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大魔導士「ベギ〇ゴンって何属性ですか?」  作者: 藤原キリオ
ファンタスディスコ編
47/57

47:忍び寄る魔の手(ガチ)



 完全に油断した。

 探索魔法は洞窟内の敵ばかりを気にして、洞窟の外まで見ていなかった。

 いくら断崖絶壁とは言え、空を飛べれば関係ない。警戒しておくべきだった。



「巫女とはお前だろう、小娘。さあ、さっさと扉を開けろ」



 セレナ嬢がビクンと跳ねる。すでにオレたちで彼女を取り囲んでいる。

 さて、どうする。

 魔族は人と敵対する者。こいつの態度からして友好的ではないだろう。確実に戦うはめになる。

 ただ情報は欲しい。



「扉を開けさせてどうするつもりだ?」



 浮遊しながらゆっくりと近づく魔族に問いかける。

 扉を開けさせるのが目的なら、セレナ嬢を殺すことはしないはずだ。

 魔族は鼻で笑いながら、上から目線でこう答える。



「なに、水神とやらに用があるだけよ。正確には水神の魔石に、だがな」

 


 「なっ」と声を上げたのはセレナ嬢だった。水神が何者かは知らないが、やはり魔石を持った存在なのだろう。そしてその魔石を欲するという事は殺すという事。水神の巫女としては許せる事ではない。


 そして、魔石を欲する魔族という事は、オレたちにも思い当たる節がある。



「モーブルディッツやバルトフェルトを知っているか?」



 魔族の目が訝し気なものに変わり、オレを見つめる。

 サタデーナイトの近隣にあるギャラン山、そこでトロールキングの魔石を肥大化するよう『育てて』いた魔族。

 その魔族は「モーブルディッツ様に仕えし四天王の一角、バルトフェルト」と名乗っていた。



「……お前らか?【最弱】の四天王を殺ったのは」

「【最弱】?」

「モーブルディッツのやつの事だ。十魔将【最弱】のモーブルディッツ。やつの四天王の何とかってやつが消えたって言ってたな。お前らなんだろ?」



 待て待て待て。情報が多すぎる。

 とりあえずモーブルディッツは【十魔将】と言われる存在。おそらく十人居るんだろう。で、【最弱】と言われている。

 バルトフェルトはその部下である【四天王】の一人。じゃあ何か?十魔将それぞれに四天王が居るとすれば、四天王は四十人!?多すぎだろ!



「さあな。しかしその口ぶりだと、あんたもモーブルディッツと同じ【十魔将】の一人か」


「ふっ、これから死ぬってのによく動く口だな。まあいい。俺は十魔将【最硬】のガルゴルドだ」



 やっぱり十魔将だった。

 最硬って事は防御力が自慢なんだろうか。

 ついでだから聞けるところまで聞いてしまいたい。



「魔石を欲する理由は?」


「必要だからに決まってんだろ。もう問答は終わりだ。さっさと死ね」



 これ以上は無理か。

 そう思ったと同時に、ガルゴルドの両手を中心に大気の魔力(ミスト)が収束していく。

 高められた魔力はガルゴルドの周りに空気の波が視認できるほど。

 高レベルの身体強化。これはヤバイ。



「デューク!セレナ嬢を頼む!ビーツも三人出せ!クロ、攻めるぞ!」

『了解!』



 相手はおそらく徒手空拳。近づかせるのはマズイ。

 オレの中で最速の魔法を撃つ。

 と言っても素養レベルの低いオレでは発動まで時間がかかるんだけども。そこは得意の魔力操作でカバーだ。



 右手にサンダーボール、左手にウィンドボール。合わせて同時に発射。

 クロはすでに烈風斬を放ち、ブーストで突貫している。

 烈風斬とオレの風雷弾が着弾する所で、ガルゴルドが右手を振るった。

 それだけで烈風斬と風雷弾が掻き消える。

 ノーダメージ。牽制にしかならない。



 驚く暇もなくクロが斬りかかる。ブーストからの抜刀居合斬り。


「はぁぁぁっ!!!」

「邪魔だ、ゴミが」


 ミスリルの刀での最速攻撃を左手一本で受ける。斬れもしない。

 目を見開くクロをそのまま左手で払い除ける。

 ダメージソースがない。

 オレに出来るのは三大妖の為の足止めくらいか。

 両手から氷魔法を発動。地面の水気を利用してのアイスストーム。



 しかし、発動する間もなかった。

 クロを押し退けたガルゴルドがこちらに突進を仕掛けてきた。

 三大妖にセレナ嬢の守りを任せ、デュークが前に出る。

 おそらくデュークなら数発は耐えられる。




 そう思ったがデュークと接触する事はなかった。

 ガキンという音と共にガルゴルドが空中に留まっている。



 ビーツか?と思い振り返るが、出したばかりの三大妖はセレナ嬢を守ってる。攻撃を仕掛けた様子はない。

 じゃあなぜ……ガルゴルドを再度見る。

 すると、ガルゴルドと相対した透明な何かが、徐々に姿を現した。

 それは翼の生えた獅子と、それにまたがり特大剣を振るう優男の姿。



「フェリクスさん!?」



 アダマンタイト級冒険者、怠惰のフェリクスだった。




「邪魔するぞ坊主たち。悪いな、寝過ごしちまって遅れたわ」



 目線を向けずにオレたちにそう言った。

 魔族と剣を交わしながらも、五日前に出会った時と変わらない、飄々とした態度だ。



「貴様か。最近うろちょろしているマンティコア使いは」

「うろちょろしてるのは、そっちだろ?魔族領と道が通ってないはずの王国になーんで居るかね。おかげで俺の仕事が増えるんだが」



 軽口を叩きながら、拳と特大剣をぶつけ合う。

 その速度、威力、魔力は並みではない。

 決して割り込むことなど出来ない。

 自分たちとの実力の差が歯がゆい。


 

 マンティコアのデイドに乗ったフェリクスさんの機動力が勝る。

 しかし特大剣の一撃を身体強化された両腕で防ぐ。

 ガルゴルドはバランスを崩されるものの、ダメージというわけでもない。

 特大剣の連撃を耐えつつ、殴りかかる魔力の拳。

 それも時に避けられ、時に剣で受けられ、フェリクスさんの技量の高さがよく分かる。

 拳と剣でありながらガキンガキンと鉱物で叩き合うような音が響く。



 ふと後ろを見ると、三大妖は嬉々とした表情で、戦いを眺めている。もっともオロチは無表情だからなんとなくだが。

 面白そうな獲物と見ているのか、強者として見ているのか。

 互角に見えて、フェリクスさんはオレたちに被害がでないように戦ってる。

 もっともセレナ嬢を殺せないガルゴルドもそれは同じかもしれない。


 そう考えると、三大妖の実力に近い人たちの戦いなのだろう。

 まぁ三大妖が三人揃えば確実に勝ちそうな気がするが。



 息もつかせぬ攻防が数分続いて、ガルゴルドが距離をとった。



「ふぅ、埒があかんな。あきらめるか」



 それは水神の魔石をあきらめると言う事。

 扉を開ける必要がなくなったという事。

 つまり――巫女を生かす必要がなくなったという事だ。



 ガルゴルドは拳を地面に思いきり殴りつけた。

 クレーターのような大きなヒビが広がる。

 岩壁をえぐるように作られた洞窟にダメージを与えるには十分な威力だった。


「なっ」


 驚くフェリクスさんを横目に


「じゃあな」



 そう言い残してガルゴルドが崖側へ飛び出した。

 ゴゴゴという音が洞窟内に広がる。

 まずい。このままだと洞窟ごと崩落する。

 オレは咄嗟に両手を地面につけ、ストーンウォールの要領で魔力を流す。

 ヒビを埋めなければ!



「うおおお!!!」

「アレク!いけるのか!?」

「多分無理!セレナ嬢!扉の先に避難は出来るか!?」

「け、結界を解くのに時間がかかります!すぐに始めます!」

「頼む!ビーツ!土魔法得意なやついるか!?」

「う、うん!ジョロ!」



 そう言って、慌てて探し取り出した召喚石からアラクネのジョロを出した。

 初めて見るけど完全に人型だな。白い髪と白い服。見た目は二十台の女性だ。多分、下半身が蜘蛛になるんだろう。



「お呼びでしょうか、ご主人様」



 そう言って優雅な礼をするジョロに、ビーツはオレと同じよう、土魔法で崩落を止めるよう指示をする。



「すまん、坊主たち!大丈夫か!」



 慌ててフェリクスさんが寄って来た。



「フェリクスさん!いざとなったらセレナ嬢を空に避難させてもらえますか!」

「お前らは!?」

「なんとかします!」

「まじかよ!」



 オレたちは最終手段としてビーツの従魔任せになるだろう。

 シュテンやタマモ、オロチに抱えられて崖から紐なしバンジーするとかな。

 飛べるやつが居ればいいけど、ブライトイーグルのバサンとかだとビーツ一人飛ばせるのが精一杯だろう。他に居るのかは知らん。


  

 そうして数分魔力を流し続けて、地割れの振動がなくなった。

 もうオレの魔力も空っぽだ。気絶寸前。

 今もセレナ嬢は結界扉の解除を行っている。やっぱ時間かかるのか。



「すげーな、お前ら。ほら、魔力回復薬使え」



 フェリクスさんがオレに回復薬のビンを渡してきた。

 ありがたく頂戴して、一気に飲み干す。

 うわっ初めて飲んだけどすごい効くな!まずいけど!値段が張るからって買わずにいたけど、やっぱ買っておくべきだな。まずいけど!



「ありがとうございます、フェリクスさん。助かりました」

「いや、迷惑かけたのは俺のほうだ。勝手にしゃしゃり出て危険に晒してんだから世話ねーぜ」



 そう言って頭をかく。



「あの魔族は結局、何なんです?」

「最近この辺りで魔族の目撃情報がけっこうあってな。んで、俺が依頼受けてたんだわ。この時期だから『水神奉納の儀』狙いかなーと思って張ってたわけ」

「あいつ、水神様の魔石狙いだったらしいです。十魔将のガルゴルドって名乗ってました」

「まじかよ。巫女様が扉開ける前で幸いだったな。開けてから襲われてたらヤバかった……いや、その頃には俺が追いついてたか」



 確かにそれはあるな。どう転んでも大丈夫そうだったけど、どう転んでも危ないは危ない。



「何はともあれ、お前らには迷惑かけた。今度機会があったらおごるわ」

「ははっ、期待しておきます」

「んじゃ、俺はさっきのやつ追うから。ギルドに報告は任せるわ」

「えっ」



 そう言い残し、マンティコアごと姿を消した。

 あの人、報告が面倒くさかっただけじゃないのか……?



アレクたちが町に来た時にフェリクスが透明化せずにうろついていたのは、この近辺に出没していた魔族への牽制の為。

奉納の儀にちょっかい出すんじゃねーぞ、と。

しかし無意味だった模様。

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