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大魔導士「ベギ〇ゴンって何属性ですか?」  作者: 藤原キリオ
パーリーピーポー編
5/57

05:クローディア・チャイリプス



 バタン!

「おばばー!」

「うるさい!静かにお入り!」

「氷とか雷属性ってないの?」

「はぁ……あるよ」

「あるの!?すげえ!」



 またある時は……


 バタン!

「おばばー!しゅんかんいどうの魔法ってないのー?」

「うるさいっつってんだろ!あるかい!そんなもん!」

「ないかー」

「転移装置ならあるけどね」

「なにそれ!くわしく!」



 またある時は……


 バタン!

「おばばー!そらとぶ魔法ってないのー?」

「はぁ……ないよ」

「ないかー」

「一時的に物を浮かせるなら出来るがね」

「なにそれ!くわしく!」



 こんな感じでおばばの家に通う日が続く。

 こっちがメチャクチャな質問しても、ちゃんと教えてくれるチッタおばばはやっぱりいい人だ。

 ちなみに氷と雷に関しては、火属性と水属性をある程度使いこなせると氷魔法が、土属性と風属性をある程度使いこなせると雷魔法が使えるようになるとの事。オレにはまだ先の話だ。


 基本的な座学と並行して、実際の魔法を試す。詠唱を教えてもらい、無詠唱でそれに近づける。それが出来たらまた新しい魔法。

 さらに自主練として出来た魔法を変形・変質させることも試す。

 この変形・変質ってのが、おばば曰くオレの才能らしい。



「あんた最初にファイアボールを青白くしたり、大きくしたり、ジャベリンにしたりしたろ?

 あたしはフレイムジャベリンかと思ったが、威力は普通のファイアーボールだった。ってことは見た目だけ変えたってことさね。

 普通の魔法使いは詠唱ありきが主流だから、決まったかたちの魔法しか発動しない。せいぜい魔力を込めて威力を上げるくらいさ」


「あーそうなんだ。いりょくが変わらないんなら、やるだけムダなのかな」


「そんなことないさ。言っただろ?その器用さも才能だと。魔法ってのは言ってみれば学問だ。誰もやってなきゃ、それが自分の武器になる。

 あたしも試しに形を変えるの試してみたんだが、ありゃ難しいよ。まぁあたしの場合は長年の固定概念があるから余計かもしれないがね。

 『この魔法はこういう形だ』ってイメージがどうしたってある。ただ新しい魔法も作れるかもしれないし、何より魔力操作の練習にもなる。面白いから自由に試すといいさ」


「そっか……うん、わかった!」



 毎日毎日、知識が増える。やりたい事が増える。時間も魔力も足りない。

 と言っても家の中や庭で出来ることも限られるし、親に相談したら練習場所を教えてくれた。

 チッタおばばの家(森)に向かう前には川が流れていて、三メートルくらいの高さの渓谷っぽくなっている。

 二十メートルくらいの橋を渡れば、チッタおばばの家なんだが、橋の手前の坂道を下りれば河川敷。

 騒音とかも考えて、なるべく他の民家から離れたところが、秘密の練習場だ。



(六属性、氷と雷を入れても八属性……どうやってベキ○ゴン撃つんだ?)



 オレが魔法にはまっているのは『ゲームや漫画の魔法を撃ちたい』からだ。

 再現するために変化・変質をして試していると言ってもいい。

 だってファイアーボールの『メ○』しか再現できてないし。って言うか変化させる必要するないし。



(そもそも『ギ○』……閃熱魔法って何だよ。火属性だろ?『メ○』(火炎魔法)とかぶるじゃん)



 考えているのはドラ○エだが、設定的には『ダ○の大冒険』のほうだ。

 あれのベギ○ゴンが一番かっこいいと思っている。是非とも撃ちたい。次点で『メド○ーア』だ。

 ドラ○エ以外にもいろいろとあるが、とりあえず目標はそこである。


 

 一応説明しておくと、『ベギ○ゴン』とはRPGに出てくる『極大閃熱呪文』であるが、オレが言っているのは、それの漫画版だ。

 頭の上にアーチをかけるように、両手から炎の渦を出す。次に両手を頭の上で合わせ、炎の渦を圧縮させるイメージ。

 拳と拳を合わせた状態で両手を前に出し、照準を測るように両親指と人差し指を少し開く。そこから極太の閃光を発射。着弾地点に広範囲の炎熱爆発を起こす。……というものだ。

 今は、ファイアーボールで出した炎を、渦っぽく見せることすら難しい。細長く回転させることは出来るんだけど……。



 ずっとそんなことを考察している。

 ちなみにオレ、生前は三十六歳です。マジおっさんです。中二病なんてとっくに卒業しています。

 しかしオレは三歳となった。魔法を実際に使えるようになった。

 ならばロマンよ、もう一度。失った中二病を取り戻せ!というわけだ。




「アレクー!」



 その日もそんな中二めいた魔法練習をしていたのだが、遠くから呼びかけられた。

 河川敷を走ってくる幼女。

 肩口まで伸ばした茶色の髪を、後ろで無理矢理まとめている。

 顔立ちの整った、いかにもファンタジー系の美少女だ。あ、美幼女だ。



「クロ?またきたのか」

「また魔法やってるのー?」

「ああ、そっちは剣のけいこはいいのか?」

「さっきまでお父さんとやってたよ。でもおしごといっちゃった」



 この子は『クローディア・チャイリプス』。通称『クロ』。

 すぐ近所に住んでいる同年齢の幼女で、彼女の父親は村の衛士(見回り兼、森の動物・魔物退治)だ。

 仕事がら、剣を使っていることもあって、幼いクロに英才教育をしている。

 近所ということで親同士も仲が良く、クロともよく遊んでいる。

 もっとも元三十六歳のオレが幼児の遊びを出来るわけもないので、魔法vs剣でチャンバラごっこしたり、それぞれ魔法と剣のことを教えあったり。

 三歳児とは思えない遊びをしているわけだ。

 まぁ日本と違い、娯楽のない村だから、そんなことでも楽しいのだろう。



 その日も、訓練場にたまたま遊びにきたクロと話しこんでいた。

 クロはいつものレギンスっぽいハーフパンツで、可愛らしく女の子座りしている。

 三歳児なのに大した女の子らしさだ。異世界の成長速度恐るべし。



「アレク、こんどさ、いってみたいところがあるんだよ。いっしょにいかない?」

「いってみたいとこ?」

「うん!モンスターじいさんのいえ!」

「モンスターじいさん? だれそれ……」



 魔物を捕獲して訓練場でも作っているのだろうか。はたまた魔物を育て卵を産ませる合成屋なのか。



「むらのはずれにあるらしいんだけどさー、モンスターにくわしいんだって」

「はずれって、うちとぎゃくがわ?」

「そうそう」



 パーリーピーポー村は、村というには大きく、人口は二百人を超える。

 農業や林業と森の恵み(魔物討伐含む)が主な産業で、決して名前のとおりにファンキーな村ではない。むしろ牧歌的だ。

 村の北には街へと続く街道があり、南には大規模な森。さらに南には大きな山脈が見える。

 村の西は畑が広がり、オレやクロの家もそっち側。

 東は南から広がる森の端にあたり、林業がメインになっている。モンスターじいさんの家ってのもそっちだろう。

 ちなみにチッタおばばの家や、オレの訓練場は南側。森と村を隔てる川のそばだ。



「あっちがわは行ったことないなー」


 

 オレはあくまで三歳児なので行動範囲が限られている。

 この訓練場だって最初はダメだって話だった。そこをチッタおばばの協力のもと、両親に掛け合い、なんとかもぎとったのだ。



「とりあえず、とーちゃんとかーちゃんにきいてみるよ」

「うん。わたしもひとりじゃダメっていわれるとおもうし」

「なにそれ、モンスターじいさんってあぶない人なの?」

「そんなことないとおもう。でも行ったことないとこだからねー」

「なるほど」



 クロの父親は厳格で真面目な人だ。勝手な行動は制限されるんだろう。

 オレの魔法のことはうちの両親から聞いているらしく、オレと遊ぶ分には問題なしとされているらしい。

 三歳児の魔法とか、かなり危ないと思うんだけどな……。



 そんなことを話していたら、森のほうが騒がしくなったので、目を向ける。

 野鳥が群れで飛び去って、なにかの声が聞こえる。

 熊でも出たのか?とっさにそう思って立ち上がった。



「なにかいる?」



 クロも感じたらしい。傍らの置いた木剣を手に取った。



「……わかんない。もどったほうが――」



 そこまで言った時には、もうソレが目に入った。

 川の対岸の崖の上。森から慌てて出てきた、くすんだ緑色の人型。耳と鼻が垂れ下がり、下あごからは牙が見える。

 手にはこん棒と言うべき木の塊。



「ゴブリン!?」




【悲報】クロはヒロインではない。というかこの作品にヒロインなんて出てこない。

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