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深夜の楽しみ

 私は、目の前のシスターの手をそっと離します。

 この子で、結界を担う聖女の治癒は完了です。

 赤みが引き、穏やかになった顔を見下ろします。


 今、治癒の奇跡を施した結界の聖女は、まだ子供といってもいいぐらいの年齢に見えます。


 ──こんな歳で、熱と戦いながら街を守るために結界を、はり続けていたなんて……


 私はここへきて、ふつふつと魔女崇拝者と呼ばれる人達に怒りがわいてきます。

 しかし、ようやく穏やかな顔を見せ始めた目の前の結界の聖女には、そんな表情を見せるわけにはいきません。

 私も穏やかな表情をとりつくろい、結界の聖女の寝室を離れます。


 寝室を出ると、付き添ってくれていたシスター・マハエラが話しかけてきます。


「なんとも規格外……。本当に無尽蔵に治癒の奇跡を行えるんですね、リシュさん」


 もう深夜も過ぎて、明け方近くのはずです。こんなに遅くなってしまったのは、結界の聖女達が街の外周にそってばらばらに配置されていたからでした。それに加えて、魔女の吐息は伝染します。

 聖女達の周りにも当然罹患したもの達がいました。マザー・ホートなら、なすべき務めを優先するように言うかもしれません。しかし、私には見捨てられませんでした。目につく限り片っ端から治癒の奇跡を行いました。シスター・マハエラはその事を言っているのでしょう。


「遅くまでかかってしまいました、シスター・マハエラ」

「いえいえ、リシュさんの奇跡で何人ものシスターが助かりました。そして結界の聖女達を完治させたことで街の守りは完全に戻りました。リシュさんは街の人々全員を守ったのですよ。大聖女と呼ばれるにふさわしい行いです」

「でも……」

「結界の聖女達を優先して治癒しなかった事を悩んでいるのですか? リシュさんはまだ正式なシスターですら無いのでしょう。そうであればリシュさんの心のままに人々を治癒したことで誰が咎められますか」

「ありがとうございます、シスター・マハエラ。少し、気が楽になりました」


 わずかに微笑むとにっこりシスター・マハエラが笑い返してきます。


「さあ、少しでも何か食べて、仮眠をとった方がいいですよ。徹夜マイスターたる私が言っているのですから間違いありません」


 厳しい顔をわざと作って冗談めかして話すシスター・マハエラ。


「まあっ。シスター・マハエラはそんな称号まで!?」

「もちろんですとも。異端審問は深夜に及ぶことなどざらです。常に眠気との戦いですよ。さあ、こちらに準備してもらっております」


 私もダンジョンアタックで徹夜の経験は何度もあります。その際はやはり眠気覚ましに夜食を食べたものです。


 それはさておき、ここはお言葉に甘える事にします。


 程よい疲労感と達成感。そして、ときたま繰り出されるシスター・マハエラの軽口。

 その夜、シスター・マハエラと二人で食べた夜食はこれまでダンジョンアタック中に食べたどんな夜食よりも美味しく感じられました。





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