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大魔導士「ベギ〇ゴンって何属性ですか?」  作者: 藤原キリオ
ファンタスディスコ編
45/57

45:いざ水神の祠へ!



「お姉さま!遊びに来ましたわ!」



 朝一に宿の食堂にやって来たのは、領主の娘、セレナ嬢である。

 オレたちはパンをかじりながら、時間が止まったように凝視してしまった。

 なんでこの宿に居るって知ってんの?とクロに視線で問いかけても首を横に振るばかり。デュークとビーツも同じ。貴族の権力を無駄に使ったってことかい。



「三日後までお時間あると思いまして、私、町をご案内いたしますわ!」



 オレとデュークとビーツがクロを見る。

 お前に任せるから、と。



「えーっと、セレナ様?」

「セレナで結構ですわ!お姉さま!」

「あー……じゃあセレナ。私たちは訓練で町の外に出るのよ。悪いんだけど……」



「別にオレたちの事は気にしなくていいぞ、クロ」

「そうそう。三人でも狩りできるしな」

「クロさんは楽しんで来て下さい!」

「なっ!?」



 裏切りやがって!というクロの目をスルーしつつ、三人でそそくさと出立の準備をする。



「まぁ、お姉さま、皆さまのお許しが出たことですし、ご一緒いたしましょう!」

「えっ!ちょ!あんたら待ちなさいよ!」



 クロはセレナ嬢に引きずられるように、ファンタスディスコ家の馬車へと連れ込まれた。

 貴族少女のお守りとか、お姉さまは大変だな。同情するよ。

 そしてオレたち三人は淡々と訓練へと赴くのであった。




……

………



 結局、夕方まで探索し、様々な魔物と戦うことが出来たわけだが「あれ?一番戦闘訓練しないといけないのクロじゃね?」という事に気づき、途中からはビーツの魔物探しを手伝った。

 その際に初めて、ビーツがテイムする様子に遭遇できた。



「……あっ、呼ばれてる」



 と、電波ちゃんのような事を言い出し、デュークと二人で「うわっ」と若干引いたが、ビーツが走って向かった先にはロッククラブが居た。

 岩に擬態出来る一メートルほどの巨大蟹だ。



「君が呼んだんだね。僕はビーツ。よろしくね」



 そう話しかけながら、無警戒に近づき、すんなり召喚石に契約してしまった。

 召喚士が従魔をテイムする際は、実力差を見せる為、ある程度のダメージを与えてから契約する……と聞いていたが、ビーツに言わせれば「そんなのしたことないよ」との事。

 ビーツは近くに従魔になりそうな魔物が居れば分かるし、会えればそのまま契約できるらしい。

 そのセンサーみたいな能力と無血開城的な和解能力は、普通の召喚士にはないらしく、従魔の数も相まって、ビーツのチートっぷりがよく分かる。

 ちなみに、その話を聞いたモンスターじいさんは半狂乱だったらしい。



 余談だが、テイムしたロッククラブには『カニボー』と名付けていた。

 蟹坊主って妖怪がいるらしい。てっきり某配管工の新しい敵かと思ったんだが。




 しばらく部屋で暇しているとクロが帰って来た。

 よほど気疲れしたのだろうと思っていたら、結構晴れやかな顔だった。



「どうだった?セレナ嬢のお守りは」

「町を回ったのは少しだけよ。あとは衛兵団で訓練に参加させてもらったわ」



 どうやら一日中連れまわされるのを危惧したクロは機転を利かせて、衛兵団の訓練に参加したらしい。

 それならセレナ嬢も家の敷地内なわけだし、クロは修行が出来るのでウィンウィンというわけだ。

 団長のバルデスさんとも再度模擬戦をやったらしいが、さすがに速さに慣れたバルデスさんは強かったらしい。

 やっぱオレたちの戦いは初見殺しの戦法が多いからな。団長の面目躍如といったところだろう。



「で、明日も昼から参加させてもらうことになったわ」

「じゃあ明日は当初の予定通り、午前中はパーティー訓練か」

「今日で狩場のメドもついたしちょうどいいな」



 そんなわけで、午前は四人で探索し、午後は自由行動となった。



 翌日、海岸線の探索を終え、クロは領主館へ、デュークは図書館へと向かう。

 ビーツは従魔たちと戯れついでに広範囲での魔物探索。

 オレはやる事がないので、釣りをしながら魔力操作の練習をした。

 釣果は聞かないでほしい。あくまで練習のついでだから。



……

………



 そんな風に過ごして三日後、二の鐘が鳴る前にオレたち四人は領主館へと向かった。



「お待ちしておりましたわ、お姉さま方!今日はよろしくお願いいたします!」



 すでにセレナ嬢は門前に待ちかまえていた。



「セレナは一緒に祠に行けることを楽しみにしておってな。全く、あれほど怖がっていたのが嘘のようだ」



 デカルト伯爵も苦笑いである。



「今日はよろしく頼むぞ」

「はい。こちらこそよろしくお願いします。無事に護衛の任を果たします」

「うむ」



 そうしてセレナ嬢を加えた五人で馬車に乗り込む。

 領主館から水神の祠まで街中とは言え、そこはお貴族様だ。移動は馬車である。

 オレたちの馬車を挟むように二台の馬車が並ぶ。そこにはバルデスさんたち衛兵団が乗り込んでいる。彼らは水神の祠の入口で警戒の任に就くそうだ。あくまで水神の祠に入るのはセレナ嬢とオレたち四人だけとの事。



「ずいぶん大荷物ね、セレナ」



 馬車に揺られながらクロが気安く話しかける。

 セレナ嬢は冒険者が背負うような大きなリュックサックを持っていた。



「これは水神様に奉納するものなんです」

「へぇ。私たちが運びましょうか?伯爵令嬢が大荷物ってわけにもいかないでしょう」

「いえ。これは水神様の巫女である私の仕事です。きっと魔物も出ますし、お姉さま方は護衛に専念して頂ければ」



 荷物背負いながら戦うのも慣れてるけどな。

 まぁない方が動きやすいのも確かだし、お言葉に甘えておくか。



「ちなみに奉納する物って何?」

「ごめんなさい。それはお教えする事が出来ないのです」



 気にはなるが詮索はしまい。依頼人を詮索する冒険者ってのもあれだしな。

 って言うか、これ金級昇格試験だし。

 それにしちゃ依頼人に対して気安すぎる気がしないでもないが……ま、いまさらか。




 馬車は街の東端の海岸線へと着く。

 巨大な入り江とも言えるファンタスディスコの街。それを挟む丘陵。境は険しい岩壁となっており、その側面に鉄でできた扉があった。

 ここが水神の祠の入口らしい。



 馬車を横付けし、バルデスら衛兵団が警戒する中、馬車から降りる。

 当然、オレたちから降り、セレナ嬢をエスコートする形だ。エスコート役は言わなくても分かるだろう。

 リュックサックを背負ったセレナ嬢が、自ら扉の鍵を開錠する。

 ギギギと重い扉を開けると、中は真っ暗な洞窟だ。



「セレナお嬢様、カンテラです」

「ありがとう、バルデス」

「では『魔獣の聖刀』の皆さん、お嬢様をよろしくお願いします」

「分かりました。お任せください」



 バルデスさんたちと挨拶を交わし、重い扉を閉める。

 そして内鍵だ。これで外敵が衛兵団を打ち破って侵入する事はない。

 と言うか、例の謀反の件で、衛兵団そのものの侵入を警戒しているのだろう。

 バルデスさんたちもいい人なんだけど、なんかやるせないな。



「デューク、明かり頼む」

「了解」



 祠の中は狭い洞窟だ。真っ暗で、正直カンテラの明かりだけでは全然足らない。

 先頭を歩くデュークに光属性の生活魔法で、ずっと照らしてて貰おう。

 ちなみにフォーメーションは、先頭がデューク。クロ、セレナ、ビーツ。最後尾がオレだ。俺は探索魔法で、背後からの襲撃にも備える。



「セレナ、デュークが照らしてるから、カンテラ仕舞ってもいいわよ」

「えっ、ずっと光魔法を使い続けるつもりですか?」

「生活魔法ですから、さほど消費はないです。俺は戦闘時にあまり魔力使わないと思いますし、なんだったらアレクも居ます。明かりは気にしないで大丈夫です」

「そ、そうですか。やっぱりお姉さまのパーティーメンバーは皆さますごいですのね」



 どうやら生活魔法とは言え、使い続けるのは、普通は厳しいらしい。

 まぁ魔力の総量が四人とも人より多いってのもあるし、魔力操作で省エネしてるのが珍しいって事もある。

 オレとかクロの魔力操作は目立ってるけど、デュークもビーツもある程度は出来る。やっぱ転生前の魔法イメージとか、産まれた時から自我があるとかが有利に働いているんだろう。




 道は段々と広くなるものの、基本は上り坂と階段のオンパレードだった。

 暗闇登山みたいなもんだな。オレたちはサタデーナイトでも散々山登りしたから問題ないが、やはりセレナ嬢はきついっぽい。

 普段持たない荷物を背負って、長々と歩くことなんてないだろうし。



「はぁっはぁっ、こ、これでも歩けるように練習しましたのよ?」

「無理はしないでゆっくり行きましょう」

 


 そうしてしばらく上ると、先に光が見えた。

 そこはかなり開けた通路。天井はちょっとした鍾乳洞のように尖っており、右手の岩壁からはチロチロと水が流れ出しているせいで、地面もゴツゴツした岩の足場と水溜りばかりで足場が悪い。決してサンダルなんかで来ていい場所ではない。いや、むしろ水場だからサンダルが正義なのではないだろうか。


 通路が明るい原因は左側の壁がないからだ。

 所々に柱のように塞がっている箇所があるものの、基本的に壁はない。海がよく見える。こうして見ると結構な高さまで上って来たのだと把握できる。

 手すりなどあるはずもなく、通路に溜まった水はそのまま崖へと流れている。



 そんな自然が生み出した洞窟とも言うべき場所だが、オレたちが感動する事はない。

 なぜなら



「……ちょっと居すぎじゃね?」

「……ですね」

「……スタンピードかな?」



 一年間誰も入らなかった通路は魔物がひしめき合っていた。



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