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大魔導士「ベギ〇ゴンって何属性ですか?」  作者: 藤原キリオ
シェケナベイベー編
37/57

37:ギルマスと報酬やら試験やらの話



 翌日、冒険者ギルドへと足を運ぶ。

 金級への昇格試験についてギルドマスターを訪ねる為だ。

 受付でその旨を伝えると、二階の執務室へと案内された。



 受付嬢さん曰く、昇格試験でギルドマスターが直々に説明するのは極めて稀らしい。

 ミスリル級やアダマンタイト級ならまだしも、金級昇格でギルドマスターが直に関わる事はまずないそうだ。

 まあ、オレたちの場合、経緯が経緯だし、鉱山調査の依頼やら盗賊団の報酬やら色々重なっているからだろうけど。



「おお、来たか。そこに座れ」



 書類に目を通していた金髪のエルフの女性。ギルドマスターがソファーへと着席を促す。

 オレたち四人は礼儀正しく着席した。



「さて、お前らには何から話すべきか……鉱山調査からいこうか」



 そう切り出した。鉱山調査の依頼は鍛冶ギルドから冒険者ギルドへの依頼であり、内容は『ミスリルゴーレム一体の討伐及び鉱山内調査』だった。

 しかし蓋を開ければミスリルゴーレムは五体居て、鍛冶ギルドの職員である鉱山の管理人さんが証人となっている。

 ギルドマスターは「五体とか話し違うじゃねーか」と鍛冶ギルドへ報酬の上乗せ要求に行ったわけだ。



「元々の依頼報酬が白金貨一枚(約百万円)のところ、上乗せ含めて白金貨六枚(約六百万円)となった」

「ええっ!多くないですか!?」

「そりゃそうだろう。元々がミスリル級パーティーへの依頼だったんだ。それがミスリルゴーレム五体となると、ミスリル級を一組だけでは普通は無理だ。ミスリル級が複数かアダマンタイト級相当の依頼料となる。まぁそれに比べれば安いがな。調査が終わってからのクレームの上に、素材もこちらで独占したからな。やや値切られた格好だ」



 値切られてこれかよ……。ミスリルゴーレムの素材売却も含めると一財産だぞ。

 まあ素材のほうが高かったんだが。ミスリルゴーレム恐るべし。



「それと、チアーゴ盗賊団の討伐だが、これも結果が出た。衛兵が早くに動いてくれたみたいでな。まあチアーゴ盗賊団は悪名高かったから、これ幸いと動いたんだろう。で、その報酬がこちらも白金貨六枚(約六百万円)となった」

「多っ!」

「アジトに多少溜めこんでたみたいだな。それと装備品の売却に、盗賊団全員の奴隷売却。手数料等を引いたものが報酬となる。しかし私が思ってたよりも少ないぞ?おそらく飲み食いして手元にはあまり残っていなかったのだろう」

「そ、そうですか」



 まあ考えてみれば少ないのか?二十三人分の財産とか全部でってことだろ?

 ついでに解決した討伐だから報酬も多く感じたが、そう考えると少ないとも思える。

 いずれにせよ臨時報酬としては多すぎるから良しとしよう。



「これらの報酬は受付で受け取ってくれ」

「分かりました。ありがとうございます」

「うむ。さて……それで金級への昇格に関してだな」



 いよいよ本題だ。

 いきなり高額報酬の話しで慌ててしまったが、この為に来たのだ。



「まずお前ら『魔獣の聖刀』は経験がなさ過ぎる。冒険者登録してから一月で金級というのも例がなくはないが、異例と言っていいだろう。本来はもっと吟味すべきだ」



 そりゃそうだ。ぐうの音も出ない。



「しかし、セルティック……あーサタデーナイトのギルマスな。そのセルティックからの手紙にあるお前らの手腕と、鉱山調査・盗賊団討伐の実績を直に見た結果、金級の力はあると私は見ている。足りない所は山ほどあるが、単純な力量ならば金級、もしくはそれ以上という事だ」



 おお、高評価!



「それと……ビーツ・ボーエン、お前に確認したい」

「は、はいっ!何でしょう……」



 急に呼ばれたビーツがビクンッと背筋を伸ばし返事をする。



「セルティックの手紙にはお前がシュタインズ様の弟子であると書いてあった。事実か?」

「は、はい」

「ふむ。それと従魔登録を確認したが、スレイプニルの他にダーク・サーペント、ファイブ・テイル、フレア・オーガ・クイーンとなっている。スレイプニルはともかく他の三体を従魔にするなど聞いたことない話しだ。はっきり言って強すぎる。これに相違は?」

「え、えっと……」



 ビーツがこちらを見る。相違はある。今出た四体以外にもわんさか従魔にしているからだ。

 それを言うべきか迷っているのだろう。

 ギルドマスターは国中のギルドをまとめる王都のギルドマスターだ。話しておいた方が後々問題にならないかもしれない。



「ギルドマスター、内密にして欲しいんですが」

「ん?どうしたアレキサンダー・アルツ」

「ビーツにはその他にも従魔がいます。でもそれを公言してしまうと目立ちすぎて問題になり兼ねません。だから内密にして欲しいんです」



 モンスターじいさんもそれを懸念して「従魔登録は三体で」と言ったのだろう。



「ふむ、すでに四体だからこの時点で前例なしだがな。おまけにその四体の陣容も目立たないほうが難しいものだ。ちなみに私も召喚士だが、ビーツ・ボーエンのような召喚士には出会った事も聞いた事もない。だからこそ興味が湧く。だからこそその異常さが目立つ」


「ギルドマスターは召喚士なのですか?」

「ああ、私もシュタインズ様の弟子だ。だからビーツ・ボーエンの姉弟子となるな」



 おー、これは意外だ。

 まあモンスターじいさんは召喚士界の重鎮らしいから、そりゃビーツ以外にも弟子はとるか。



「ちなみに私の前のギルドマスターがシュタインズ様だ。シュタインズ様が退職してから私がここを取り仕切っている」

「「「「えっ!?」」」」



 じいさん、元王都のギルマスかよ!

 どうりで偉そうな感じだったんだ。セルティックさんも様付けだったしな。



「そんなわけでビーツ・ボーエンには少なからず関わりがある。内密にと言うならば内密にしよう。で、他の従魔というのは何だ?」

「は、はい。えっと、ブライト・イーグルと、サイクロプスと―――」



 ギルドマスターの顔色が段々と青くなってくる。

 血の気が引こうが、頭を抱えようがエルフは美人だ。やっぱりエルフってすごい。

 しかし残念だったな。ビーツの従魔は五体・六体ではない―――二十二体だ。



「―――と、アラクネと、スライムで全部です」

「あれ?ビーツ、アラクネなんか居たの?」

「確か前に聞いた時は、タランチュラ・ベノムロードじゃなかったか?」

「ああ、そうそう。進化したんだよ。『ジョロ』は三大妖に並んで古参だったからね。今度紹介するね」



 頭を抱えるギルマスを余所に、オレたちは話している。

 アラクネかぁ。また強そうな魔物を育てやがったなぁ。

 ジョロとは女郎蜘蛛からとってるんだろう。ただの蜘蛛の段階で名付けたはずなのに、うまいことアラクネになったな。

 そうこうしているうちにギルマスが復活した。



「まてまてまて。いや、言いたい事は山ほどある。あるんだが……スライムが従魔だと?」

「あ、はい。スライムが従魔になったんですよ!」

「ありえんだろう!百歩譲って他の出鱈目に強い魔物が従魔になったとして、スライムが従魔などありえん!」

「ぼ、僕もそう思ってたんですけど……おいで、クラビー」



 ビーツはフードの中に居るクラビーに呼びかけ、ウネウネと現れたスライムがビーツの手に収まった。

 クラビーは弱いので森の中に放し飼いしていると他の魔物や獣にやられる可能性がある。

 だから常にビーツのフードの中や袋の中に居るのだ。

 ビーツの身を守る従魔として、オロチと同じ立ち位置という事になる。

 まぁビーツを守っているのか、ビーツに守られているのかは別とする。



「ほ、本当にスライム!?従魔なのか!?念話は!?」

「できますよ。クラビーは喋るのゆっくりなんですけど」

「喋るのか!?スライムが!?」



 驚くほど食いついたがそれも当然だろう。

 ビーツ曰く、召喚士は従魔と念話で会話し、心を繋げられる唯一の存在で、召喚士の数自体が少ない。

 スライムには会話どころか意思があるとは思われておらず、意思がないので心も繋がらず、従魔にする事はできない。それが定説。

 ところがビーツはクラビーを従魔にした。それは不定形の粘性物質のスライムに意思や心があるという証明なのだ。

 オレたちも多少は驚いたが、召喚士であるギルマスの驚きは相当のものだ。



 相当に熱くなっていたギルマスが「ちょ、ちょっと待て」と席を立ち、水を一気飲みした。



「ふぅ……。ちょっと時間をとって、今度いろいろと話そう。シュタインズ様の意見も聞きたいところだ」

「あっ、博士に言ってなかった。今日にでも手紙を出しておきます」

「ああ、そうしてくれ。これは召喚士界の一大事だぞ……」



「だいぶ話しが横道に逸れてしまったな。とりあえずビーツ・ボーエンの従魔に関しては登録している四体のみとし、他は内密にしよう」

「やっぱそうですよね」

「ああ、あの四体も規格外だが、まだなんとか信憑性がある。少なくとも二十二体を従えただの、スライムを従魔にしただの言うよりはな」



 とりあえずギルマスが内緒にしててくれれば安心だ。

 召喚士の先輩でビーツの姉弟子というのも有り難い。事の重大さを誰より分かっているだろうからな。こういう協力者は重要だ。



「で、金級の話しだが、正直今の話しからビーツ・ボーエンはアダマンタイト級でもいいかと思う」

「「「「えっ」」」」



 金級の話しからさらに二段階昇格!?

 アダマンタイト級冒険者って最上位じゃねーか!



「召喚士は従魔の実力が、そのまま、召喚士の実力として評価される。私も自身の実力は金級やミスリル級程度だったが、従魔の力でアダマンタイト級になった一人だ。まぁ現役は退いたから元・アダマンタイト級と言うべきだがな」



 なるほど。三大妖だけでも相当強いのに、他に十九体も従魔がいれば、そりゃアダマンタイト級以上と言えるだろうな。



「だ、だめです!僕だけアダマンタイトなんて!」

「いや、オレたちの事は気にしないでいいぞ?パーティー解散するわけじゃないし」

「三人が金級で、ビーツがアダマンタイト級でもいいじゃない」

「それだけの力があるのは俺たちが一番知っているしな」



 オレたちとしては全然構わないんだが、ビーツは四人で足並み揃えて金級になりたいと言う。

 ビーツが自分自身の力のなさを嘆いているのは知っているから、アダマンタイト級はまだ早いという気持ちは分かるんだがな。

 従魔の強さと比べるのがおかしいんだよ。ギルマスが言うとおりに規格外だし。召喚士なんだから従魔の強さに依存しまくってもいいとは思うんだが。



 でもオレがビーツの立場だったら、やっぱり四人で足並み揃えたいだろうなとも思う。

 同じ境遇の幼馴染四人でようやく冒険者になったのに、自分だけ先に行ったら、逆に疎外感を感じそうだ。

 仲間や恋人に合わせてランクを下げた大学に受験するみたいなもんか。賛否両論ありそうだが、気持ちは分かる。



 結局、ビーツはアダマンタイト級を辞退し、四人で金級への昇格試験を受けることにした。

 ギルマスは固辞するでもなく、当然のように受け止めていた。予想はしていたのだろう。



「では、金級昇格試験だがな、これはその時々によって内容が異なる。ミスリル級と模擬戦したり、どこどこに行って採取して来いとか、まあ様々だ」



 内容を絞らないのは対策されない為かな?



「今回はお前らに不足している経験を重視した。ずばり護衛任務だ」



 護衛任務はンフィールの護衛しかやっていない。

 と言うか、あれを護衛任務と言っていいのかも分からない。

 盗賊から助けて王都まで連れてきただけだしな。



「港町ファンタスディスコで『水神の巫女』の護衛をしてもらう」

「ファンタスディスコ……!」



 出た!いきなり出たから吹き出しそうになった!

 デュークに教えて貰った四大都市の一つだよな。ビーツも行きたいと言ってたはずだ。



「ああ、一年に一度の『水神(すいじん)奉納の儀』に際する『水神の巫女』の護衛だ。依頼は十日後だから、遅くとも八日後には相手先に出向いて欲しい」

「『水神の巫女』とは?」


「ファンタスディスコが港町として栄えているのは水神様の守りがあるからだ。水神様が海の魔物から漁師や商船を守っているわけだな。そして領主の血筋の者は『巫女』として水神様と直接交信できる。巫女は一人で水神様と交信できる洞窟の奥へと行く必要がある。洞窟の道中、その巫女を水神様の元まで護衛するのが今回の任務というわけだ」



 なるほど。詳しくは行って確認する必要があるが、やるべき事は分かった。

 依頼内容もちゃんとしているし、港町がどんなものかも気になる。海産物も食べられるかもしれない。

 ビーツも行きたがってたしな。

 オレたちは是非ともという言葉と共に、昇格試験となる依頼を受けることにした。



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