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大魔導士「ベギ〇ゴンって何属性ですか?」  作者: 藤原キリオ
ファンタスディスコ編
48/57

48:水神という存在



 ビーツが従魔たちを送還し、諸々が落ち着いた頃、セレナ嬢の解除が終わった。

 結界扉が光を放ち、カシャンと内部の閂が外れる。



「ふぅ、解除できました」

「ご苦労さま、セリナ。慌ただしく解除させちゃってごめんなさいね」

「いえ、お姉さま。大変な事態だったのは承知しています。お怪我がなくて何よりです」



 そう。あれほどの戦闘があったのに結局けが人は居ないんだよな。

 一番の被害はオレの魔力が底をついた事くらいだ。



「では、行って参ります。皆さんはここでお待ちください」



 結界扉の先は水神の住処だ。

 カンテラを持ったセレナ嬢は扉をくぐると、内側から閂をかけた。

 オレたちは入れないし、護衛として扉の前に待機しておく必要がある。



「セレナ嬢が水神様と接触したのを見計らって魔族が来る可能性もある。用心しとけよ」

「引き上げたの自体、陽動かもな」



 一応、みんなに声をかけておく。

 しかしガルゴルドが戻ってきたら、オレたちじゃ相手にならないって分かったからな。

 悔しいがビーツ任せになっちまう。



「ビーツ、その時は……って、ビーツ!聞いてるか!」



 ビーツは苦々しく困った様子で佇んでいた。

 なんか洞窟に入った時も変だったよな。



「えっ、あ、あぁ大丈夫です。えっと、すぐに呼ぶかもって、さっき言っておきました」

「……そうか。ならいいけど……」



 やっぱおかしい。

 何か抱え込んでいるなら、パーティーメンバーとして放っておくわけにもいくまい。

 護衛依頼が終わったらパーティー会議だな。



 そんな事を考えながら、探索魔法で崖の外を警戒する。

 ふと思ったが、フェリクスさんの……って言うかデイドのインビジブルって探索魔法に引っ掛かるのだろうか。

 姿は見えない、探索魔法も無理だったら、姿を現すまで把握できないって事じゃないか。

 ぶっちゃけ犯罪し放題だな。いや、さすがにそれはない。何かしらの制約なり探知方法があるはずだ。それは何か……。



 そう考えていると、結界扉が開く気配がする。

 セレナ嬢が入ってから、まだ十~十五分って所だ。早すぎないか?



 ギギギと開けた扉から顔を出したのは、やはりセレナだった。



「もう終わったの、セレナ?」



 そう、クロが近寄る。



「いえ、あの、水神様が……皆さんにも来て欲しいそうです」

「「「は?」」」

「はぁ……」



……

………



 結界扉を抜け、狭い階段をひたすら下る。



「今さらだけど私たちも入って大丈夫なの?」

「いえ、巫女以外は立ち入り禁止のはずです。少なくとも私はそう教わってきました」

「なのに水神様が呼んだと」

「はい。例年通り水神様に奉納を済ませたのですが



 『一緒に来てる者が居るじゃろ?その者呼んでくるのじゃ』



 ―――と」



 人語を介するのか。魔石があるんだから魔物だよな?

 神格化した魔物?もしくはただ崇められてるだけ?



「セレナ嬢、どうせ会うから聞きますけど、水神様って……」



 そこまで言って、通路の先が光っているのが見えた。

 もう外に抜けるらしい。



 暗闇の下り階段を過ぎた先は、海岸だった。ここまで一気に降りて来たのか。

 岩場の多い、極めて小さな入り江。

 しかし、そこいらの海岸とは全然違う。

 砂も岩も水も、コケや植物までもが輝き、聖地と言っても過言ではない美しさを出していた。



「すごいな……」



 思わずつぶやく。

 こんなに綺麗な水場は、地球上のどこを探しても見つからないだろう。

 ただ自然が豊かなだけでもなく、ただ風景として素晴らしいだけではない。

 口が開いている事にも気づかず、ただただ感動していた。




 そして、その景色の中、一人の少女に目が留まる。

 淡い水色のノースリーブのワンピース、透き通るような青く長い髪。

 波打ち際の岩場に座り……いや、胡坐を掻き、セレナ嬢が背負っていたリュックサックから何かを取り出し、もしゃもしゃと豪快に食べていた。

 あれが……水神様か?



 セレナに確認する前に声がかけられた。


「おおー!よく来たな!こっちじゃー!」


 少女はカップケーキのようなものを両手に持ちながら、ぶんぶんと手を振っている。

 神聖な空間と可憐な少女のイメージとのギャップを感じながら、オレたちはセレナに続いて、少女の元へと向かった。




 「ちょっと待っとれ」と手に持ったケーキを急いで平らげ、セレナが用意したのだろう紅茶を一気飲みすると「ふぅ」を息をつき、こちらを見た。



「すまなかったな。なんせ一年ぶりの甘味じゃから、楽しみにしておったんじゃ」



 奉納って甘味を届ける事だったのか?

 デザートデリバリーサービス(水神の巫女)だとでも?



「えっと、ご紹介しますと、こちらの方々は今回の護衛の『魔獣の聖刀』の皆さんです。そしてこちらが水神様です」



 セレナ嬢の紹介を受ける。

 やっぱこの少女が水神様なのか。

 オレたちは軽く会釈した。



「わしは神などではないと言ってるんじゃがの。まぁよい、ウンディーネじゃ。よろしく頼むぞ―――我が主よ」


「「「……は?」」」



 オレ・クロ・デュークが絶句した。セレナは「主」の所で絶句した。

 ビーツは頭を抱え「やっぱりか……」と苦笑いしていた。




…side:セレナ




 今年の『奉納の儀』は大丈夫。私は朝からそう意気込んでいました。

 去年は初めての『奉納の儀』という事もあり、普段は目にしない大量の魔物に怯え、慣れない結界扉の解除と水神様の対面と、心身ともにボロボロでした。



 しかし今年は同じ過ちは繰り返しません。

 何よりクローディアお姉さまが守って下さいます。

 お姉さまはとても同年とは思えないほど強く、美しく、まさに憧れの女性と言えるでしょう。

 出来ればこのままファンタスディスコ家で召し抱えて欲しい所です。と言うか、お父様にはすでにお願いしています。



 そんなお姉さまたちと共に水神の祠へと入りました。

 水神様への奉納品であるケーキやクッキー、砂糖菓子、紅茶セットを入れ、大きく膨れた背嚢を背負っていきます。

 こればかりは他人に持たせるわけにはいきません。巫女としての義務です。

 水神様に守られたこの町を治める領主家の御役目です。



 水神様は毎年、このお菓子を大変楽しみにしていらっしゃいます。

 見た目は少女なので町に入って買うことも出来ると思いますが「こんな菓子、町中で買えるわけないじゃろ」との事で、代々の巫女が持ち込む事になっています。

 確かに貴族御用達のお店のものですし、市井では買えないのかもしれません。

 そもそも水神様がお金を持っているのかも分かりませんが……。



 話しを戻しまして、お姉さまたち『魔獣の聖刀』の皆さんです。

 私は去年の護衛の金級冒険者の方々や、バルデスたちしか分からないので戦闘の事はよく分かりませんが、人並み外れているのは分かります。



 永遠に使い続けられるのでは、と思わせるほどの魔法。

 速く、強い攻撃。そして連携。

 何より冷静で、早い思考能力。

 とても同年とは思えません。よほど日頃から訓練し、戦闘に慣れているのでしょう。



 しかし、そんなお姉さまたちでも勝てない敵が現れました。魔族です。

 私は初めて魔族という者を見ました。

 全人類の敵対者と言われる魔族は、見るからに強そうで、体が固まるほど怖く、私は死を意識しました。

 何とか意識を保てたのはお姉さまがいてくれたおかげでしょう。

 五日前に見た巨大な蛇で恐怖心が慣れた……いえ、お姉さまのおかげです。



 結局、突如現れたアダマンタイト級冒険者の方に助けられ、魔族は早々に撤退。

 一安心かと思ったら今度は洞窟が崩落するかもしれないと、次から次へと事態は動きます。

 あれだけ厳重にしていた水神の祠が、こんなに易々と侵入を許し、崩落の危険があると……来年からは何か考えないといけないかもしれません。



 何はともあれ、無事に水神様にお会いする事が出来ました。

 一年ぶりにお会いする水神様は、変わらずに可憐な少女のようで、挨拶もそこそこに、私の荷物を受け取ると目を輝かせて食べ始めました。

 これだけ嬉しそうに食べて頂けると、ここまでお持ちした苦労が報われるというものです。



「もぐもぐ、何やら上で地鳴りがしておったの」



 私は魔族が現れたことをお話ししました。水神様の魔石を狙っていたこともです。

 水神様は魔族の事はあまり気にしていないご様子でした。むしろ私の無事を気遣って下さいました。

 そして『魔獣の聖刀』のみなさんを連れてくるよう言われました。

 巫女以外の者が水神様の住処に来ていいものかと確認しましたが「構わん構わん」との事で、皆さんをお連れしました。



「ウンディーネじゃ。よろしく頼むぞ―――我が主よ」



 今年の奉納の儀は大丈夫。

 そう意気込んでいた私に重なる衝撃の数々。

 最後に特大の衝撃が待っていたようです。


 ……えっ、水神様の主……って?



登場時にはツンツン貴族お嬢様だったのに書いてるうちに可哀想な娘になってきたセレナさん……。

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