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大魔導士「ベギ〇ゴンって何属性ですか?」  作者: 藤原キリオ
ファンタスディスコ編
49/57

49:港町の守り神

短いけどしょうがないね。



 四大精霊の一つ、水のウンディーネ。

 精霊自体の存在は知られているものの、精霊をその目で見たという者は少ない。

 不可視の存在なのか、人の居ない場所に住んでいるのか、聞く話は憶測ばかりである。

 ましてや大精霊ともなれば伝説の存在であり、神格化され信仰の対象となるのも頷ける話である。

 水の大精霊としては、おそらくは世界で唯一の存在であろう。



「いや、別にウンディーネはわし一人ってわけじゃないぞ?」



 などと、菓子を頬張りながら言われても説得力がない。

 って言うか大精霊って何人もいるの?

 オレの中の精霊観が崩れていくんだが。



「はぁ……改めて聞くけど、ビーツ。お前分かってたのか?」

「う、うん。洞窟に入ってからなんとなく呼ばれてたし。でも他の魔物かなーとも思ってたんだけど、奥に行くにつれてはっきりしてきたから……けど、町の守り神様でしょ?それを従魔にって……その……」



 ビーツが困ってたのはこれか。召喚士にとっての従魔は言ってしまえば手駒のようなものだ。

 町を守護する水神様、ウンディーネを従魔にするのは、町から奪うに等しい。



「す、水神様!あああ主って!」



 やっと正気になったセレナ嬢が問いかける。そりゃ巫女としては必至にもなろう。

 しかし、当のウンディーネは「ああ、わし、従魔になる!」といい笑顔でサムズアップしている。

 サムズアップの文化あったのかよ。初めて知ったわ。



「心配するでない、セレナよ。何も住処をなくすつもりはないから、領海の守護は問題ない。もともとここから溢れた魔力を海に垂れ流してるだけじゃからの。従魔になったからとて港一帯に強めの魔物は近づけんじゃろ」

「そ、そうですか」



 ほっと一安心するセレナ嬢。

 でも弱めの魔物は近づけるんだな。普通逆だと思うんだけど。大精霊の魔力に弱い魔物が逃げて、強い魔物は耐えられる、とか。

 しかし話しを聞くにどうやら逆らしい。ウンディーネの魔力を強者は嫌がるのか。



「それに言っておったじゃろ。コーラルトレントが大発生していた、と」



 セレナ嬢が今日のことを説明していたのかな?



「どうやらここの魔力が海側だけでなく陸側……つまり洞窟にまで溢れてるようじゃ。海はまだ問題なさそうじゃが陸はわしの領域ではないからの。強い魔物はともかく、逆に弱い魔物が増えやすい環境が出来つつある。まぁ毎年気にしていたことではあるが、さすがに何百年ともなれば結界も限界のようじゃな」



 洞窟にあれほどの魔物が居たのは、ウンディーネの魔力の問題だったのか。

 しかし弱い魔物が増えやすい環境ってのは、領主の娘であるセレナにとっても由々しき事態だろう。



「で、わしが従魔になればここに籠る事はなく、時々外に出ることになるじゃろう。その分、ここの魔力は減るし、今のように過剰に溢れることもなかろう」

「そ、そうですか……水神様がそう仰るなら……」



 セレナに是非の判断はつかない。しかし水神であるウンディーネに意見するわけにもいかないのだろう。



「そういうわけで我が主よ。契約するか」



 そう、ビーツを見て嬉しそうに笑うウンディーネ。

 ビーツは未だに少し困った表情だ。



「えっと、確認するけど、従魔になってもこの町の海は守られるんだよね?」

「うむ、問題ない」

「で、洞窟の魔物が増えることもない、と」

「むしろ来年以降は減るじゃろうな」


「セレナさん……巫女様との関係は変わらない?奉納の儀は毎年行って大丈夫?」

「それはこちらからお願いしたいくらいじゃな。甘味が楽しみじゃし」



 やっぱ甘味目当てじゃねーか。

 なんかセレナがかわいそうになってきたわ。

 毎年、命からがら甘味を届けにくるとか。



「あの、セレナさん、そういうわけなんだけど、従魔にしていいかな?」

「えっ……私ですか」

「うん、やっぱセレナさんにとってウンディーネは神様なわけだし、僕が勝手に従魔にしちゃうのも……」



 問いかけられたセレナ嬢は少し思案する。

 やはり信仰すべき神が、一冒険者の従魔になるのは抵抗があるのだろう。



「従魔として呼び出される利点は、先ほど水神様が仰ってました。しかし外に出るというのは、それだけ危険に晒されるという事。先ほどの魔族も水神様を狙っていましたし……その大丈夫でしょうか。万が一、水神様になにかあれば町は……」



 当然の懸念だな。町の守護者がいなくなれば危うくなるのでは、と。

 それを受けてウンディーネが答える。



「問題あるまい。先も言ったが住処は残すし、わしも基本はここにおる。それに魔族が襲ってきたとしても話を聞く限り、わしの相手ではないな」



 まじかよ。

 いや、大精霊なんだから強いんだろうけど、あの魔族相手に余裕なのか?



「心配なら我が主の影に居る蛇にでも聞いてみればよかろう」

「そっか、オロチ、出てきて」



 オロチがビーツの影に隠れてるのが分かるのか。

 そして影からニュルンと出てくるオロチ。

 相変わらずの無表情だが、若干しかめっ面である。



「マスター、ここの魔力はきつい。はやく出ることをおすすめする」



 あー、オロチも強い魔物だからか。

 ウンディーネの魔力は強い魔物を避けるってのは本当なんだな。



「あ、ごめん。あの、ウンディーネがさっきの魔族より強いって本当?」

「……うん。たぶん余裕。あいしょう的にタマモにも勝てる。シュテンもやばい。わたしも水辺はきけん」



「「「えええええ!!!」」」


 驚いたのはオレとデュークとクロだ。三大妖とはちょくちょく自主練で戦ってるけど高すぎるハードルに上を見るのを諦めている現状である。

 三大妖より上の存在とか信じられない。いや、水辺じゃなけりゃオロチやシュテンが勝つのか?

 それにしたって同格ってことだろ。さすが大精霊だな。



「セレナ、大丈夫よ。ウンディーネが異次元の強さってのはよく分かったわ」



 クロはそう言ってセレナの肩を叩く。

 「そんなに……お姉さまがそこまで言うなんて……」とセレナは感心するが、三大妖の強さが分かっていないので、クロを基準にしているのだろう。

 ちなみにオロチはすぐに影に潜んだ。影に中のほうがまだマシらしい。



「分かりました。水神様、ではこれからもよろしくお願いいたします」

「うむ。では我が主よ、契約しようかの」

「うん、召喚石出すね」

「いや~何百年か千年か、生きてきて初めての従魔じゃからの!嬉しいもんじゃの!」



 テンションが高い。そしてスケールがでかい。

 契約自体はすぐに終わった。召喚石に魔物の魔力を登録するだけだからね。



「おおー!繋がっておるわ!これが従魔の絆か!すごいもんじゃの!」

「ビーツ、名前どうするの?」

「おおっ!わしの名前か!そうか!従魔には名前がつくんじゃったな!よろしく頼むぞ!」

「うーん」



 海の妖怪?水の妖怪?

 「海座頭?」「船幽霊?」「濡れ女?」「唐傘お化け?」「河童?」とビーツを無視して、三人で予想するが、どれもいまいちだな。



「住処をもって町を守護し、繁栄させるから―――座敷童か。マモリでどうかな」



 お守り様か。いいね。いいけど水関係ねえじゃん。



「うむ!マモリじゃな!よし!わしの名はマモリじゃ!」

「うん、よろしくね、マモリ」

「こちらこそな!我が主よ!」



 こうしてウンディーネのマモリが、ビーツの従魔となった。

 ビーツ、二十五体目の従魔である。



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