40:港町に到着!
「はああっ!」
クロの一振りで、ブルーウルフが倒される。
「まだ慣れないわね」
「そうだな。見ていてぎこちないよ」
「踏み込みすぎて逆に躊躇する感じだな」
「だいぶ良くなったと思いますけど」
オレたちは王都からサガリの馬車で港町ファンタスディスコへと向かっていた。
途中にある村に寄ることはせず、野営をしながらの移動となる。
と言っても、サガリの馬車の速度は普通の馬車より断然速く、休みもほとんど必要としない為、昨日の昼過ぎに王都を出て、明日の夕方には着くだろうと思われる。
二泊三日の旅だな。
途中、魔物を見つければなるべくスルーせずに討伐している。
装備品が変わったので、その確認の為だ。
ビーツはほとんど変わっていないからいいとして、デュークは装備重量が重くなったので身体強化の魔法をかけながらの動きの確認。オレは杖腕輪の威力と魔力操作の確認をする。
そして、一番の問題がクロだった。
防具が変わったから動きの確認をするのもそうだし、アクセサリーで微妙に速度も上がっている。何より武器がショートソードから太刀に変わったのが大きい。
元より刀を意識して剣の練習をしていたから、両刃から片刃になったのは問題ない。刀身が長くなり、それでいて軽くなったのが痛い。
踏み込み位置も変わるし、振った感触も違うから、次の動作に行くまでに若干のラグがある。
これはもう完全に慣れるしかない、という事で、道中の魔物討伐はなるべくクロにやらせている。
「念願の刀だってのに振り回されてるだけね」
「今はしょうがないだろ。勝手が変わるのは当然だ」
「こんなんじゃ九頭〇閃なんて夢のまた夢だわ」
お前、九〇龍閃狙ってたのかよ。初めて知ったよ。
いずれ天翔〇閃でも放つつもりか?
「とりあえずつばめ返しくらい出来るようにならないと……」
「お前は小次郎に謝れ」
「九頭〇閃の踏み台じゃないぞ。つばめ返しは」
「かっこいいですよね!つばめ返し!」
そんなことを言いながら、新武器を試す。
ぶつくさ言いながらも楽しそうなのは、やはり念願の刀で嬉しいのだろう。
こうなると一日中でも振ってそうだ。
ちなみに夜警の際にビーツの三大妖を呼んだが、三人ともえらい上機嫌で、新装備を自慢してきた。
あいつらのビーツ株上昇が留まる事を知らない。
うちはハーレムとか受け付けてないんで、余所でやってくれませんかね?
どうでもいい話だが、途中にあった村は『プチョヘンザ村』という。
本当にどうでもいい。
…
……
………
「そういや、水神様って何なの?有名?」
「存在自体は有名だが、それが何かと言われるとな……」
「実在する神様って感じでしょうかね」
種族としての神様か?
それとも神様扱いされている魔物とかか?
「海神リヴァイアサンとか?」
「さすがにないだろ。居てもシーサーペントじゃないか?」
「海と言ったらクラーケンでしょ!で、私の水着+触手イベントが発生するわ!」
「ねーよ」
「そもそも大きな魔物が港に居たら、いくら水神様の守りがあったって、商船も出入りできないだろうし、人魚族とか住めなそうだしな」
「人魚族?人魚がいるのか?」
「アレクくん、知らないこと多いんですね……」
なんかすっかり一般常識知らないキャラ扱いされてんな。
失敬な。
「人魚族はあまり長いこと陸上に居られないから海の中に住んでるんだ。ファンタスディスコの港には人魚族の居住区があったはずだ」
「えっ、人魚が陸上に?歩くの?二股?」
「あー、アレクが思ってる人魚じゃないわよ。マーメイドチックなものを想像してるとガッカリするわよ」
下半身が魚で貝殻ブラじゃないのか……。
まさか魚人タイプ?ひょっとして魚から足が生えたタ〇ノくんタイプ?もしくは人間の首から上が魚のアジョ〇トタイプ?それは嫌だなぁ。
…
……
………
王都を出て三日目、港町ファンタスディスコに到着した。
サガリの馬車は見られると騒動になりそうなので、離れたところで消している。
遠目で見るファンタスディスコは四大都市の一つという事もあり、城壁もしっかりしている。
丘陵に挟まれた盆地、その海岸線に出来た町なのだろう。大きな入り江のような港町と言ってもいい。
時刻は夕方という事もあり、入口の門には多少の列が出来ている。
どこかの村や町から朝に出て、夕方に着くという人も多いのだろう。
港町だからか、商人の馬車もそこそこ多い。
オレたち四人も同じように並び、やがて門の衛士の元へと順番が回ってくる。
「ぎ、銀級冒険者!?」
やはり見た目が子供だから驚かれる。
そう思われるのは承知しているし慣れてもいるが、これで金級にでもなったらどうなるのか、ちょっと興味深い。
それとやっぱビーツはアダマンタイト級にならなくて正解かもしれないな。
どんな騒ぎになるか分かったものではない。
門をくぐると潮の香が吹き抜ける。
元日本人だからか、どこか落ち着く雰囲気だ。
やはり朝の方が賑わっているのか、人通りも多くはない。王都と比べるのもなんだが。
おのぼりさんの様に大通りを見て歩く。
途中で人魚族の人も見かけた。
青く所々に鱗が見える肌と、耳にエラ。これはあれだな。ドラ〇エ10のウェンディっぽいな。
アジ〇ットじゃなくて良かった。
しばらくそうして冒険者ギルドを目指していた。とりあえず着いた報告は入れておいたほうがいい。
それから宿屋を探すつもりだ。
だったのだが……。
通りの向こうから、大きなライオンがノッシノッシと歩いてくる。
背中には蝙蝠のような翼、尻尾は蛇。
「マンティコア!?」
町中で現れた魔物に思わず身構えるが、首には従魔証がかかっている。
よく見れば、背中に寝そべっている人間がいた。
「あれは、まさか……!」
「知っているのかデューク!」
「聞いたことがある。この国には三人の現役アダマンタイト級冒険者パーティーが居る。そのうちの一人はソロのアダマンタイト級でマンティコアを従魔にしていると」
ソロの冒険者でアダマンタイト級?
パーティーは五人~六人が多く、それが基本とも言われている。
ソロも居ない事もないが、臨時でパーティーを組むのがほとんど。
アダマンタイト級ってことは臨時パーティーどうこうより個人の力が飛びぬけているのだろう。
もしくは従魔のマンティコアが強いのか……。
そうこうしているうちに、マンティコアが近くまでやって来た。
通り過ぎると思ったが、ビーツのほうに顔を向けると、止まってしまった。
「えっ」と思い、ビーツを見てみる。
「マンティコア……!かっこいい……!」
感動しておる。こやつめ。
今にも「よーしよしよし」って撫でそうだ。
「ん?どーした、デイド……おっお前らは」
デイドと呼ばれたマンティコアの背中にいた人間の男が起き上がる。
しまっているのか武器や防具を装備しているようには見えない。普通のやさ男だ。
寝起きのように半目で頭を掻き、だいぶ気だるそうだ。
「あー、なんつったか、確か魔獣のなんとか……」
「あっ、『魔獣の聖刀』です。よくご存じですね」
「まーなー。お前らが王都に来た時には、俺も王都に居たし。いきなり注目集めてたしなー。スレイプニルやらミスリルゴーレムやら」
この人もあの時、王都にいたのか。
マンティコアなんて居れば目立ちそうなのにな。
「失礼ですが、『怠惰』のフェリクスさんですか?」
「おーよ」
デュークが名前を確認してくれた。
で、『怠惰』って何、その二つ名!七つの大罪!?オレのジャーニ心が反応しちまうぜ!
他の六罪は居るんですかね!?
よし、あとでデュークに確認しよう。
他の大罪なんていません(ネタバレ)




