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大魔導士「ベギ〇ゴンって何属性ですか?」  作者: 藤原キリオ
シェケナベイベー編
35/57

35:✝暗闇に集いし叡智✝



 迷い込んだ学院の隅で、ジャーニ病の末期患者と出会ってしまった。医者もさじを投げるレベルだ。

 しかし何だろう、この『何とかしなければ』感は。

 一人、学院の隅でこんな事をしているのだから【同志】も居ないのだろう。このままでは【共感】も【共有】も出来ず一人で抱え、後に壁を殴ることになる。

 力を貸してやらねばなるまい。人生の先輩として。



「オレが行く。頃合いを見て頼む」



 そう三人に告げ柵を越える。「ちょっ」とか後ろから聞こえるがお構いなしに少年に近づく。

 木の影から【それっぽく姿を見せ】声をかける。






「やれやれだな。少しはやるようだが、稚拙と言わざるを得ない」

「何奴っ!」

「名乗るほどのもんじゃない。が、まぁいいだろう。【大魔導士アレク】。そう呼ばれている」

「大魔導士……アレク……だと……!?」





――木の影に隠れた三人――


(誰かに呼ばれたことあったっけ?)

(俺の知る限りではないな)

(いい出だしですよ、アレクくん)


―――――――――――――





「君の求める【かっこよさ】。自ら切り開いたものなのだろう。探求の跡が窺える。大したものだ―――が、やはり稚拙だ」

「何っ!?」

「まぁそこで見ていろ。少し見せてやろう。―――【本物】をな」



 そう言ってオレは的があった場所に、無詠唱でアース・ウォールを放ち、土壁の的を出現させる。

 少年はそれに驚いた様子だが、驚くのはこれからだ。

 「よく見ていろ」と言い放ち、的と距離を取り、姿勢を【それっぽく】正す。両手を前に【それっぽく】構える。



「【滲み出す混濁の紋章!不遜なる狂気の器!湧き上がり・否定し・痺れ・瞬き・眠りを妨げる!―――」



 バババッと【それっぽく】両手で【印】を組みながら、長々と詠唱する。





――木の影に隠れた三人――


(えっあの詠唱覚えてるのか?)

(そ、蒼〇墜ならなんとか……)

(マストですよ)


―――――――――――――





「(中略)結合せよ!反発せよ!地に満ち己の無力を知れ!破道の九十―――〇棺!】」



 的の周囲にダーク・ウォールで薄い黒壁をいくつも作り出し、的を包みように、接合・圧縮させる。

 あたかも黒い棺に閉じ込められ、押しつぶし、消されたように見せる。

 ちなみにオレの闇属性の腕からして、威力は弱く、実用性は皆無だ。



「す、すごい……」



 隻眼のエドとか言う少年も、右目がキラキラしている。

 大好きだろう?こういうの。分かる。分かるよ、オレには。



「分かったか?君を稚拙だと言った意味が」

「はい!師匠!」



 すでに憧れの存在にまでなったか。心で理解したようだな。真の【かっこよさ】というものを。

 「今の魔法は一体!?」と迫ってくる少年を落ち着かせていると、林の中から声がかかった。





「見ちゃいられないわね」

「何奴っ!」



 クロが【それっぽく】姿を現す。さすがはクロだ。タイミングと言い、登場の仕方と言い、ベストと言っていい。

 当然オレもそれに合わせる。



「貴様……【陣風・クローディア】か!」

「知っているのですか、師匠!」

「フフフ。貴方の魔法は見せてもらったわ。確かに面白い。だけど魅力的ではないわね」

「なんだと……!」

「見せてあげるわ。貴方とは違う【かっこよさ】ってものをね」



 そう言いながらクロが目で合図してくる。『合わせてくれ』と。望むところだ。

 クロは的があった場所に向けて指先を伸ばす。オレはそれに合わせて再度土壁を作った。



「いくわよ。見てなさい」



 土壁に対峙したクロがショートソードを胸の前に出し、水平に構える。左手は広げ鍔の辺りに添えている。



「【万象一切灰燼と為せ―――」



 ああ、そういう事か。オレはクロの左手が鍔から剣先へとなぞるのに合わせて、ショートソードに火を纏わせる。

 あたかも火属性のエンチャントをしたかのように。本当はただ剣を焼いているだけだ。

 ちなみにこの世界に『魔法剣』だとか『エンチャント』という概念はない。ないはず。

 「おおっ!」と少年も驚いている。



「――流刃〇火】!!!」

 


 炎を纏った剣で土壁を横薙ぎ一閃。すぐにオレは炎を消す。

 クロはこちらに振り返り、剣と鞘を水平にして顔の前に持ってくる。



「この世に斬れぬものは――なし」



 スチャっと鞘に納めると同時に土壁が崩れた。まさかネタを重ねてくるとは、クロ恐ろしい娘!

 しかし刀なら鞘に納めた時に「チャキン」ってかっこいいのに、ちょっと残念だったな。クロも心なしか残念そうだ。



「か、かっこいい!なんですかそれは!魔法を剣に!?」



 食って掛かる少年。クロは「フフフ」と意味ありげな様子を演出している。

 そうしていると、また木の影から声が……。





「ククク。参りましたね。こんな所で【大魔導士】と【陣風】とは」

「何奴っ!」



 メガネをかけたデュークが、中央のブリッジ部分をくいっと中指で上げながら出てきた。

 この世界で初めてメガネ見たんだけど、あったのか!?て言うかその口調は何だ!?インテリヤクザ風なのか!?

 デュークは乗って来ないだろうと思ってたのに一番ノリノリじゃねーか!



「貴様……!【聖典のデューク】!」

「知っているのですか、師匠!」

「おや、私の事をご存知とは光栄ですね。さすがは【大魔導士】。かの【魔導姫チッタデルロ・サロムスリーゼ】の弟子と噂されるだけの事はあります。そちらの【陣風】も見事でした。あれは【ラグナロク】にて【ロキ】が用いたと言われる【レーヴァテイン】を彷彿とさせる。まさに―――」



 こいつは【それっぽい】話術で攻めるつもりか。【それっぽい】単語を並べ、しかも所々にこの世界の英雄譚とかも織り交ぜている。

 それによって少年にも【なんかよく分からんがとにかくすごい】感のある話しになっている。こいつはやっぱりすごい。色々な意味ですごい。



「――つまり【森羅万象の理】と【円環の理】があーだこーだで【古事記】にも載っているというわけです。ですよね―――【百鬼夜行】」

「【百鬼夜行】だと!?奴も来ているのか!」

「知っているのですか、師匠!」





――木の影に隠れた一人――



(やばいやばいやばい……どうしよう)



 最後に残されたビーツは悩んでいた。アレクは魔法、クロは剣技、デュークは話術。

 じゃあ自分はどうする?何も浮かばない。じゃあもう出ない。いや、この流れでそれは出来ない。

 そして今、デュークくんから呼ばれた。もう行くしかない。

 当たり前のように二つの召喚石を出し、影に声をかける。助けてくれ、と。


―――――――――――――





 オレたち三人と少年が見つめる林の中、ビーツが歩いてきた。三大妖を伴って。

 四人が横一列でゆっくりと近づくその歩みは、さながら昔の刑事ドラマか、あるいは【遅れて現れた四天王】か。

 両端のシュテンとタマモが威圧感があるので【圧倒的な強者感】が出ている。



「こ、これは……!」



 少年も冷や汗を流し、その光景を見入る。ゴクリと唾を飲む。

 それは【絶対悪】に対する恐怖であり、同時に【かっこいい】と思わせる四人の足取り。



「来ましたか、【百鬼夜行】」



 十分に近づいたところでデュークが声をかける。

 ビーツは俯いていた顔を上げ……。








「や、やあ。ぼ、僕は―――」



「「「いや、それはダメだわ」」」



 オレたちの声が揃った。



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