04:六属性魔法使い《セクストゥープル》
チッタおばばの家で、お茶を飲みながら、いろいろと聞かれた。
「なるほど、魔力の把握から魔力操作、発動まで全部ひとりで考えたのかい。あきれたもんだ。どうりでチグハグすぎると思ったんだ」
専門家から見たらチグハグなのか、オレの魔法は……。
「そもそも生活魔法と攻撃魔法は根本的に違うんだよ。生活魔法は一定年齢を越して、その属性に素養があれば誰だって使える。空気中に含まれる魔力……ミストって言うんだが、それを意識する必要もないんだからね。アレクと言ったね?あんた、さっきはミストも意識してただろう?」
魔素ではない、ミストよ。
一定年齢ってのはどうなんだろう。魔力とかを理解できる年齢ってことなのか、総魔力量の問題なのか。
「あんたには魔法の才能がある。それは柔軟な発想と集中力、それに魔力操作の器用さだね。あぁ魔力の多さもあるか。悪いところは基本的な知識がまるでない事と、素養レベルがおそらく低いって事だね」
素養レベル?
「素養レベルってのは五歳になって神託の儀を受ければ分かるよ。それぞれの属性にどれくらい素養があるのかって調べられるんだ。あたしじゃ分からないから二年後を楽しみにしときな」
二年後……五歳で『神託の儀』ってのがあると。
「まぁとにかく、デービスは正しかったね。面倒だが確かにあたしが教えたほうがいい。三歳にしてこれなら外で遊ばせるのも怖いだろうしね。ハッハッハ。
とりあえず、今、アレクが理解している魔法について、話してもらうよ?まずは間違い探しからだ。それから座学。ちゃんとした知識をもってもらう。
やれやれ、この年で師匠面するはめになるとはまいったねぇ。帰ったらデービスに言っときな、今度酒もってこいってね」
面倒と言いながら、どこか嬉しそうにおばばは言った。やっぱりいい人だ。
しかし、ちょっと話しただけで知らない単語がバシバシ出てくる。
勉強は苦手だが、かなり楽しみだ。
そして、現状で使える属性の話になった。
「魔法は六属性だ。火水風土光闇。他にも召喚魔法ってのがあるが、かなり特殊な才能だしあたしも使えないから省くよ」
召喚魔法あるのかよ!イフリート呼びてえええ!
「風・火・水は見せてもらった。一応聞くが、アレクが使えるのは三属性でいいかい?」
「あと光は……ほら。たぶんこれ光属性かなーと。」
指先に光球を作り出す。
「うおっ!まぶしい!部屋で出すんじゃないって言っただろうが!」
「あっごめんなさい」
魔力の供給を止め、光を霧散させる。
「はぁ、確かにそれは光属性のライトボールだね。四属性も使えるのかい……」
「土と闇はイメージできなかったんだ。まりょくとミストだっけ?それをあわせて、土とか砂とか『こけいぶつ』をつくるってどうやるのか……。
いえのにわで、土にてをあてて、まりょくながしたらちょっとはうごいたから、たぶんつかえるんだろうけど……」
「ん?庭の土を動かしたのかい?そりゃ土属性の素養もあるってことさね。アースボールが撃てないってだけだろ?」
「あ、そようはあるんだ」
「生活魔法レベルの土属性魔法でも、素養がないと出来ないからね」
「あぁそういってたね。そういえば。じゃあ闇魔法は?」
「普通は光属性の素養があれば、闇属性は持ってない。他の属性と違って、この二つは相反してるからね。ただ極稀に光も闇も持ってる奴がいる。アレクの規格外っぷりを見るに、闇の素養を持っていても、もう驚かないよ」
「きかくがいって……」
「ハッハッハ。こんだけ魔法が使えて、喋りもしっかりしてるんだ。とっくに成人してたっておかしくないよ」
ぎくっ
「まぁ闇属性は、幸いにもあたしが使える。あとで見せるからちょっと試してみな」
「ほんと!? やった!」
…
……
………
それからほとんど毎日、おばばの家に通った。家でも自主練し、魔力を消費しきって寝るというのを繰り返した。
闇魔法については何日か試した結果、ダークボールが作れた。
六属性コンプリートってことで、その日ははしゃいだ。
でも、おばばは超驚いていた。驚かないって言ったのに……。
「いや、本当に出来ちまうとは……。まさかこの目で六属性魔法使いに会えるとはねぇ。あたしだって四属性魔法使いだし、見たことあるのは五属性魔法使いまでだ」
おばばは火と光が使えないらしい。
だからお茶沸かす時に、チャッ○マンみたいな魔道具使ってたのか。
「いや、これは逆にまずいかもしれないねぇ……利用されちまう。神託の時にどうするか……あのじいさんにも出張らせるかねぇ」
「ん?どうしたの?ブツブツいって」
「あぁ何でもないさね。近々デービスとリリーナに会いに行くと言っておいてくれ」
「うちに?まぁわかったけど……」
……side:チッタ
「六属性!? アレクってば天才じゃない!」
「すごいな!さすが俺らの子だ!」
アレクが外で自主練しているのを見計らって、デービスとリリーナを訪れたんだが……このボケ親どもが!
「何言ってんだい!確かにすごい事だが、世界的に稀なことなんだよ!どんなやつに目をつけられるか分かったもんじゃない!どれだけ大事か分かってんのかい!」
「うぐっ……! そ、それもそうか。一概に喜んでもいられん」
「そ、そうね。言われてみれば……」
「王宮に見つかるならまだマシさ。あの子が王宮勤めに励むとは思えないがね。かと言って、村で農家として暮らすってのはもっと無理だろうさ。そんなタマじゃない」
「となると、魔法使いの道としては冒険者……か?」
「だろうね。まぁ魔法ギルドって手もあるが、権力絡みの事も考えれば、冒険者のほうが無難かね」
「そんな……アレクが出て行ってしまうなんて……」
「神託の儀がある以上、完全に六属性を隠し通すのは無理だ。いずれ噂は広まるだろう。
あたしはその時の為に、なるべくアレクを鍛えたいと思っている。将来の選択肢を増やすためにもね。あのじいさんにも話を通しておこうと思っているよ」
「じいさん? ……あぁ、だから冒険者か」
「もっともアレク自身がどうしたいか。将来どう生きたいか、それによって変わるがね」
「アレク、まだ三歳ですよ?もう将来のこと……ですか?」
「あんだけしっかりしてんだ。将来のビジョンくらい決められるさね。将来を決めるのはアレク自身だが選択肢を教えておくのはあんたら親の仕事だよ!分かったね!」
「お、おう!」
「は、はい!」
はぁ、まったく世話の焼けるやつらだ。子を産む年になっても、ガキっぽさが抜けやしない。
しかし、問題はアレクだ。
あの子はちゃんと見てないと、間違った方向に勝手にどんどん進んじまう。
あたしも何人も弟子をとってきたが、おそらく最後になるであろう弟子が、こんな問題児だとはねぇ。今までの子たちが可愛く見えるってもんだ。
アレクには人一倍の才能がある。それに伴って学ぶことも多い。あたしが教える量も人一倍になるだろう。
やれやれ、老体に働かせるねぇ。
……でもそれが楽しいと感じるってことは、あたしもガキっぽいって事かね。




