表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大魔導士「ベギ〇ゴンって何属性ですか?」  作者: 藤原キリオ
パーリーピーポー編
3/57

03:エルフの師匠(おばば)




 この村の名前が『パーリーピーポー村』だった。村を捨てたい。

 もうこれ他に日本人いるだろ。いた上でなんでこんなファンキーな名前なんだよ。村長に小一時間、問い詰めたい。いや多分村長は悪くないんだろうけど。



 あれから三年経った。

 オレことアレクは順調に成長していて、見た目は栗毛のかわいらしい白人幼児といった感じ。

 成長が早いと判断されたのか、ある程度家の周囲を自由に歩き回れるようになった。



 魔法のほうは毎日いろいろと試し、独学ではあるものの基本的なことは分かってきたと思う。

 総魔力量は魔法を使えば使うほどに上がると分かった。熟練度なのか、減った魔力の分だけ少しづつ増えるのかは不明だが、とりあえず毎日出来るだけ使ってから寝るようにしている。



 属性に関しては、体内の魔力と体外の魔素を融合させる際のイメージで変化すると分かった。

 魔力・魔素の段階では属性変化がないってことだ。魔法として発現した段階で属性が付与されるって感じ。



 そんなわけで、体内の魔力をスムーズに動かす修行。魔素とスムーズに融合させる修行。属性を変化させる修行。発現した魔法をあれこれする修行。毎日忙しい。毎日超楽しい。

 でもそろそろちゃんと誰かに教わりたい。独学では限界がある。って言うかそもそも基本を知らないはずだ。

 もう喋れるし歩けるし、物語の読み聞かせをしてもらってたから、ある程度文字も読める。

 さあ、いざ次のステップだ。



「かーちゃん、まほう!まほうおしえて!」

「えっ魔法? アレク、魔法使いたいの?」

「うん!」



 両親(オレの生前より若い)が魔法を使えるのは知っている。

 竈の火種だったり、桶に水を入れたりしていた。



「アレクはまだ三歳じゃない。もうちょっとお兄さんにならないと魔法は使えないわよ?」

「だいじょうぶだよ、ほら!」



 ブオッ!

 指先に風の塊を作り出す。嵐のような球体。大きさはソフトボール程度で、気圧の関係か視認もできる。

 両親にばれずに魔法の練習をするにあたり、一番使ったのが風魔法だった。火や水じゃ目立つしね。



「えっ!?ウィンドボール!? アレク!あなた魔法使えるの!?」

「うん」

「あわわ、どうしましょ、あなたー!あなたー!」



 大慌てで畑仕事をする父親を呼びに行ってしまった。

 やっちまったか、これ。ウィンドボールって言ってたな。おそらくちゃんとした魔法なんだろう。

 三歳の幼児が使うもんじゃないんだろうな。はぁ……。



……

………



「で、母ちゃんが竈に火をつけるのを見て、真似たら使えたってのか?」

「うん……」



 速攻で家族会議である。



「でもあれ生活魔法だぞ?俺が使ってる水とかも生活魔法だ。攻撃魔法なんて使えん」

「えっ?」

「ん?アレクが出したのはウィンドボールだって聞いたぞ?違うのかリリーナ」

 


 ちなみに父親がデービス・アルツ。母親がリリーナ・アルツ。オレがアレキサンダー・アルツである。

 しかし、生活魔法か。火種を出すのも火の玉出すのも変わらないと思うんだが、攻撃魔法とは何が違うのか……。



「間違いないわ。しかも無詠唱よ?威力は小さいと思ったけど、あれはウィンドボールよ」


 

 無詠唱……。普通は詠唱があるのか。それすら知らなかった。多分、生活魔法には詠唱がないのだろう。オレは生活魔法しか見てなかったから『魔法=無詠唱』と思い込んでいた。

 やっぱ基本的な魔法の知識が足りなすぎる。



「それに三歳で攻撃魔法だなんて、魔力切れで昏睡してもおかしくないわ!」

「そうだ!アレク、体は大丈夫なのか?」

「う、うん。さっきのくらいなら、ぜんぜんだいじょうぶだよ」

「本当に?辛かったら言うのよ?」


「しっかし、アレクが魔法とはなぁ……。今は使ったばっかで魔力減ってるだろうし、今度見せてくれるか?」

「あなた!興味本位で使わせないで!倒れちゃったらどうするの!」

「いや、本当は今すぐ確認したいくらいなんだぞ?俺だって心配はしてるさ。でも見たところ、体は何ともないようだし、アレクは前から賢い子だからな。無理な魔法はしないさ。なぁアレク」

「うん。だいじょうぶ」

「はぁ、私が心配性なのかしら……」



 なんとか落ち着きを取り戻した両親に、魔法の勉強をするにはどうすればいいのか、聞いてみた。

 両親としては使えてしまったからには、ちゃんと教えたほうが安全と判断したらしい。 

 しかし、自分たちには攻撃魔法なんて使えない。魔法書とかも持っていない。

 かじった知識を教えることはできるが、どうせなら専門家に師事すべきだという事になった。



「薬師のチッタおばば、分かるか?」

「あー、エルフの?」

「この村で魔法と言えば、チッタおばばだ。口は悪いが面倒見はいいし、教えてもらうといい」



 この村にいる唯一のエルフで、唯一の薬師。何度か家を訪れて、母親が薬を買っていた。

 最初に見た時は「耳とがってる!エルフいるの!?マジで!?ファンタジーじゃねえか!」とテンションが上がったが、実際は皺くちゃのおばばだけだったので、なんか萎えた。



 さっそく昼過ぎにおばばの家に行ってみた。

 おばばの家は森へと続く道の片隅にあった。村から一歩はみだした感じだ。



「すみませーん、チッタおばばさんいますかー?」



 他人の家に行くこと自体初めてだ。緊張の面持ちでドアを開ける。



「ん?お前は……デービスんとこの息子かい?薬でも買いにきたか?」



 こじんまりとした室内には調剤に使うであろう器具が並び、大きな本棚にはたくさんの本が並んでいる。

 本はとても貴重品でオレの家には物語が二冊あるだけだ。こんなに本があるのはすごい。

 近くに森がある影響か、室内にはあまり日が入らないようだ。



「あ、えーっと、そうじゃなくて、ですね……」



……

………



「はぁ?魔法を教えてくれ?三歳の小僧が何言ってんだい!」



 めっちゃ迫力がある。これが年の功か。皺くちゃな顔してその眼力はなんだよ。



「ウィンドボールを使ったら、あたしに魔法を教えてもらったほうがいいって!?バカ言ってんじゃないよ!ウィンドボールなんて使えるわけないだろうが!」

「い、いや、でも、ほら」



 ブオッ!

 そう言ってオレは指先からウィンドボールを出した。 



「っ! ……こりゃ驚いた。って家の中で魔法なんて出すんじゃないよ!外出な!外!」


 

 押されるように外へ出て、家の裏手に回った。

 多少のスペースがあるが、周りにはすでに森が広がっている。



「とりあえず今、どれくらい魔法を使えるのか見せてもらうよ。的を出すからそこに当てるんだ。いいね?」

「う、うん」

「はぁ……なんであたしがこんな事を……」



 口は悪いが面倒見はいい。確かに言われてたとおりだな。



「アースウォール」



 おばばがそう言って杖を向けると、二十メートルほど先の地面が壁状に盛り上がる。

 高さが二メートル、幅が一メートルほどの土壁だ。



「うわっ!すげえ!」



 離れたところに魔法を発動させるってどうやるんだ?体内の魔力と体外の魔素を融合させないとダメなはずだし。

 しかも魔法名のみの無詠唱……だよな?母親は詠唱ありきみたいな事言ってたけど、やっぱ本物は無詠唱なのか?

 感動と疑問があふれる。テンションがあがる。



「いいから、あれに当ててみな。目いっぱいのやつでね。あぁ安心しな。倒れたら介抱してやるさ。ハッハッハ」

「めいっぱいのやつ……うーん、わかった」



 攻撃力があるやつってことだろう。となるとウィンドボールじゃないだろうな。いや、実際に魔法を当てて試したことはないんだけど。

 なんとなく風より火とかのほうが攻撃力ありそう。



 ボウッ!

 指先にソフトボール大の火球を出現させる。

 


「!(風だけじゃなくて火属性も使えるのかい!?)」



 さらに火球を大きく。魔力を多めに、より魔素と融合させるイメージ。

 火球は直径八十センチほどの大きさとなる。あっつい。



「!?(ファイアボールじゃない!フレイムボールか!)」



 大気の魔素だけじゃなく酸素も取り込むイメージ。

 温度が上がれば威力も高まるんじゃないかという期待。すげーあっつい。



「!?(火球が青白くなった?なんだいこれは……)」



 最後に投げやすいように、球状から細長い棒状に加工。大気を圧縮させて形を整えるイメージ。

 それを槍投げのように投擲する。



「はぁ!?(フレイムボールがフレイムジャベリンになった!?)」

「いっけえ!」



 思い切り投げた魔法は見事に土壁に命中……はしなかった。その手前の地面に突き刺さり「ドオン!」と炎が散る。



「げっ!ほうこうおんち!やばっ!」



 散った炎が土壁や周りの草を燃やし始めたのを見て、あわてて駆け寄った。

 走りながら水球を両手に作り、火の元にばらまく。投げつけずに放っただけだから、あくまで消火用だ。



「ふぅ~あっぶない。おばば、ごめんなさ……」



 振り返ると、目を見開いたまま硬直するチッタおばばの姿があった。



「あの……チッタおばば?」 

「……はっ! すまないね。ちと呆けちまった。で、体調はどうだい?火に水とその前には風、あれだけ魔法撃ったんだ」

「あ、えーっと、四分の一くらいへったかんじ」

「は?あれが目いっぱいじゃなかったのかい!?」

「うん、あつかったから、もうむりだとおもってなげちゃった」

「……いや、そうか。あの後、ウォーターボール何発も出してんだ。目いっぱいなわけがないか……。はぁ……。ま、とりあえず家に戻るかね。いろいろと聞かせてもらうよ!」

「う、うん!」



 チッタおばばの後を追って家へと向かう。

 どうやらちゃんと魔法を教えてもらうことが出来そうだ。お目にかなったって事だろう。

 このパーリーピーポー村で一番の魔法使い、その弟子として。


 ……あ、ちょっとテンション下がった。もう村名言うのやめよう。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ