39:装備一新
「『大地の力よ、強靭なる力よ、我が身と一つになりて顕現せよ。防壁・結合・硬化。レッツ、バス○マン』」
魔法ギルドの中庭にて、職員立ち合いの元、風呂魔法の実演をしている。
なかなか好評だ。普通のアース・ウォールより強度を高めている為、ストーン・ウォールほど硬くはないものの、実用性・研究性に優れているとの事。
また、土があれば出来るから、冒険者でなくとも素養があれば街中でも使えるだろう。風呂なしの宿屋の中庭に風呂が出来るかもしれない。
そう考えれば需要は増える。
ちなみに『レッツ』は言う必要が全くない。言いたいから言っているだけだ。
「では、こちらのスクロールを作成、販売致します。書類に記載されていた通り、売り上げの三割がアレキサンダー・アルツ様へ支払われます。当ギルドに口座を開設しましたので受け取りの際は受付までお越し下さい」
「分かりました。よろしくお願いします」
まあ、最初だし物は試しだ。売れずとも問題なし。
暇なときにでも様子を見に来よう。
…
……
………
翌日、朝からクロのテンションが異常に高い。と言うかうざい。
朝食をとり、すぐ『ンノーネルの鍛冶屋』へと行くはめになった。
朝一で行って出来てるものなのか。まぁダメならダメで時間を潰そう。
「おお、来たか。待っておったぞ」
出来ていたらしい。待っていたらしい。
ンノーネルさんの目の下にクマがすごい。
どんだけ打ち込んだのか。ありがたい話しだが。
「まずはクローディアの嬢ちゃんからじゃ」
そう言って、鞘に入った刀を取り出す。
白っぽい鞘は長さが一メートルちょっと。反りはあまりないようだ。
そこから鍔と柄が出る。柄糸は赤いもので編み込まれている。
「おおお……」
クロが恐る恐る受け取り、鞘から刀身を覗かせる。
白い。日本刀の銀の輝きを超える、白い輝き。
刃文は直刃。色と刃文から、静かで澄み切った、なのに武器としての鋭さを併せ持った印象を受ける。
クロはもちろん、オレたち三人も魅入って言葉を失った。
「いい出来じゃろ?ミスリルも使わせてもらったからな。その強度に飽かせて刀身は薄く、鋭くさせた。その長さでも軽いじゃろ?」
「……ものすごく軽いわ。使ってたショートソードより軽い」
相変わらず刀身に魅入られながらクロが答える。
ショートソードより長いのに軽いのか。
「柄頭を見てみろ。魔石が埋まってるじゃろ?お前さんは風魔法を多用するから、その補助用に仕込んでおいた。エア・ホークの魔石じゃから風とも相性がいい」
風魔法はクロの剣技の生命線だ。それを補ってくれるのはありがたい。
この刀は完全にクロ仕様になっているのか。
「銘は嬢ちゃんが付けてくれ。自信作だからいい銘を頼むぞ」
ンノーネルさんが付けるんじゃないのか。
クロは刀身から目を離さず、少し間を置いて答えた。
「…………花鳥風月」
「かちょうふうげつ?」
「ええ。花のように美しく、鳥のように速く、風のように鋭く、月のように静か。これは『花鳥風月』ね」
なるほど。クロの言いたいことは分かる。自然の美しさを備えた刀はもはや風流で雅だ。
クロも大概ロマンチストだな。
「なるほど。聞いたことない言葉じゃがいい銘じゃな。よし、ではこの花鳥風月はクローディアの嬢ちゃんのものだ。大事にしてくれ」
「ありがとうございます。最高の刀です、ンノーネルさん」
続いて、シュテンの刀だが、中庭に来てくれと言う。
ビーツがシュテンを召喚し、五人で中庭へと向かう。
中庭に出てすぐに分かった。木の台の上に、巨大な刀(?)が置いてある。これは店内には置けない。
「すまんが、わし一人では持てないんじゃ。この場で説明するぞ」
持てないのか。見るからに重そうだしな。
刀と言っていいのか分からないその物体は、鞘もなく、刀身は二メートル近い。クロの花鳥風月と同じく白いのはミスリルだろう。
厚みが尋常じゃないほどにあり、刃も申し訳程度に鋭い程度。
通常の日本刀の断面を鋭利な二等辺三角形だとすれば、これは正五角形に近い。
そこから伸びる鍔と柄。柄糸はクロと同じく赤い。シュテンの色に沿っている。
しかし柄の長さも六十センチはあるのか、かなり長い。全長で二メートル半はありそうだ。
「これを刀と呼んでいいのか分からんが、我ながらとんでもない武器を作ったものだと思っておる。刀特有の切れ味や取り回しの良さを考えず、折れず・曲がらず・強くを
極端にした。貰ったミスリルだけでは不安だったから、心鉄には手持ちのアダマンタイトも使ったわい。これ以上、強度を増すのはわしには無理じゃ」
アダマンタイトまで使ったのか。
こりゃとんでもない武器だな。
「シュテン、持てる?」
「はっ」
ビーツの言葉にシュテンが歩み寄る。
何気なくひょいと片手で持ち上げると「おおっ」と歓声が出た。
「これを片手で持ち上げるのか!さすがじゃのう!いや、多少不安じゃったが良かったわい!」
「ちょっと振ってみなよ、シュテン。取り回しを確認しよう」
「はっ」
片手から両手に持ち替え、ブオンブオンと振り回す。あの重量感のものをこんな速度で振れるのか。離れていても風圧が来る。
シュテンは時々片手に持ち替えながら、戦いの型を確かめた。
「これはいいものです。長物なのに重心のバランスがいい。いつもの大剣より力が乗りやすく、ぶれにくいです」
シュテンの言葉にンノーネルさんが安堵の息を吐いた。
自分では振れないから試せないもんな。そう考えると、それでもシュテンが納得するだけのものを作ったンノーネルさんがすごい。
「鋭くもないし、切れ味も重視してないから鞘は作っておん。抜き身で構わんか?」
「ええ、大丈夫でしょう。最悪、布で巻くことも出来そうです」
「うむ、そうじゃな。で、銘はどうする?」
シュテンはビーツを見る。
決定権はビーツにあるのだろう。
意図を酌んだビーツが「うーん」と悩み、やがて答えた。
「……『斬竜刀・鬼炎』ってのは?」
ビーツさん、やっぱりジャーニ病っすね。
まあ、フレア・オーガ・クイーンだから、シュテン用の刀って感じだけどな。
「斬竜刀か。確かに竜も叩き斬れそうじゃのお!はっはっは!」
「鬼炎ですか。ありがとうございます、主殿」
店内に戻り会計をする。
ンノーネルさんは、アダマンタイトは勝手に使っただけだし、何より満足のいく仕事ができたと少ない賃金を要求してきたが、さすがに悪いのでクロの分をパーティー資金から、シュテンの分をビーツが出した。相場が分からなかったが、それでも多分安くしてくれたのだろう。
ついでにクロは腰に穿く為のベルトと、手入れ用の砥石も購入。
改めて感謝をし、店を出る。
クロとシュテンはウキウキで、早く試してみたい雰囲気が半端ない。
シュテンは送還で戻したが、クロはもうちょっと我慢してもらおう。
…
……
………
『ンノーネルの鍛冶屋』から『ンドラの鍛冶屋』へと歩く。
大通りは相変わらず人が多い。二十日前でこれだから、建国祭の時はどうなるんだろう。
歩くのも困難になるのだろうか。
そうこうしているうちに冒険者ギルドを通り過ぎ、『ンドラの鍛冶屋』へとやって来た。
「おっ、坊主たちか。ものは仕上がっとるぞい」
ンドラさんはにこやかに、ンフィールも居るが疲れた顔をしている。
あれだけの量を発注したのだ、一日、二日で作ったんじゃ疲れもするだろう。
「で、お前さんの杖っつーか腕輪なんじゃがな、こんな感じじゃ」
「おおっ」
木で作られた腕輪は長さが十センチほどの円筒。半分がパカッと開き、手首に納めるとしっかりはまる。
腕輪の中央にはアクセサリーにしては大きい魔石がはまっていた。
「魔石はあとで魔法陣を掘るんじゃろ?だから魔石もここの留め金で外れるようになっておる。ちなみに木材も魔石もトレントにしておいた」
なるほど。魔石の付け替えも出来るのか。
今後、いい感じの魔石があれば取り換えるのもいいかもしれない。
トレントの魔石がどんなもんか、使ってみないと分からないけどな。
あとはそれぞれ装備を身に着け、フィッティングしていく。
細かい修正箇所は、その場でンドラさんに直してもらう。
そうして整えた装備がこちらである。
【大魔導士】アレキサンダー・アルツ(魔法使い)
武器:トレントの杖腕輪×2(New!)
防具:精霊のローブ(チッタのお下がり)
ミスリルの足甲(New!)
サンダル(こだわり)
【百鬼夜行】ビーツ・ボーエン(召喚士)
武器:竜皮の鞭(シュタインズのお下がり)
ヴォールス特製ハンドアクス(サブウェポン)
防具:ドラゴンローブ(シュタインズのお下がり)
ミスリルの腕甲(New!)
トロール・キングのブーツ(New!)
【陣風】クローディア・チャイリプス(刀剣士)
武器:花鳥風月(New!)
防具:トロール・キングの軽装鎧(New!)
トロール・キングのブーツ(New!)
ルビーの指輪(New!攻撃力微上昇)
エメラルドの指輪(New!速度微上昇)
【聖典】デューク・ドラグライト(回復術士+盾戦士)
武器:鋼のメイス
防具:鋼の中盾
ミスリルプレート(New!)
ミスリルの腕甲(New!)
ミスリルの足甲(New!)
やっと冒険者らしくなってきたという所か。
いや、ミスリルとか使ってる時点で中級者から上級者装備なのかもしれない。
所々にンドラさんが提供してくれた素材が使われており、器用に防具の形にしてくれている。
色もそれぞれミスリルの白やトロールの皮のほかに、オレは緑、ビーツは青、クロは赤、デュークは黄色が、所々に入っている。
細かい仕事ですね~。いい仕事ですね~。
「で、お代なんじゃがな、こないだもらったミスリルやらトロール・キングの素材も余っておる。それを売ってくれればチャラでいいぞ」
「えっ、これだけ作ってもらってそれはダメでしょう」
「いやいや、お前らには礼も兼ねてるんじゃ。これ以上はもらえん。あっ腕輪のアイデアはもらうがな!がははは!」
結局、言葉に甘えることになってしまった。
今度来る時は、ちゃんと客として来よう。
よし、装備も整ったことだし、このまま金級昇格試験の依頼に向かうとしよう。
いざ!港町ファンタスディスコへ!




