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大魔導士「ベギ〇ゴンって何属性ですか?」  作者: 藤原キリオ
サタデーナイト編
29/57

29:✝冒険者ジャーニ✝



「ほら、こんな感じで白くなるんですよ」

「おおっ!」



 今、オレたちは『怒涛の波紋』のメンバーと彼ら行きつけの酒場に居る。もちろん二階で、周りの目はない。

 オレの隣の席で、リロさんが驚きの表情を見せる。真面目な彼女が滅多に見せない顔だ。

 探索中にチッタおばばの話しが出てから、ずっと先延ばしになっていた、オレの魔法操作を見せているのだが、食いつきがヤバイ。気付いてはいたが、彼女もオレと同じく魔法バカだ。



「なるほど、『ファイアー・ボール=この大きさの赤い火球』というイメージが逆に柔軟なイメージを妨げているという事か」

「詠唱ありだと、そのファイアー・ボールしか出ませんからね。無詠唱でもイメージはそれになるんですよ」

「基本による弊害か」

「チッタおばばも同じような事を言ってました。年をとりすぎたから、今更イメージは早々変えられないって」

「だろうな。これは難しいぞ……」



 手元のファイアー・ボールを小さくしようとしている。

 ここが二階で本当に良かったよ。店内で魔法とか怒られるしね。



「しかし『魔導姫』様の弟子とはさすがだな。剣士のクローディアでさえ、こんな器用な魔法操作をしているのだから」

「ふふっ、そのうちアレクも『魔導王子』とか呼ばれるんじゃない?」



 フライヤさんが酒を片手に笑いかける。



「いや、それは困ります。オレは『大魔導士』なんで」

「……え?」

「二つ名ですよね?オレは『大魔導士』です」



 二人どころか、周りがシーンとしている。



「いやいや、自分で決めてるのかぁ?二つ名を!」

「そりゃそうですよ。誰だって変な二つ名で言われたくないでしょう。おばばだって未だに『魔導姫』って言われたら赤面するのが目に浮かびますよ。だったら自分で決めたほうがいいじゃないですか」

「え~?普通、いつの間にか周りから言われるようになるものじゃない?」

「フライヤさんだって『赤い流星』とか『赫剣』とか言われたら嫌じゃないですか?」

「…………」



 まんざらでもなさそうな顔をしている。まじかよ。



「まぁともかく、そんなわけでオレたち全員、二つ名は自分で決めてるんです」

「はぁ!?アレクだけじゃないのかぁ!?」


「私は『陣風』!」

「俺は『聖典』」

「僕は『百鬼夜行』です!」

「で、オレは『大魔導士』!四人揃って――」

「「「「『魔獣の聖刀』!」」」」



『…………お、おぅ』



 ばっちり決まったのに反応が悪い。ファンタジー世界だと言うのにこのロマンが分からないのか。

 ちなみに全員の二つ名は五歳の時から決めていました。二つ名を決める会議に丸一日かかりました。



「ジャーニ病かぁ……」



 チロルさんがボソッと呟いた。



「ジャーニ病?」

「知らねぇのかぁ?冒険者ジャーニに憧れてこじれちまった、お前らみたいなやつらの事さぁ」

「冒険者ジャーニ……あぁあの冒険記の」

「知っているのかデューク」



 モンスターじいさんの家に『ジャーニの冒険記』という手記があったらしい。実際に数百年前にいたその冒険家は、世界を旅し、それを手記に収めた。

 当時の地理や魔物分布、食べ物や植生など、資料としての価値も高いが、奇抜な恰好・奇抜な言動が多く、文章も倒置法を多用していたり、やたら『闇』という言葉が出てきたり、つまりオレたちが言うところの中二病要素が満載との事だ。『面白いが痛い手記』。これがデュークの感想。



「お前はなんでも知ってるな」

「なんでもは知らないさ。知ってることだけ」

「それは『知ってる』人が言うセリフよ」

「マストですよね」



「まぁジャーニ病はともかく、あんた達が常識外なのは、もう身に染みているわ」

「どうせお前らはすぐに名が売れそうだしなぁ。王都に行ってから、こっちのギルドで評判になってたら俺が二つ名広めておいてやるぜぇ。ハハハ!」

「いや、彼らはすでに有名人ですよ。新人で銀級で、エア・ホーク戦での戦いも多くが見ていますしね」



 それはまずい。オレたちの知らない所で勝手に二つ名が決められている可能性がある。

 チロルさんに是非ともお願いしなければ!



「そうねぇ。クローディアなんかすでに目ぇ付けられてるしね。私、ギルドで聞いたわよ?『あの娘がかわいい』みたいな事」

「来たっ!私の時代が来たっ!」



 来ねーよ。いや、オレたちは中身知ってるからアレだけど、知らない人からすれば『美少女剣士』なんだろうな。

 それでも来ねーよ。いや、来てほしくねーよ。



 打ち上げは終始笑い声が絶えず、結局、夜まで騒いだ。

 「先輩からの餞別だ」と会計も全てフライヤさんがやってくれた。

 何から何かでお世話になりっぱなしだ。「ありがとうございました」しか言えないのがもどかしい。

 手を振って去っていく『怒涛の波紋』の面々を、オレたちは感謝を込めて見送った。



……

………



 翌日、『猫の祭り亭』を引き払い、冒険者ギルドに顔を出す。



「もう行かれるのですかメェ?王都での活躍も期待していますメェ」

「たまには戻ってこいよ?それで高難度の依頼を引き受けてくれると助かる」



 受付のメアリさんと、たまたま一階に下りてきていたギルドマスターに声をかける。

 お礼を言って、オレたちは北門を目指した。



「護衛依頼があれば良かったのにねー」

「そうそうあるもんじゃないだろ。王都行きなんか人気あるし」



 依頼もこなせて一石二鳥というわけにはいかなかった。

 乗り合い馬車で向かうという手もあったが、オレたちは徒歩で行くことにした。

 せっかく『怒涛の波紋』から探索や野営、夜警について習ったのだから実践しようという話になったのだ。



「私としてはさっさと王都に行きたいんだけどなー」

「お前は女湯に入ったから却下だ」



 恨みは深いのだ。



「うふふ……ツツデバさんがすごかったのよ~。隠れ巨乳とはまさにあの事ね」



 ツツデバさん、無口で結局話したの見たことなかったなぁ。そうか隠れ巨乳だったのか……。おのれクロめ……。



「まぁいい。さっさと行こう」

「ああ、まずは途中の村を目指して、そこから王都。一週間くらいか?」

「そうですね。長旅です」


「ちなみに、その村の名前は?」

「バディーコンシャース村」



 ……聞くんじゃなかった。もう突っ込むのはやめよう。



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