幼馴染の相談
学校も終わり帰り道。
帰る前に先程話しかける事が出来なかった隣の席の男子に声をかけようとしたが早々に荷物を纏め帰ってしまったので無理だった。
まぁ、機会はまた次の日にでもある、そう考え気を落とすことなく帰路に着く。
昨日と同じく再び圭介と優希となじみは三人で雑談しながら帰っていた。
圭介となじみの家は真横で本当に隣り合わせ、窓から行き来することも出来るほどだが優希の家は少し二人の家よりは遠い。
途中の分かれ道でいつも自分は別れるのだが今日はなじみからの相談にのる約束をしている。
だが圭介にはなじみからの相談があるということがバレると不味い。
優しい圭介の事だから多分自分も相談にのれないかと提案してくれるだろう、そうなるとなじみの相談が意味無くなってしまう。
優希が会話の端で少し考えるがいい案は全く出てこない。
「おい、優希!」
「なっ、なに!?」
「なに?じゃないだろ…すごい上の空だったが大丈夫か?」
「あー、全然!大丈夫大丈夫」
「それならいいんだけど、それよりなじみが」
「ん?」
「いや、今優希くんのお家にある漫画借りに行きたいなって…だめ?」
「あー、いいよ!もちろん!」
「よかったぁー」
優希の家に漫画を借りに行くというのは建前で相談をするために家に行く、ということをアピールするために恥ずかしそうに優希にウインクするが気づかない。
優希は基本的にアホなので細かいところに気づくことはほぼない。
「あっ、じゃあ俺ん家こっちだから」
「おう、なじみだけで平気か?漫画なら重いだろうし俺も…」
「それもそうだ「いや、大丈夫だからね!ね?」…お、おう」
「それならいいんだ、んじゃまた明日な」
優希の肯定を遮るようになじみが慌てて遠慮する。
優希の家まで二人で歩き出すがなじみからのお説教が始まる。
「圭介くんのことをいっつも相談してるって分かってるでしょ!?なのに圭介くんも一緒に来たら相談できなくなっちゃうじゃん!」
「あー、ごめん…」
「優希くん、アホっぽいからしょうがないけど」
「えっ!?俺って、アホっぽいの?」
「あー、違うねごめん」
「そ、そうだよな…」
「アホそのものだよ」
「尚更酷い!?」
ガーンという露骨な効果音が聞こえてくるんじゃないかという程までに分かりやすくショックを受ける優希。
そんな落ち込んだ優希を見てクスクスと笑うなじみ。
「あーっ、しっかり反応するんだもんなー、おっかしい」
「そんなに笑わなくっても」
「ごめんね、ほらほらお家行こ?」
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家に帰ると有栖が出迎えたが、優希の横にいるなじみを見た瞬間に露骨に機嫌が悪くなる。
有栖は一歳差ということもあり優希となじみ、圭介とはよく遊ぶ仲ではあるもののなじみが優希に圭介のことを相談しに二人で部屋にこもり話をしているのを知ってから微妙に敵対視している。
有栖はブラコンが行き過ぎて恋心へと昇華していて、なじみに優希が取られてしまうのではという勘違いしているだけであり実際、それは杞憂なのだが誤解を解くことが出来る人間は一人もいない。当然有栖はなじみが圭介に想いを寄せていることは知らないで、優希に想いを寄せているのだと勘違いしてしまっている。
優希は優希で有栖は圭介のことが好きでなじみが同じ圭介を想っているから敵対視しているのだろうと勘違いし、自分がここで変な茶々入れるのは不味いとしっかり説明していないのも原因の一つである。
「それじゃあ有栖、俺となじみは部屋でちょっと話するから」
「ねー、それって有栖も一緒にいちゃダメなの?」
「あー……まぁ、ダメだな」
「そっかー、じゃあリビングで待ってる」
「ごめんな、埋め合わせはするから」
少し悩んだが恋のライバルを相談に乗らせるのは…と考えて断る。
前提条件が間違っているというのは頭の片隅にすらない。
優希自体がここまで皆が圭介に有栖が想いを寄せていると考えているのは優希本人の前世の記憶というのが10数年生きてきた中で薄れに薄れてしまっているからである。
なんとかその記憶の中でも唯一残っているものもあるがそれが、ゲームではヒロインみんなから好かれている主人公の姿とそれを見るためにこの世界で努力しているという二点くらいである。
なので覚えてる知識でヒロインのことをなんでも知っているのかといえばそんなことは無いくせに、ヒロインは皆圭介を好いているだろうという潜在意識が働いてしまっているためだ。
なじみ自体は圭介に想いを寄せているからあっているが有栖が優希に想いを寄せているのは全く気づいていないのもその潜在意識に有栖は圭介のことが好きであるとなっているためで、普段は「義理の兄妹なのに異様に甘えてくる…信用してくれたんだな」等と変な方向に思考がいってしまっている。
誤解を直接的に解くためにはストレートに言うしかないのだが有栖自体現在ライバルがなじみしかおらず、なおかつ自分の方が距離が近いので告白してもらえるかもという希望が捨てきれないためである。
「それで?今日はなんの相談?まぁ、圭介のことだって言ってたし、そういう事だとは思ってるけど」
「う、うん」
そう言いながら来ているブレザーとワイシャツを脱いでラフな格好になる優希。
ベッドに適当に投げると、シワになるでしょう!となじみがハンガーにかける。家事が出来る女子的にやはりちょっと気になるらしい。
謝りながら優希はなじみをベッドに座らせて自分は勉強机の椅子に座り話し始める。
「頼むから前みたいな変な相談はやめてくれよ?」
「さすがにあの時の相談とは違うよ…」
以前からも何度も行われてきた優希の恋愛相談だが前回の相談は「圭介くんに彼女が出来ちゃったかも!?」というもので、よくよく話を聞いてみたら道で綺麗な女性と歩いている圭介を見ただけで結論も道案内という残念な内容だった。
「それで?今日はどんな相談なの?」
「すごい思ったんだけど、私って…圭介くんにあんまり女の子として見て貰えてないような気がするの!」
「あぁー……」
「あぁってことは、心当たりがあるの!?」
「いや、俺も圭介本人じゃないから断定は出来ないんだけど…」
「けど?」
「なんか、幼馴染としてのイメージが強すぎるのかもって…ちょっと気になってはいた」
頬をポリポリと掻きながら優希が申し訳なさそうにそう言う。
なじみはそれを聞いてショックを受けながらも半分納得という面もあるのか少し暗い表情になってしまっている。
「やっぱりあいつに告白出来れば早いんだけど…」
「うぅ…そ、それは…」
「だよねー」
「で、でも!青ヶ春高校の文化祭って告白タイミングに最適だって入学説明会でも言ってたから!そこで…」
「入学説明会そんなこと話したの…?」
「うん、なんか他にも学校に関するウワサとかはいっぱい教えてもらったよ」
「他の学校とはやっぱりなんか違うな、この学校…」
「ねー」
「取り敢えず、今度それとなくどう思ってるか聞いてみるけど…多分良い幼なじみだよ、とかしか言わなそうじゃね?」
「もうちょっとアピールした方がいいのかな…」
「でもアピールできたらもうしてるでしょ?焦らずゆっくり行こう」
「うん…ありがと」
相談も終わったのでこの辺で帰るねー、と言い帰ろうとしたので一応理由付けとしても使った適当な漫画を一巻持たせて明日返してもらう事にする。
圭介の前で返してもらえば漫画を借りに行ったアリバイが本当になる、そんな細かいことを気にするような器の小さいヤツじゃないが念の為だからと押し付けるように持たせた優希は玄関からなじみのことを見送り姿が見えなくなってから扉を閉めた。
リビングへと戻るとソファに布団をかぶりながら有栖が縮こまっている。
テレビも消されていて、もう夕方で外からの声もほとんど無く静かな雰囲気が漂う。
携帯電話でも弄っているのかと思い、横に座り頭をポンポンと撫でながら優希は声をかける。
「どーしたー?」
「……なじみさんは?」
「もう帰ったよ」
「そうなんだ…」
そう言って有栖はソファに座っている優希の足に頭を乗せて膝枕のような状態へとなる。
優希のお腹にTシャツの上から顔をグリグリと擦るので優希は何も言わずに頭を撫でる、すると次第に
スキンシップが元々多い義兄妹の二人だが有栖が何も言わずにスキンシップを取り始める時は少し拗ねてたり凹んでいる時だというのを優希は知っている。
なじみとちょっと話していただけでこれとは本当に兄離れが出来るのか?と思うが今はこのゆったりとした心地のいい時間を噛み締めることにした。
先のこととかちょっと考えてみたんですけどヤンデレとかも出てきそうなんですよね…
そこまで続くかはモチベによりますが苦手な方はちょっと考えといてください…!