57:王都の休日~クロ&デューク~
…side:C
「じゃあ悪いけどシュテン借りるわね、ビーツ」
「うん、シュテンも何かあったら念話してね」
「はっ!主殿もお気をつけて」
そうして私はシュテンと二人で歩き出す。
思えばシュテンと二人っていうのは初めてかもしれない。特訓の時はみんな居るし。
長身でグラマラスな超絶褐色美人のシュテンとデートと思うと、なかなかグッとくるものがある。
まぁ、傍から見れば私も超絶美少女の侍ガールなわけで、これはナンパイベントが発生する事請け合いだろう。カモン、チンピラ。
が、歩けども歩けども声はかからず、向けられるのは奇異の視線のみ。
それもそうか。シュテンがいくら美人でも角生えてるし。背中には布に巻かれたバカデカイ謎の鉄塊背負ってるし。
「おいおい、あれなんの種族?獣人?」
「角生えてるしオーガじゃね?」
「バカ言え、あんな美人なオーガがいてたまるか」
「あの背中のは何だ?柄が出てるし、剣か?」
「いや、特大剣にしたってデカすぎだろう」
人通りも多いし、そこら中からこんな声が聞こえる。
まぁ無視でいいでしょう。
「ところでクローディア、どこへ向かうのです?特訓ですか?」
「特訓もあるけど、まずはンノーネルさんの鍛冶屋に行きたいわね」
「なるほど刀の手入れですか。私の鬼炎も見てもらいましょう」
大通りの人混みを抜け、北区画の路地に入る。
何度かの曲がり角を越えた先が、私たちが刀を購入したンノーネルの鍛冶屋だ。
「おっ!クローディアの嬢ちゃんとシュテンだったな。今日はどうした」
「刀の手入れをお願いしたいんですけど。念の為ね」
「感心だな。じゃあこっちに……あぁ、シュテンのはここじゃ無理だ。中庭に行こう」
シュテンの『斬竜刀・鬼炎』はンノーネルさん一人では持つことも出来ない。
だから買った時と同じように、中庭の作業台に、私の『花鳥風月』と共に並べる。
「んー、随分と硬いの斬ったみたいだな。相手は?」
「ロッククラブとかソールシェルとか」
「なんだ海行ってたのか。斬撃の鋭さで斬れちゃいるが、まだ何回かは水平を保ててないってとこか」
「よく分かりますね」
「当たりが良けりゃ側面にこういう痕はつかねーのよ。早いこと刀に慣れるこったな」
「精進します」
やっぱプロが見れば私の刀筋も分かるらしい。
ミスリル製の刀は刃こぼれなど早々しないし、私も毎日手入れしてるから綺麗だと思うけど、ンノーネルさんはそれでも手入れをしてくれる。
木槌で軽く叩きながら全体の重心をチェックし、専用の布と油で新品同様になるほどに磨いてくれた。
「こんなもんだな。じゃあ次はシュテンのだ……ん?汚れてるから使ってるんだろうが、傷も凹みも斬った跡さえねぇな。大して使ってねぇのか?」
「いえ、毎日使っていますよ」
「そうか?じゃあ一番硬かったやつは?」
「そうですね……強いて言えばメタルイーターですかね。まぁ一刀両断でしたが」
私もンノーネルさんも開いた口が塞がらなかった。
メタルイーターは鉱物ばかり食べる地竜で、鉄やミスリルも食べる為、その表皮は恐ろしく硬い。私じゃ絶対斬れない。
それをあまり硬くなさそうに喋るシュテン。
刀に痕も残らないって事は、実際、抵抗なくスパッと斬ったのだろう。あの鉄塊のような斬竜刀で。
「そ、そうか。力だけじゃなくて技量も達人並みかよ。すげえな」
「恐れ入ります」
「ま、まぁとりあえず磨いておくぜ。ちょっと待ってな」
それから新品同様まで磨き上げた刀を受け取った。
やはり刀を手入れすると、気持ちも晴れやかになる。
私たちは笑顔でンノーネルの鍛冶屋を後にした。
途中、大通りで昼ご飯用の食料を露店で買い込む。
普段、町で買い物などしないシュテンのテンションは高い。
「クローディア、あれは何ですか!あの匂いは!」など、手を引っ張られ、まるでデートである。悪くない。いや悪くない。
買い込んだ後は、王都を出て、平原で特訓だ。
今日の課題は「火力を上げるにはどうすればいいか」である。
「火力ですか?」
「こないだの魔族戦見てたでしょ?烈風斬は弾かれるし、居合も手で止められたわ。傷付けるどころか、足止めも出来なかった」
そう。デュークはセレナの護衛、ビーツは従魔召喚。私とアレクで足止めするしかなかった。
でも一蹴された。アレクの魔法もそうだけど、私も何も出来なかった。
あの場面で止められなければ、前衛アタッカーの意味がない。
「でも私の素養は風と土だけ。素早さ・鋭さ・武器の強度は補助魔法で上げられても、火力は出せないのよ」
「デュークやアレクに補助魔法をかけてもらえばいいのでは?」
「遅攻戦術ならそうするけど、あの場面じゃ無理ね。速攻で足止めする必要があった」
「ならば一撃の威力を高める方法、という事ですか。ちなみに烈地斬は?」
私の持ち技の中で、一番攻撃力があるのは烈地斬。
ウィンドウォールで相手上空に駆け上がり、重力+ウィンドウォールの加速を付けての切落。
ただ、駆け上がって切落するまでに、時間がかかる。あの場面では無理だ。
速攻性のある火力が求められる。
それからシュテンと相談しながら色々と試した。
刀の振り方、握り方、体の振り方、重心移動、魔法操作などなど。
結果、どれも火力アップには繋がらない。改善はすれど会心ではない。
「はぁっ、はぁっ」
「少し休憩にしますか、クローディア」
火力を与える斬撃を生むにはどうすれば……疲れた体と脳みそがグルグルする。
威力のある斬撃……破壊力のある斬撃……
……ん?
斬撃じゃなくてもいいんじゃないの?攻撃であれば。
斬撃以外に何がある?魔法?いや、アレクので無理だったんだから私じゃ無理でしょ。
じゃあ体術?いやいや体術なんてやったことないし。お父さんにちょっと護身術習っただけだし。
そもそも殴ったり蹴ったりで、あの魔族の足止めなんて出来ないでしょ。
フェリクスさんの剣も手で止めてたし、どんだけ魔力が高いんだか、どんだけ皮がぶ厚いんだか。
「ほら、水でも飲んで下さい」
「あ、ありがとう……」
……水。
あの硬い魔族も、中身は水。
火力のある体術……水……掌底?
いや体術できないし。私に出来るのは……風?
風で体内の水を振動させれば、それは掌底と同じ?
でも相手の体内に魔法を作用させるとか……第一パスが通らない。
ん?刀をパスにすればいける?
例えば刀を相手に付けて、そこから風魔法を発動……相手の体内の水分に風で波立てる……体内ダメージになる?それとも相手の魔力で防がれる?
「ちょっと、シュテン。悪いけど試させて」
「なにか思いつきましたか」
「うん、この切っ先をシュテンに触れた状態で――」
…side:D
皆が思い思いの休日を過ごす中、デュークは一人、宿屋の部屋で頭を抱えていた。
「どうする……どうしたらいい……」
呟くが答えは出ない。
机の上に重なった羊皮紙の束。羽ペンを右手でクルクルと回しながら考えをまとめようとする。
しかしそう簡単にまとまるはずもない。
故にすでに数時間、羊皮紙と睨めっこしているのだ。
「ウンディーネの事なんか書けるわけないだろ……」
聖典のプロットの件であった。
ここまで御覧頂きましてありがとうございます。
初投稿前にあった書き溜めはここで終了です。中途半端ですみません。
今現在書いている書き溜めは次回作「王都ダンジョン【百鬼夜行】へようこそ!」という作品でして、本作品の7~8年後という設定になっています。
タイトルの通り、ビーツ君と従魔たちが主役(?)となっています。
第三者視点で書いているので本作品とはちょっと違った作風ですが気になる方はチェックしてみて下さい。
https://ncode.syosetu.com/n3121fw/
何分遅筆なものでそちらの書き溜めばかり書いていて、こちらの作品を中途半端なまま放置しているのが心苦しくはありますが、ご了承頂ければと思います。
これからもどうぞよろしくお願いします。




