首を食いちぎろうとした時、クロエさんが助けてくれなかったら確実に俺は死んでいた。
「あなたは自分の功績より、他人を尊重するのですね」
「え?」
それって当たり前のことじゃないのか? そりゃあ自分の功績は大切だ。そうしていかなければ、冒険者として生きていけないから。でも、今の俺は、ルーナやロンローリ様、そしてクロエさんがいなければここには立っていられなかった。
必ずどこかしらで死んでいたに違いない。それは本当に死ぬと言う意味もあるし、精神的に死ぬと言う意味のどちらもだ。するとクロエ様は、笑顔で俺に問いかけた。
「初めて他種族で、あなたみたいに他の人を尊重できる人に出会いましたよ」
「あはは......。今後もっと出会えると思いますよ」
そう、俺なんかよりもっと、他の人を尊重できる人はたくさんいるに決まっている。すると、クロエさんは何か思いついたような顔をして俺に言った。
「そうですか! では狐獣国へ戻ったら一つお願いをしてもよろしいですか?」
「いいですよ。できる限りのことはしますよ」
「はい! 今後お願いしますね」
そして、俺たちはルーナたちの元へ戻ると、ルーナは俺のところへ走ってきて、抱き着いてきた。
「バカ! 無茶しないで」
「ごめん」
一瞬ドキッとしたが、流石に人前で抱き着かれるのは少し恥ずかしいのでルーナと距離を取ろうとしたが、がっちりとくっつかれていて距離をとれなかった。
その時、クロエさんがジト目でこちらを見てきながら、俺に力を貸してくれて、ルーナと距離をとることが出来た。すると、ルーナは少しうろたえながら言う。
「あ!」
そこでやっと周りの状況を理解したようで、顔を真っ赤になっていった。
「助けていただきありがとうございます。クロエと言います」
「あ! クロエさん。無事でよかったです......」
「はい。今後ともよろしくお願いいたしますね」
「??」
俺とルーナは首を傾げながら、クロエさんの方を見ていると、続々と狐獣人の人がこちらへやってくる。
「「「お嬢様!」」」
「迷惑をかけましたね。ごめんなさい」
「いえ、こちらの警備が甘かったから」
「まあ、それは狐獣国へ戻ったら話しましょう」
そう言って、俺たちはクロエさんを連れて狐獣国へ戻っていった。
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