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大魔導士「ベギ〇ゴンって何属性ですか?」  作者: 藤原キリオ
シェケナベイベー編
32/57

32:再会、そして王都到着



 荷物が一気に多くなった。

 捕らえた盗賊が二十三人。二メートルを超えるミスリルゴーレムが五体。どうしたものか。

 とりあえず、朝一で管理人さんを鉱山内に連れて行く。危険がないと証明してもらい、それを一筆書いてもらうためだ。鉱山調査の依頼はすでに冒険者ギルドに行っているだろうからオレたちのした事は横取りになる。依頼達成とは見なされないかもしれない。しかし依頼達成として報奨金が出るかもしれない。だから調査完了の旨を書いてもらったわけだ。



 ちなみに盗賊のアジトを潰し、お宝を根こそぎ奪うという事も考えた。が、諦めた。

 理由の一つは眠らせている盗賊に尋問し、アジトの場所を吐かせる必要がある事。尋問なんてやったことないし、時間がかかりそうだ。

 二つ目は、まだ盗賊の残党がいるかもしれないという事。そうなると、また戦力を分散させる事になり、これまた時間がかかる。オレたちは今日中に王都に行きたいのだ。朝にここを出れば夕方には着くだろう。



 そんなわけですぐにでも出発したい所だが、文頭の問題がある。荷物が多い。



「アレク、おっきいお風呂で運べばいいんじゃない?」



 鉱山の入口にあったリヤカーを見たクロが名案を出した。

 オレたちはサタデーナイトで風呂に入ってから、風呂への欲求が高まった。それまで十年間も気にしてなかったのに、やはり心は日本人という事だろう。

 それからは野営の夜には、オレが土魔法で風呂を作り、水魔法と火魔法でお湯を作り、ほぼ毎日楽しんでいた。

 作っていたのは一人用のドラム缶風呂のようなものだが、馬車の荷台のような広くて浅い風呂を作れば、確かにいけるかもしれない。



「アース・ウォール。アース・ウォール。アース・ウォール」



 山道が通れるように横幅はやはり普通の馬車程度だろう。土壁だが魔力を込めて強度を上げる。これをストーン・ウォールにしてしまうと重すぎて運べないので土にした。

 車輪は土では無理なので、鉱山の岩壁から、石の車輪を作り出す。

 余談だが、魔力で作った土や石は時間が経つと消える。だが元からある土や石を魔力で操作し形作ると、これは消えない。これは城壁や家を作る際にも使われている魔法の技法だ。

 風呂に車輪をつけて、引手を付ければリヤカー状になる。それを二つ。一つには盗賊二十三人。もう一つはミスリルゴーレム五体。山盛りだな。



「おりゃあああ!!!」



 身体強化をしたデュークが盗賊のほうのリヤカーをなんとか引けた。ゴーレムのほうは無理だ。

 またシュテンやタマモにお世話になるしか……と考えていたところに、ビーツが一言。



「サガリ!来て!」



 召喚されたのは馬だった。いや、正確には馬ではない。足が六本ある。



「ビーツ……。スレイプニルじゃね?」

「うん!サガリって言うんだけど、この子なら引けるかなぁって」

「ヒヒーン!」



 あ、うん。サガリ君とやらもやる気のようだからね。もう何も言うまいよ。

 ンフィールとか管理人さんたちとか、口開けたまま固まってるけど、多分大丈夫だよ。オレたちみたいにいつか慣れるって。

 とりあえずリヤカーの引手をサガリに括り付けられるように魔法で加工し、引けそうだったので、二台のリヤカーを連結してみた。



「おおっ!引けるじゃん!」

「サガリすごい!」

「じゃあサガリ、王都までお願いできるかな?大丈夫?」

「ヒッヒーン!」



 こうしてオレたち四人とンフィールは鉱山を出発した。荷物は全てサガリに引いてもらっている。シュテンとタマモはすでに送還済みだ。オロチはビーツの影の中。

 デュークに聞けば、スレイプニルの馬車というのは実際にあるらしい。但し王侯貴族の専属召喚士が幼い頃から育てたスレイプニルを従魔とするらしく、間違っても野良の成体となったスレイプニルを従魔にするなどしないとの事だ。いやぁビーツさん、さすがっす。

 そんなサガリは村の南の森に、普通にいたらしい。どんな魔境だよ。パーリーピーポーまじでヤバイ。

 しかしそう聞けば、シュテンとかにリヤカーを引いてもらうより、サガリのほうが、まだマシに思える。女の子が引くより馬が引いたほうがいいだろう。



 そんなこんなでオレたちは街道を王都に向かって進んでいた。一応馬車(?)を囲むようにはしており、時々スリープを重ねがけしている。

 時刻は昼。王都まであと半分といった所で、前方から六人の人影が歩いてきた。

 王都の冒険者かな?と思ったが……。



「ん?あれって……」

「……『森林の聖風』か?」

「本当だ!おーい!レンさーん!チュードさーん!」



 『森林の聖風』は毎年村に来ていた冒険者パーティーであり、来るたびに訓練をしてもらっていた。

 オレが六属性魔法使い(セクストゥープル)だと知っている数少ない村外の人間でもある。

 リーダーは盾戦士のパベルさんで、剣士のチュードさん、槍士のミクリオさん、魔法使いのレヴィアさん、狩人のサルーノさん、回復術士のレンさんの六人パーティー。

 出会った時は銀級だったが、二年後には金級になっており、去年はミスリル級だったはずだ。



 「あっ!クロちゃーん!」と遠くから回復術士のレンさんの声がして、走ってくる。レンさんは昔からクロを可愛がっていた。 

 つられて他の面々も駆け足で近づいてくる。



「おっ!ホントにアレクたちじゃねーか!」

「おい!後ろのアレ、スレイプニルだぞ!」

「いや、その後ろの!なんだありゃ!」



 そりゃ騒がしくもなるね。ごめんね。久々の再会なのにこんな状況で。



……

………



「いやぁ驚いたぞアレク」



 頭を掻きながらパベルさんが話しかける。合流した後の全員で王都に向かっているところだ。

 なんでも『森林の聖風』は鉱山調査の依頼を受けて来たらしい。そこにオレたちが居たので引き返すはめになったのだ。



「冒険者になっていた事もそうだが、すでに銀級で、もうすぐ金級だと?」

「それに盗賊二十三人を捕らえて、鉱山調査も終えたって?なんの冗談だって感じだよね」

「せっかくミスリルゴーレムが出たって言うから俺たちが来たのになぁ。ま、五体とは聞いてなかったけどな!ハハハッ!」

「私たちだけだったら結構苦戦したわね」



 パベルさんの言葉に、ミクリオさん・サルーノさん・レヴィアさんが追従する。

 苦戦するだけで勝てる見込みはあるのか。さすがだな。



「それにンフィール。ンドラさんが心配してたぞ?俺たちが王都を出る時に頼まれた。「多分、鉱山に行ったから探してきてくれ」ってな」

「うっ……ごめんなさい」



 ンフィールと『森林の聖風』は面識があるらしい。王都ギルドで活躍するパーティーと有名鍛治屋だから接点もあるのだろう。

 あの元気で先走ってばかりで猪突猛進のンフィールがしょげている。



「でも助かりました。このままオレたちだけで王都に行くと目立ちそうなんで」

「そりゃそうだろう。盗賊は入口の衛兵に引き渡すとしても、スレイプニルとゴーレムだけで目立ちすぎる」

「って言うか、このスレイプニルはビーツの従魔か?従魔証ないけど」

「あっ!」



 そう言えば三大妖しか登録してないからサガリの従魔証がない。オロチから借りるか?いや、登録されていないスレイプニルが従魔証を付けたら、それも問題だろう。

 一応ビーツに聞いてみるが、余分な従魔証などもないようだ。そりゃそうか。



「バディーコンシャースから王都に来るまでに従魔にしたっていうのは?」

「こんな所にいるか?スレイプニル……」

「いたら問題になって依頼がかかると思うぞ?」

「じゃあ「まだ登録してないけど従魔にしました」だけ言って、聞かれたらパーリーピーポーって答えればいいか」

「それしかないだろうな」



 話しの流れでかるくビーツの従魔の話しをし、かるく驚かれ、かるく現実逃避されながらも道を進む。

 途中で商人と思われる馬車に追い抜かれ、これまた驚かれたが、『森林の聖風』を知ってる人たちだったのでセーフ。

 「『森林の聖風』か。盗賊にミスリルゴーレムとは、さすがだな」的な勘違いをしてくれた。

 これにはパベルさんも苦笑いしか出来ない。パベルさんはいつも苦労しているイメージがある。まあ、今はオレたちが一番迷惑をかけているのだが。胃薬的な治癒魔法はないものかと後ろの回復術士、レンさんを見やると、クロに抱きついていた。彼女は可愛い女の子好きなのだ。クロは抱きつかれて「ひょほほ」とか言ってる。ウィンウィンの関係だな。



 さらに三時間ほど歩いたところで王都の城壁が見えてきた。

 高さは十メートルほどあるだろうか、綺麗な石で積み上げられた城壁が、横にかなり広く続いている。

 大きな門は式典などで使用するのか閉じたままだ。すぐ横の出入り口から百人ほどの列が順番待ちをしている。



「お、おい!なんだあれ!スレイプニルじゃないか!」

「荷台もすごいぞ!あの山、ミスリルゴーレムか!?」

「あっ!『森林の聖風』だ!きっと何かの依頼だぜ!」

「さすがはミスリル級冒険者だな!」



 パベルさんとレヴィアさん、チュードさんは苦笑い。ミクリオさんとサルーノさんは「どうだ」とばかりに胸を張る。ふざけるのが好きな二人だ。ちなみにレンさんはクロとお話し中。

 オレたちは王都に入る手続きで並んでいる人たちを無視し、門の脇にいる、別の衛兵さんに声をかけた。

 さすがにこの状態で、順番待ちの列に並ぶわけにもいかないのだ。



「パベル、早かったな。もう調査してきたのか。今朝出たばかりだと言うのに」



 ミスリルゴーレムを見て、鉱山の調査を終えたと思ったのだろう。

 パベルさんたちとも仲が良いのだと窺える。



「いや、途中で引き返してきたんだ。こいつらが依頼を終わらせて来たんでな。ついでに盗賊も捕らえたらしいから、引き渡しをお願いしたい」

「えっ、この子らが……?」

「ああ、『魔獣の聖刀』っていう銀級パーティーだ。俺らとも顔なじみなんだが王都は初めてでな。その手続きも頼む」

「銀級!?本当か!?」



 オレたち四人はギルドカードを見せて納得してもらうと、まずは盗賊の引き取りをお願いし、サガリの仮従魔証を発行してもらう。



「こいつら……もしかしてチアーゴ盗賊団か!?」



 バイキング風のリーダーっぽい盗賊を見て、衛兵さんが驚く。『森林の聖風』も顔は知らなかったが名前は知っているらしい。

 なんでもここら辺では有名な盗賊団で、数が多く手練れも多い為、捕まえる事が出来なかったそうだ。

 オレは経緯を話し、アジトも見つけていない事を告げる。



「そうか。アジトに関しては尋問してからこちらで探索する事になるだろう。盗賊団が壊滅していた場合、その時に見つかった戦利品や金品の半分は、そちらのものとなる。こいつらの所持品の売り払った代金や、奴隷に売り飛ばした際の代金も、手数料などを引いて、そちらのものとなる。代金の受け渡しはギルドを通してでいいか?」

「はい。大丈夫です」



 思いの外、収入になるんだな。もっと適当な扱いかと思ってた。さすが王都の衛兵だ。前回盗賊に襲われた時は返り討ちにしちゃったからなぁ。

 オレたちは盗賊受け渡しの書類を書いて、それで衛兵さんとはお別れとなった。

 盗賊の乗っていた荷台を消し、ミスリルゴーレムの荷台だけになったサガリと共に、王都へと入る。

 まだ、目立つので『森林の聖風』には付いてきてもらおう。パベルさん、今度胃薬おごります。



 石畳で舗装された大通りは広く、様々な店・露店が立ち並ぶ。もう夕方になりそうだと言うのに人も多い。

 遠くに見えるのは王城。白く、尖塔がいくつも立っているのが分かる。

 雰囲気に圧倒される。これが『王都シェケナベイベー』か。



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